AI活用で変わるビジネスの現場
MarkeZine編集部(以下、MZ):今回は、企業のマーケティングにおけるAI/生成AIの活用検討をテーマにお話を伺います。まず自己紹介からお願いできますか。
渡邉:日立ソリューションズにおいて、デジタルマーケティングソリューション「PointInfinity」プロダクト責任者として、製品の戦略企画から開発、マーケティングを含め、製品のライフサイクル全般に関わる現場を取りまとめています。
矢田:私はAIに関する事業推進全般、開発推進の統括、新規ソリューションの提案検討など、幅広い業務を担当しております。
MZ:現在のビジネスにおけるAI活用の流れをどのように見ていらっしゃいますか。ビジネスシーンでの使われ方、浸透具合、活用にあたっての実態や課題について所感をお聞かせください。
渡邉:特に生成AIにフォーカスすると、これからのビジネスや日々の業務でも、活用は避けては通れない流れになってきていると認識しています。従来のAIと比べて、誰でも簡単に使えるようになりました。とはいえ、実際の活用については企業間でばらつきのある印象です。
具体的なビジネスシーンでの活用方法としては、まず日常業務の効率化が挙げられます。議事録の作成や翻訳、ドキュメント作成などの比較的取り組みやすい分野から、徐々に業務への導入が始まっています。今後は多くの企業が自社のサービスや製品に、この技術を取り込んでいくことで、より高度な製品が登場すると予測しています。
矢田:生成AIの登場により、AIが使いやすい環境になりました。今までは、特殊な言語などを用いて、過去のデータから需要予測などを行うことがメインでした。しかし、生成AIが登場したことにより、人間が生活のなかで使っている自然言語でAIを扱えるようになりました。その結果、ビジネスパーソンにとってAIがより身近になったのではないかと思っています。
昨今では、画像・映像・音楽などの分野でも日々進化を続けています。
AI/生成AIの専門本部設立。日立ソリューションズが加速させる生成AI活用
MZ:日立ソリューションズも、AI活用について力を入れていると伺っています。実際にどういったことを行っているのでしょうか。
矢田:当社は10年以上前、ビッグデータが注目された頃からAIの活用に取り組んでおり、豊富な実績があります。
矢田:生成AIに関しては、社内開発業務における効果的な活用を実現すべく、2024年4月に専門本部が設立されました。「部」としては以前から存在していたのですが、各部をまとめて「本部」に格上げしたことで一層力を入れています。
生成AIの技術はスピーディーに進化しています。そのため、常に最新技術をキャッチアップし、実践しながら検証を進めていくアプローチをとれる体制を整えています。
AI/生成AIの利用状況を知る
日立ソリューションズは企業のビジネスパーソンに、AI/生成AIの利用状況・企業における活用状況を調査。その結果を公開中です。詳しい調査結果と、わかりやすい図説を載せた特設ページは、こちらからご覧ください。
AIをデジマに組み込む──日立ソリューションズが考える、デジタルマーケティング
渡邉:AI/生成AIは、当社が提供するデジタルマーケティングソリューションにも活用しています。具体的な紹介の前に、まず私たちが考えるデジタルマーケティングの考え方を説明させてください。
近年は、スマホの普及やソーシャルメディアの発展、ECの一般化のほか、モノやサービスの多様化により、お客さまの消費行動にデジタルが密接に関わるようになってきました。
そのため、お客さまデータの収集からアクションまで、マーケティングにおけるデジタルの活用が求められています。チャネルを横断してお客さまを「個」として認識し、データでお客さまの行動を捉えて顧客理解を深める必要があります。
渡邉:したがって、お客さま一人ひとりの興味・関心にあった、最適なアプローチをすることが重要です。ニーズにあった情報を提供しないとカスタマーエンゲージメントの低下につながります。
渡邉:デジタルマーケティングでは、カスタマーエンゲージメント向上のためにPDCAサイクルを回していくことが重要です。
そのためには、会員サービスやロイヤルティプログラムを通じて収集したデータを活用します。会員属性や行動データなどを集め、分析することで、お客さま一人ひとりに合わせたオファー(メッセージやインセンティブ)を作成し、スマートフォンアプリや会員ページなどのデジタル接点を通じてお客さまに届けます。
