屋外広告・交通広告の広告費が前年度比110%超に
経済産業省により毎月公開されている、特定サービス産業動態統計調査。2024年3月版で広告業売上高を見ると、インターネット広告は前年同月比112.9%となっており、伸長を続けており、国内広告市場においてWeb媒体の存在感は非常に大きくなっています。
一方、屋外広告・交通広告も伸長を続けています。2023年度の売上高において、屋外広告は前年度比で112.3%、交通広告は前年度比で112.5%の成長を記録しており、多くの担当者がオフライン媒体に関心を寄せていることがわかります。
本稿では、2024年上半期(2024年1月~6月)に私が撮影してきた広告の中から話題化した事例、おもしろいと思った事例をピックアップ。現地で見て体感した感想を基に、特徴や良いアイデアを生むヒントを解説していきます。
クリエイティブの情報量をコントロールして話題化を狙う
まず一つ目の事例は、2024年4月に実施されたキャンメイク「プティパレットアイズ04 アマンドブリュレ」の広告です。
渋谷駅で展開された同広告のデザインは、広告の半分以上がビッシリと手書き風の文字で埋め尽くされたもので、立ち止まらないと読めない文字量になっています。
通行人が屋外広告と接触するのは一瞬なので、「コンテンツの量をできる限り減らし、瞬時に内容がわかるようにする」のが一般的です。そのため、ここまでの文字量がある広告には正直驚きを隠せません。ただ、たとえ全部読めなくても、手書き調の効果もあるおかげで、担当者の商品に対する熱量が伝わってくる仕掛けだったと思います。商品に対する愛や本気度を文字量で示したおもしろい事例でした。
逆に情報量を絞って話題化した事例として、2024年6月に実施されたフードデリバリーサービス「Uber Eats」の50%OFF広告が挙がります。同広告では、ピザメニューを最大50% OFFにて提供することを、“広告面を半分使わない”デザインにして展開することで表現しました。
デザインは半分ですが、その半分の中に伝えたい内容がすべて収まっている点も流石でした。「故障したかと思った」などの声も上がりましたが、この異質な展開に驚きの感想を持った方は多かったのではないでしょうか。
セイコーグループが2024年6月に実施した新聞広告もあえて情報量を絞ったインパクトのあるビジュアルで話題になりました。同広告のデザインでは、新聞の見開き(30段)中央に、大谷翔平選手が小さく描かれました。
タレントや有名人を広告に起用する以上、大きく描いた上でファンに見てもらえるよう仕向けるのが通常だと思います。しかし、同広告では、起用した大谷選手をあえて小さく描き、空間をうまく創り出すことで広告のメッセージを強く印象付けることに成功しました。
セグメントした上で配信するWeb広告と違い、オフライン広告は不特定多数の方に見てもらう前提があります。そのため、“見てもらうために”強烈なコピーやビジュアルを利用する場合が多いと思います。今回の三つの事例のように、広告に載せる情報量をあえてコントロールすることで話題化を狙うのも有効な手段といえるかもしれません。