人手も工数もかかってしまう“広告クリエイティブ制作”
━━OneAIでは、チャットリターゲティング広告システム「ChiChat」を始め、AIを活用したサービスにより多くの事業会社のCV獲得を支援してきました。そんな貴社から見て、近年、広告クリエイティブの制作現場からはどのような悩みを聞くことが多いのでしょうか。
広告クリエイティブを出す際には、同じクリエイティブの広告を何度も出してしまうと消費者に飽きられてしまい効果が落ちるため、新たなクリエイティブを常に作り続ける必要があります。この作業は現在基本的に人力で行う必要があるため、人手も工数もかかってしまい制作現場がひっ迫しています。その上、クリエイティブの良し悪しは成果のデータなしに判断するのは難しく、その基準が曖昧になったり、テストに工数がかかったりといった課題を多くの企業が抱えているのが現状です。
生成AIの誕生をきっかけにAI活用も模索されるようにはなっていますが、現状では生成AIではなかなか良いクリエイティブができなかったり、著作権の扱いがわからなかったりするため十分に使えていません。
本格的な制作に入る前に、参考資料としての画像作成や、テキスト部分の案出しに使うといった程度にとどまっており、クリエイティブそのものの制作には使っていないという現場も多いようです。
広告クリエイティブ画像をAIが数分で生成
━━このような課題を抱えているクリエイティブ制作現場の課題を解決するために貴社ではAIを活用したクリエイティブ画像の生成サービス「OneDesign」を開発し、2024年7月1日から正式版をリリースしました。同サービスの概要を教えてください。
OneDesignは、生成AIを利用して広告クリエイティブの制作プロセスを効率化し、CVRの最大化を支援するサービスです。
特にニーズが強いのは「AIでバナー画像を自動生成できる」機能です。商品の特長の入力と素材となる画像をアップロードするだけで、バナー広告のクリエイティブを1枚につき約10秒で生成します。入力と合わせても最短5分ほどしかかかりませんし、一度の入力で約30パターンを生成できます。また、「CVR推論」ができるようになっており、その機能を使えば生成されるパターンそれぞれのスコアリングもできるんです。
これにより、多くの企業が抱える「リソースがない」「成果が出ない」「クリエイティブ変更のPDCAに時間がかかる」「外注すると費用がかかる」などの悩みを解決することが可能です。
工数とコストを大幅削減、誰もが簡単にAIを使えることの意義
━━一つのバナー広告を最短5分ほどで作成可能なのは工数やコストの削減に大きく寄与しそうですね。
そうですね。実際、多くの企業がこの部分に魅力を感じてくださっています。一般的には、バナー広告のクリエイティブ制作を外注すると、1万~3万円ほどかかってしまうことが多いです。これらの費用が削減できるためROIの改善が期待できます。
また、クリエイティブの制作や変更のために、外部の関係者に指示出しや修正依頼などを行った場合、コミュニケーションコストもかかってしまいます。OneDesignを活用することにより担当者一人で完結できることもポイントです。操作が非常に簡単なので、現場のディレクターや営業といった“非デザイナー”の方々でも、クライアントから情報や素材を提供してもらってすぐに自分で画像を作ることができます。
━━Adobe Photoshopのファイル形式である「PSDファイル」でのダウンロードを可能にしていますが、何か狙いはあるのでしょうか。
OneDesignでは現状、シンプルな画像を生成することに特化しています。そのため、一度クリエイティブの下地をOneDesignで作成してから、細かい装飾や配置変更などの編集が行いやすいように多くのデザイナーが利用しやすいPSDファイルでも書き出せるようにしました。
最終的には、プラットフォーム上だけで完璧なクリエイティブを作れることを目指してはいますが、現在は編集の自由度を上げることで「クリエイティブに手を加えたい」というニーズに応えるのがPSDファイルでダウンロードを可能にしている狙いです。
曖昧だったクリエイティブの良さを定量的に判断
━━「CVR推論」の機能は、具体的にどのように活用できるのでしょうか。
CVR推論では、OneDesignで生成した画像に対してCTR・CVRの数値を予測し、事前にスコアリングします。過去のMetaでの配信データをもとに、見られたクリエイティブと、クリエイティブを見た人数、クリックされた数、さらにはCVに至った数といった数値を解析し、そのデータを基に推測するものです。
生成した30枚ほどの画像をA~Dの4段階でスコアリングするため、それを基に予測値が高いものから使えます。この機能を活用することで、広告のパフォーマンスが高まることはもちろんですが、クリエイティブの客観的な評価が可能になったこともポイントだと感じています。
従来、クリエイティブ領域では、定量的にクリエイティブの評価をすることが難しかったため、どうしても定性的に“何となく良いもの”を選ばざるを得ませんでした。しかし、CVR推論の機能を活用することで良いクリエイティブの基準を数値で見える化できるようになったこともポイントです。
クリエイティブ作成作業にかかる時間が16分の1に
━━OneDesignの利用により、企業が期待できる効果を教えてください。
たとえば、広告会社が新しくバナー制作を行う際に、1枚あたりの制作時間が1時間かかるとします。その場合、デザイナーをフルタイムで雇用して月に160枚のバナー制作を任せると、単純計算で月に約160時間も費やされてしまうことになります。
一方、OneDesignを活用すれば、制作業務の多くをAIに任せることができるため、デザイナーの作業時間は1ヵ月で10時間程度に抑えることが可能になります。
そうすればデザイナーは時間に余裕ができた分、広告制作だけでなくブランディングにおけるより良い表現の検討など、別の仕事にも注力できるようになるんです。先述の通り外注費を抑えるという観点でも有効ですが、昨今では雇用が難しくなっているとも聞くデザイナーの貴重な戦力を最大限に活かせられるのも大きな特長です。
闇雲にAIに飛びつくのではなく業務範囲を明確化する
━━現状、AIを業務の中で活用していくことに対して不安を抱えている人は少なくないと思います。そんな中で貴社としては、OneDesignをどのように役立ててほしいと考えていますか。
AIという言葉の流行により、多くの企業が「AIを使わなければならない」と思いがちです。しかし、AIも決して万能なツールというわけではないので、活用する前にはまず、AIと人間の業務範囲を分けることが重要だと考えています。
OneDsignで考えると、クリエイティブを大量に作る業務の支援は行えますが、商品・サービスのブランディング分野や全体のコンセプト考案など、感覚や感情に訴える領域はまだ担えないと考えています。
このように、AIを活用して効率化できる部分を明確化し、AIの活用がまだ見込めない部分を人間が担う。このような分担で業務に取り組むことがAIを業務に活用していく上で必要になってくると思います。
そうすれば、今まで単純作業に工数をかけざるを得なかった人たちに余裕ができるため、担当業務のクオリティ向上が期待できます。加えて、一人当たりが担当できる業務のキャパシティーを広げることにもつながるでしょう。OneDesignもこうした観点で利用企業の収益拡大にも寄与できるのではないかと考えています。
━━最後に、今後の展望を教えてください。
OneDesignのコンセプトは「AI×デザインで世界中のデジタル広告をよりクリエイティブに」です。そのため、まずはバナー画像を作るサービスに注力していますが、近い将来にはLP(ランディングページ)画像や動画広告の作成ができるように開発していきたいです。
特に動画広告のクリエイティブ制作サービスに関しては、2025年初頭にはβ版をリリースする予定です。画像生成と同様に、しっかりと消費者の購入を促すことができる効果的なクリエイティブ制作の支援に引き続き注力していきます。
「AIと人間の共生で無限の可能性を創造する」の実現を目指して今後も新たなサービスの開発を行っていきます。