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リテールのマーケティングトレンド(AD)

検索は究極のファーストパーティデータ、CX視点で考えるリテールメディア広告の可能性

 リテールメディアには購買意欲が高いユーザーが集まり広告媒体として高い付加価値を持つため、リテールメディア広告に関心を持つ企業も増えている。そんなリテールメディア広告の可能性について、約10年前から発信しているのがZETA 代表取締役社長の山崎徳之氏だ。「リテールメディア広告は消費者の幸せにつながる」という山崎氏に、その理由とリテールメディア広告市場の状況について聞いた。

リテールメディア広告が注目される背景

――ここ数年、「リテールメディア」「リテールメディア広告」への興味関心が高まっています。背景を教えてください。

 まずは私たちZETAが考えるリテールメディアの定義からご紹介します。前提としてECサイトを中心としたコマースメディアという「買い物をするためのメディア」が存在します。コマースメディアはブランドメディアとリテールメディアの2つに分けられ、ブランドメディアはメーカーの自社EC、リテールメディアは自社の製品がなくブランド企業の商品を販売するECサイトを指します。

 代表的なリテールメディアとしてAmazonや楽天市場がありますが、これらは通販サイトの機能だけではなく、膨大な顧客データやトランザクションデータを活用してユーザーが必要とする情報を届ける媒体(メディア)としての機能も有しています。

リテールメディアが持つメリット
リテールメディアが持つメリット

 このリテールメディア上で展開される広告施策がリテールメディア広告です。私はリテールメディア広告が注目されるようになった理由は大きく2つあると考えています。1つはクッキー規制、もう1つはカスタマーエクスペリエンス(CX)への関心の高まりです。

 クッキー規制の背景は皆さんご存知のとおりです。リターゲティング広告は費用対効果が高い施策ですが、プライバシー保護の規制強化によりサードパーティCookieを利用した広告配信が難しくなりつつあります。これまでリターゲティング広告で高い成果を得ていた企業は、サステナブルな企業を目指すためにも消費者としっかり向き合う必要が出てきました。そこで、リターゲティング広告以外でどのような広告戦略が有効なのかを考えたとき、有益な施策の1つとしてリテールメディア広告が注目されるようになったのです。

――クッキー規制後の有益な広告施策の1つとしてなぜリテールメディア広告が候補に挙がったのでしょうか?

 まず、リテールメディア広告はファーストパーティデータを活用して広告を配信するためクッキー規制の影響を受けにくいということ、そしてユーザーのその瞬間の需要に基づいて広告を配信するため非常に自然な情報を提供することができるという前提があります。クッキーが規制されようがされまいが、ファーストパーティデータはCXの向上に役立つ、という認識がまず必要です。

 消費者のためになる有益な手段はSNSからのリーチなども挙げられます。その中でもリテールメディア広告が候補に挙がった理由の1つは、欧米との格差が大きく日本ではまだ広まりきっていないという点です。

 SNS広告は欧米でも日本でも浸透していますが、リテールメディア広告は日本ではまだまだ浸透していないため、ブルーオーシャンのマーケットを取りに行くことができるチャンスなのです。

 またリテールメディアとは小売業者が運営するECサイトなので、「何かを買いたい」と考えているユーザーが集まる場所です。言い換えれば、リテールメディア広告とは、購買意欲が高いユーザーへの広告施策であるということです。これらがリテールメディア広告の大きな特長であり、有益な広告施策であると考えられる理由です。

 私は、以前と違い「商品をカートに入れるまでが集客」と言える状況になりつつあると考えています。今までは“多くの人にサイトに訪問してもらい、その中でわずかでも購買に結びつけば良い”という考えで「ランディングまでが集客」と捉えられ、サイト外部の広告施策に力を入れるのが主流でした。しかしクッキー規制によりリターゲティング広告に頼った集客ができなくなった現在、ランディングした後に様々な商品を比較検討し、カートに入れるまでの導線でのアプローチが重要になります。

消費者に「有益な情報だ」と思ってもらえる広告

――2つ目のCXへの関心の高まりについてはいかがでしょうか?

ZETA株式会社 代表取締役社長 山崎徳之氏の画像です
ZETA株式会社 代表取締役社長 山崎徳之氏

 皆さんのECサイトでの行動を思い出していただくと、多くの場合、絞り込みや並び替えなどで商品検索をするかと思います。商品を検索しているときは具体的に欲しいものがある可能性が高く、カスタマージャーニーの観点でも消費者の「買いたい」ニーズが顕在化しているため、広告を出す絶好のタイミングと考えます。

 消費者側から発信される「私はこのような商品を探しています」という情報を活用して最適な提案ができれば、購入の最後のひと押しになる場合も、A社の製品からB社へ翻意を促すきっかけになる場合もあると思います。いずれにしても高い効果が期待できます。

――検索連動型の広告をイメージすれば良いでしょうか?

