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テレビCMのクリエイティブ制作工程が約三分の一に ハイセンスジャパンが活用した“注視データ”とは?

 総合家電メーカーのハイセンスジャパンでは、2024年3月に俳優の横浜流星氏をブランドアンバサダーとして起用しテレビCMの展開を実施。REVISIOが提供する「注視データ」をクリエイティブの制作プロセスに活用することでリソースを抑えながら商品の認知度や注視率を大きく伸ばしたという。本記事では、ハイセンスジャパンのマーケティング部でシニアブランドマネージャーを務める石橋和之氏と、REVISIOでエキスパートカスタマーサクセス兼シニアプロダクトマネージャーを務める福島江里奈氏に、定量データをテレビCMの企画から制作段階に取り入れる意義とその成果についてうかがった。

ブランド認知の拡大が重要課題 ハイセンスジャパンの戦略

MarkeZine編集部(以下、MZ):ハイセンスジャパンのマーケティング戦略におけるテレビCMの位置付けを教えてください。

石橋:当社は、日本市場に2010年に新規参入したブランドということもあり、マーケティングにおいては特にブランド認知の向上を重要視しています。

ハイセンスジャパン株式会社 マーケティング部 シニアブランドマネージャー 石橋 和之氏
住宅設備メーカーにて社名認知プロモーションやオリンピックのマーケティングなどの業務に従事。ハイセンスジャパンに入社後は、FIFAワールドカップのスポンサーを中心にスポーツマーケティングを強化し、さらにブランド認知の向上を目指してテレビCMを中心にしたコミュニケーション設計を担当している

石橋:これに加えて、家電製品の場合はニーズが顕在化していないお客様へのアプローチが非常に重要になります。普段は、家電製品に興味がなかったとしても、「利用していた家電の調子が悪い」などのきっかけで急にニーズが顕在化し、お店に来訪して、知っているブランドの中から購入に至るのが基本的なカスタマージャーニーであることが多いためです。したがって、認知の拡大が当社にとって最重要事項だと考えています。

 また、当社では、メインターゲットである30〜40代の消費者との接点を増やすことも重要な視点です。その点、テレビCMであれば、地上波に加えて、BSやCS、ネット動画でも配信を行うことができ、多様なチャネルでターゲット層との接点を創出することができます。

 これらの理由から2020年の4月より認知度向上を重要テーマに据えて、テレビCMを軸にしたコミュニケーションに注力してきました。

効果の予測が困難なテレビCMのクリエイティブを注視データで改善

MZ:ハイセンスジャパンでは、横浜流星氏を起用した新テレビCM「テレビ 『my new life』篇」を2024年3月に放映しました。同テレビCMの制作では、REVISIOが提供する注視データに基づいてクリエイティブ制作の仮説検証を行ったそうですが、注視データの活用に至った背景を教えてください。

石橋:従来テレビCMは、制作完成前に効果を予測する方法が明確でなく、感覚的にクリエイティブ制作を行わなければならないといった課題を抱えていました。同じ商材・タレントのCMだったとしても、クリエイティブ次第で放映後の評価に大きな差が出ることも珍しくなく、「テレビCMの効果予測は困難」でした。

 そんな時に、REVISIO様がCM制作の段階から注視データを活用して、広告代理店のクリエイティブチームとともに「注視データ」をベースにした企画コンテ・演出コンテの改善を行ってくれることを知りました。加えて、放映後には改善が成果につながったかどうかも検証してくれるというので今回依頼をしました。

 また、膨大な注視データの活用により「説得力のあるクリエイティブを作れる」ことも導入に至った理由の一つでした。導入以前は、企画段階で、テレビCMのクリエイティブを見た関係者から修正が何度も入るため、完成まで時間も工数もかかっており、制作プロセス改革の必要性を強く感じていました。

 注視データを活用することで、“データ的に正しいこと”が明確になるため、社内調整にかかる工数削減にも役立ったと感じています。

「良いクリエイティブ」の基準を定量データから導く

MZ:注視データを活用してどのようにクリエイティブ改善を行ったのでしょうか?

福島:当社では、テレビの上に人体認識センサーを設置することで、テレビCM放映時のテレビ前での視聴者の滞在や視聴有無などといったデータを収集しています。

REVISIO株式会社 エキスパートカスタマーサクセス 兼 シニアプロダクトマネージャー 福島 江里奈氏
EC運営企業やアパレルのマーケティングコンサル企業などを経験後にREVISIOに入社。現在はカスタマーサクセス担当として、ユーザーからの相談に基づきデータ分析に当たりながら、プロダクト開発にも従事

福島:今回は、そのデータを基に、視聴者に見られやすいテレビCMの傾向を分析しハイセンスジャパン様のテレビCM制作に活用しました。

 この分析に活用したのが、テレビCMのクリエイティブを評価する「Cスコア」です。Cスコアは、「枠ではなくてクリエイティブのパワーを可視化する」ことを目指して設計した当社独自の指標で、該当テレビCMの注視率を放送時の同時間帯・同枠の全テレビCMの注視率平均と比較して算出しています。

 このCスコアをクリエイティブ制作時に活用し、「見られたいシーンで注視を獲得すること」「毎秒のCスコアを高めること」「過去CMよりも注視を獲得すること」の三点を目指してアドバイスを行いました

MZ:具体的にはどのようなアドバイスを行ったんですか?

