継続購入/リピートの仕組みを正しく知ろう
MarkeZine編集部 吉永(以下、MZ):連載第14回では、3つの事業ステージ「0→1(ゼロイチ)」「1→10」「10→∞」について解説いただきました。特に「1→10」の段階では、購入後の「価値の再評価」がリピートのために重要と伺いましたが、売り上げ構造のお話(第13回)などを通しても、事業の継続と利益の確保にはリピートが不可欠だと印象に残っています。
西口:はい。どんな業種の方でも、「リピーターが大事」というのは皆さん同意されるでしょう。長期的に何度も買っていただける「ロイヤル顧客」という言い方もよくされます。
ただ、売り上げ構造において、あるいは事業ステージとの関係でなぜ大事なのか、そしてリピートいただきたい方々の心理はどうなのかといった点までは、あまり考えられていないと思います。
まず、価値の再評価とリピートについて、紐解いていきましょう。これまで説明してきたように、顧客がプロダクトに便益と独自性を見出し、価値があると感じれば、お金や体力など自分の持つ有限のリソースと交換してプロダクトを入手します。この時の顧客による意思決定が、「初めての価値の評価」であり、初回購入の仕組みです。
「価値の再評価」は、顧客がプロダクトを使用したり体験したりした後に起こります。実際に使ってみて「思った通り、やっぱりよかった」、もしくは「期待していた以上によかった」と思ってもらえれば、その後も使用し購入を続けてもらえます。これが継続購入、いわゆるリピートの仕組みです。
「価値」は、だんだん当たり前になっていく
MZ:逆に、ここで期待が外れてがっかりしたら、もう買わなくなるわけですね。
西口:その通りです。そうなると購入が一過性に終わり、顧客は「離反」し、競合や代替品に流れていきます。他の選択肢がなく、「イマイチだけど安いからいいか」といった理由で購入が続く場合もありますが、その人にとって価値ある別の選択肢が登場したらすぐに離反してしまうでしょう。
MZ:期待と違っていたけれど、納得して買い続けるケースはありますか?
西口:「購入や使用後に便益が変わる」ケースです。食品などで「想像していた味とは違ったがおいしい」みたいな時ですね。購入前と購入後で、顧客が異なる価値を見出したわけで、これはこれで継続購入の可能性があります。
ただ、期待通りか、想定外だが満足という場合でも、一度経験した価値は顧客にとって徐々に当たり前のものになっていくことは理解しておきたいですね。慣れや飽きがきたタイミングで、同じ便益と独自性を打ち出した競合が登場すると独自性が失われ、スイッチ(切り替え)されてしまうこともあるでしょう。
いずれにしても、顧客が実際に使用した後にも便益と独自性の評価は変わってくる、ということがポイントです。