マーケティングを理解すると、人生もラクになる?
MarkeZine編集部 吉永(以下、MZ):本連載も、残りわずかになりました。最後の2回は、“マーケター個人”に焦点を当ててうかがっていきたいと思います。
連載の元となっている書籍『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)の巻末に、「マーケティングの基本を理解すると、人生がラクになる」という内容がありました。これはどういうことでしょうか?
西口:前回(第23回)、本連載のまとめのような形で「マーケティングで成果を上げるには、顧客理解を前提にして、顧客が感じている価値を提案すること」とお伝えしました。マーケター以外の方も含めて、誰もが誰かのために価値を提案しています。相手、つまり顧客があなたの働きに価値を見出して初めて、対価が生まれます。
バックオフィスの方なら、社内の方々が仕事の相手になりますね。非営利の活動であっても、仮に清掃ボランティアによって街がきれいになり、近隣の方々が喜んでくれればそこには「清々しい」「前向きになれる」といった価値が生まれます。逆に、誰も喜ばない活動はいわば“顧客不在”で、何の価値も生まれません。
これは具体的な仕事や活動に関する話ですが、考え方自体は、そのまま「社会人としての生き方」にも当てはめることができます。自分のやっていることに迷ったときの指針を得ることができるのです。
この仕事や活動は、誰に喜ばれているのか
MZ:迷ったときの指針、ですか?
西口:どういうことかというと、今まさに時間や労力を使っていること、あるいは今後どうしようかと悩んでいることに対して、「誰かに、価値を提案できているか」が一つの指針になるのです。そうすると、迷いが少なくなります。
たとえば、やらなければいけないことが多数ある中で、何をしたらいいかわからない時がありますよね。そうした際に、「これを実行して喜んでくれる人はいるか」「この提案や活動に価値を感じてくれる人はいるか」を軸にして考えると、シンプルに答えを導き出せるようになります。
MZ:ちゃんと顧客がいて、どんな価値を提案しているのかがわかっている活動を優先すべき、ということですね。
西口:はい。そして、「これを喜んでくれる人はいない。やめよう」とか「違うことを考えよう」などときっぱり判断できるようになります。上長の指示の下で動いている若手の方だとなかなか難しいかもしれませんが、「誰に、どんな価値を提供できているか」を上長に聞くことはできますね。部下や後輩を持つ上長も、部下に仕事をしてもらう時は「誰に、どんな価値を提供するため」なのかは、ぜひ確認していただきたいですね。
自分の働きによって喜ぶ顧客が見えていたり、このプロダクトが必ず顧客のためになると思えたりしていれば、やる気も湧いてきます。自分のやっていることが誰かの価値につながると感じられることが、モチベーションの源泉になるのです。