福島:具体的には2回のフェーズに分けてアドバイスを行いました。1回目は企画コンテの段階にて広告会社からの提案シートなどを拝見し、見られやすさや視聴者への受け入れられやすさといった観点で改善案を共有しました。なお、この時にはハイセンス様と同様にタレントを起用している企業や石橋さんの印象に残ったテレビCMを複数ピックアップし、注視の傾向を分析しました。

 2回目は演出フェーズにて絵コンテを拝見し、より注視されるクリエイティブにするためのアドバイスを行いました。この時にはかなり細かい部分について言及しており、視聴者に躍動感を感じてもらうための効果音の入れ方や、タレントによる感嘆詞の有無、画面の明るさなどについて注視データを基に意見を出しました。

テレビ 「my new life」篇のワンシーン
テレビ 「my new life」篇のワンシーン(画像クリックで視聴することができます)

石橋:クリエイティブの良さの基準がデータで明らかになったことには大きな価値がありました。企業として大きな予算を使う以上、マーケティング責任者の感覚だけで周囲を説得するのには限界があるためです。

 また、演出についても、従来であればクリエイターに任せきりになってしまうことがほとんどでしたが、客観性のある注視データが共通言語となってくれたおかげで、制作中のコミュニケーションを有意義に進められるようになりました。

認知度が13%向上、制作工程は従来の約三分の一まで短縮

MZ:注視データ活用後のテレビCMの効果について教えてください。

石橋:Cスコアが以前より大幅にアップしました。平均Cスコアは前回のテレビCMから約10%上昇して107ptとなり、ターゲット層に限定すると約20%上昇して113ptに向上させることができました。また今回のテレビCMをYouTubeでも展開したところ、完全視聴率で過去最高値を出すことができました。

 加えて、テレビCMオンエア中の3月〜5月は当社のテレビの売上も上昇しています。これはテレビCMだけの効果ではありませんが、テレビCMのタイミングに合わせて、デジタル広告を集中的に行ったり、店頭に配架されるように営業が動いてくれたりと、テレビCMがマーケティングミックスのトリガーになっていることが大きいと感じています。

 制作プロセスの部分では、データを用いたことにより納得感を持って進められたことで、企画や演出のやり直しがほぼなくなりました。そのため、前回と比較して制作工程を三分の一程度まで短縮でき、制作期間自体も非常に短くなりました

投下量が四分の一でも同じ効果?注視の含有が分かれ道に

MZ:今回の施策を振り返り、テレビCM制作で注視データを活用する意義をどのようにお考えですか。

石橋:そもそもマーケターは、「ブランドや商品理解を深めてもらうため、会社から預かった費用で効率良く展開しなければならない」ことを意識して活動する必要があると考えています。

【クリックすると拡大します】
図1 CM認知度とGRPの関係性

石橋:注視度の高いクリエイティブを制作できれば、投下量を変更しなかったとしても認知度を上げることができます。

 図1の波形を使って経営視点からテレビCMの認知度と投下量の関係を見ると、たとえば認知率で30%を出そうと考えた場合、「注視含有の高い」CMであれば500GRPのところ、「注視含有の低い」CM場合は2,000GRP以上必要なことになります。つまり、良いクリエイティブとそうでないものでは1,500GRPに相当する投資の差が発生することになるわけです。少ない投下量で同じ効果が得られるのであれば、経営視点からも非常に有意義ですよね。これがテレビCMの注視率を効率的に高めることの価値だと考えています。

MZ:施策の支援を通して得られた気付きや知見があれば教えてください。

福島:実は、テレビCMの企画段階から注視データを取り込んで制作を進めることと、その結果をPDCAで確認してフィードバックを行うという取り組みはいままで別のサービスとして展開していました。そのため、今回同じクリエイティブで一気通貫して取り組むというのは当社にとっても初めてで、一大プロジェクトでした。今回の取り組みを経て、テレビCM内でタレントを活かす方法や世界観の構築方法、テレビCMを通して訴求したい内容を視聴者に自分ごと化してもらうための考え方など、注視されるクリエイティブ作りのノウハウを多く得られることができました。

 従来では施策実施から成果分析、次回アクションの示唆の段階で注視データの活用を支援してきましたが、これに加えて企画段階から効果的なクリエイティブ作成のコンサルティングが可能になったため、より様々なご要望に対応ができるようになりました。

放送枠選定でも注視データの活用を目指す

MZ:ハイセンスジャパンが今後さらに取り組んでいきたいこと、REVISIOに期待していることをお聞かせください。

石橋:今回、広告代理店のクリエイティブチームからの理解を得ながらPDCAを回し、成果につなげられたことは大きな成果でした。これは、チームとの信頼関係とより良いものを作り出すという目的意識の共有の賜物です。企画開始段階から快くこの取り組みに賛同し協力してくれたクリエイティブチームの皆さん一人ひとりに感謝しています。今後も注視データを活用しながらクリエイティブ制作を行い、今回の成功を横展開していきたいと考えています。

 また、今後はクリエイティブ制作に加えて、放送枠の選定についても注視データを活用したいと思います。これにより、少しでも多くの方に見られるテレビCMを作っていきたいです。

MZ:REVISIOとしては今後、どのような価値を提供していきたいとお考えですか。

福島:放送枠に関する知見は当社が持つ強みの一つです。クリエイティブと放送枠の両輪で注視データを活用して価値を最大化することで、CM認知度のカーブの角度をさらに上げることができます。こういった網羅的な支援で今後、ハイセンスジャパン様のテレビ広告をより効果的なものにしていきたいと思います。

今回の事例で実際に活用されたツールをチェック

 ハイセンスジャパン様の支援時に、REVISIOでは、テレビCM注視&出稿状況分析ツール「RE.Search」を活用しました。同ツールでは、テレビCMのどのシーンが注視されたのか、毎秒単位で可視化することができます。サービスサイトで詳細をご紹介していますので、本記事とあわせてご覧ください。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:REVISIO株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/24 12:00 https://markezine.jp/article/detail/46007