このようなOne to Oneのオファリングを実現するソリューションのひとつとして、当社が展開するデジタルマーケティングソリューション「PointInfinity(ポイントインフィニティ)」があります。
One to Oneを実現する「PointInfinity」とは
渡邉:「PointInfinity」は会員・ポイント管理を中心としたお客さまとのつながりをつくるマーケティング統合型CRMです。ポイントサービスを含むロイヤルティプログラムの提供から、AI分析・効果測定、One to Oneコミュニケーションなど、デジタルマーケティングのPDCAプロセスをオールインワンで提供し、カスタマーエンゲージメント向上を実現します。
また、早くから高度なAI予測に取り組んでおり、お客さまが離脱する前に予兆を検知し休眠顧客化をAIで防げるほか、お客さまへのおすすめ商品をAIが自動予測することが可能です。
生成AIを用い、レコメンドを強化
矢田:お客さまへのおすすめ商品をAIが自動予測するレコメンド機能では、数百万人規模の会員の購買履歴や属性情報をもとに、AIを用いてどのような人がどのような商品を購入しやすいかを予測します。この予測結果をもとに、クーポン送付など購買につながるような施策と組み合わせることで、お客さまの購買を促進します。
矢田:これらの機能に加え、最近では生成AIの技術を活用し、新たな取り組みを始めようとしています。従来のレコメンドでは、単に商品を推奨するだけでしたが、生成AIを活用することで、なぜその商品がおすすめなのかを説明する文章(レコメンド文)を生成できます。
矢田:具体的には、キャッチーな文言とともに、その商品がおすすめである理由を文章化し、クーポンに添えて提示します。これにより、お客さまの購買意欲が高まることが期待されます。まだ検証段階ではありますが、2024年3月に開催されたリテールテックJAPAN 2024で参考出展いたしました。
AI/生成AIの利用状況を知る
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社会インフラを支える技術力と豊富な実績を礎に進化し続ける
MZ:「PointInfinity」の強みは、どういったところにありますか。
渡邉:1つ目として、「PointInfinity」は2006年の提供開始以来、約18年にわたって、さまざまな業種・業態、規模の企業様の会員・ポイントサービスを支えており、延べ会員数が3億人を超える実績をもっていることです。
渡邉:2つ目は、システムの信頼性の高さから、社会インフラと呼ばれるようなお客さまにもご利用いただいていることも大きな特長の一つです。
このように豊富な導入実績をベースに、さまざまなお客さまのご要望を現場で直接伺いながら、マーケティング分野の先進技術を製品に取り込んでまいりました。また柔軟なカスタマイズ性により、きめ細やかなご要望にお応えできるソリューションへと進化し続けています
3つ目は、当社の持つ技術力、そして日立グループとしての総合力です。AI技術の研究開発から実用化、さらにはお客さまへの提供に至るまで、一貫した取り組みを推進しています。
破壊的イノベーションを遂げる生成AIを、企業のビジネスに生かす
MZ:最後に、今後の展望や展開についてお話しください。
渡邉:今後も、生成AI技術の進化に伴い、さまざまな新しい応用が出てくることが予想されます。こうした技術の進歩を踏まえつつ、お客さまのビジネス拡大、売上向上、そして持続的な成長に寄与するデジタルマーケティングソリューションの展開をめざしています。
マーケティング分野におけるAI活用は、まだ世の中に広く浸透しておらず、事例も限られている状況です。このような状況下で、私たちはデジタルマーケティング領域におけるAI活用に積極的に取り組むことで、お客さまの持続的なビジネスの成長に貢献していきたいと考えています。
矢田:生成AI技術は、破壊的イノベーションを遂げています。私たちの課題は、この革新的な技術をいかに実用的なソリューションへと昇華させていくかということです。この技術をもとに新しい市場や概念を定義し、それを市場に提供していくことが大切です。単に技術を活用するだけでなく、その技術が生活者の行動変容に寄与できるようにしたいです。
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