 おっしゃるとおりです。「昨日はフライパンを探していて、今日はモバイルバッテリーを探しているユーザー」がいたとして、リターゲティング広告だと昨日も今日も同じフライパンの広告を送り続ける可能性がありますが、検索連動型広告であれば「今モバイルバッテリーが欲しい」と思っている相手にフライパンの広告を出すことはありません。

 そのため広告を閲覧した消費者はスパムや迷惑広告ではなく「これは有益な情報だ」と受け止めてくれるのではないでしょうか。つまり、リテールメディア広告、特に検索連動型広告はCXの観点から見ても非常に有益な広告施策であると考えます。

「広義」と「狭義」のリテールメディア広告

――リテールメディア広告は、検索連動型広告の他にどのようなものがあるのでしょうか?

 日本で近年参入する企業が増えつつあるリテールメディア広告として、店頭サイネージ広告=小売の店舗に出すサイネージ広告が挙げられます。

 ただ、店頭サイネージ広告はパーソナライズしづらいという弱点があります。もちろん、それぞれの店舗に合わせた商品が掲示されますし、日々の最適化も行っているでしょう。ですが、「紙のチラシをサイネージに置き換えただけ」とも捉えられます。

 「紙のチラシを店頭サイネージ広告に置き換える」ことはテクノロジーやデータを活用する余地が少なく取り組みやすいことは確かですが、消費者一人ひとりにあわせた広告を掲示することは難しいため『広義のリテールメディア広告』に分類されるのではないでしょうか。

 次に挙げられるのがECサイトに貼るバナー広告です。これまで外部サイトにバナー広告を出稿していた企業が、ECサイトに貼るほうが効果的であると判断し、広告を設置するケースがあります。データを活用しユーザーによってバナーの出し分けができるため、バナー広告は『広義の中でも狭義寄りのリテールメディア広告』に分類されると思います。

 また、先ほど触れた検索連動型広告は、ユーザーが自ら入力した検索条件であり「こういうのが欲しい」と発信したデータを活用する広告です。この最強のファーストパーティデータを活用してユーザーのニーズに合うパーソナライズされた広告を配信できることに加え高いROASも期待できるため、『狭義のリテールメディア広告』と言えると思っており、現時点ではリテールメディア広告の中で最も効果的な広告施策だと考えています。

 この「検索連動型広告」を広げることが今後のリテールメディア広告の発展において鍵となるのではないでしょうか。

「販売促進費=ネガティブなコスト」という誤解

――現在国内では店頭サイネージへの参入が進んでいるとのことですが、なぜROASも訴求力も高い検索連動型のリテールメディア広告がなかなか普及しないのでしょうか?

 日本の企業のマーケティングに関する支出は「広告宣伝費」と「販売促進費」の大きく2つに分けられ、広告宣伝費は製品訴求のための必要経費と捉えられている一方で、販売促進費は売れ行きが好調ではないときにブーストさせるために投下される費用、つまり利益を減らす“前向きでない費用”だと認識されている傾向があります。

 日本のトラディショナルな企業では、リテールメディア広告にかける費用は後者の「販売促進費」に該当すると判断されがちな文化が残っています。本来であればリテールメディア広告の費用は販売促進費ではなく広告宣伝費であるものの、その点の理解が広まっておらずなかなか投資が進んでいない現状があるのではないでしょうか。

 また、決裁権を持つ人がテクノロジーの理解が浅いことも多く、リテールメディア広告に投資できても店頭サイネージ広告という選択になりがちなのではないでしょうか。これは日本のマーケティング業界全体の課題と考えます。

ZETA株式会社 代表取締役社長 山崎徳之氏の画像です

――今後この課題は解決されていくのでしょうか?

 現時点でリテールメディアに対する理解が進んでいないのは事実ですし、そこは大きな課題ですが、その状態が未来永劫続くわけではないと考えます。

 今でこそ巨大産業になったと言えるECサイトも10年前は、ECと店舗の両方を運営する企業の中ですら「ECは既存店舗の利益をかすめ取る」という否定的な意見が多数派でした。今、その企業の方に「ECは店舗の敵ですか?」と聞いたら、「とんでもない、ECは我が社の成長の中心的な存在です」と答えるはずです。

 リテールメディアやリテールメディア広告も、今でこそ「よくわからないもの」かもしれません。ですがECサイトのように10年後にはまったく状況が変わっている可能性は非常に高いのではないでしょうか。

「消費者にとってより好ましいこと」を意識する

――中長期的に見れば、リテールメディア広告が市場に浸透する可能性が高いことがわかりました。では、まだ理解が進まない現在、山崎さんはリテールメディア広告の普及に関してどのように企業に働きかけているのでしょうか。

 まずは、「消費者にとって好ましい取り組みであればいずれ花咲く」という信念を持ち続けることです。

 もちろん早いか遅いかの違いはあるかもしれませんが、消費者の幸せにつながる取り組みを展開してくことで理解されるようになるのではないかと思います。

 そしてリテールメディア広告の具体的な広め方ですが、“小さい成功”を少しずつ大きくしていく「雪だるま方式」が良いのではないかと考えています。莫大な資金を投入してキャンペーンを展開する方法もあるかもしれませんが、あまり現実的ではないので、まずは小さな成功を収めていく方式で少しずつ普及に勤しんでいます。

リテールメディア広告で小さな成功を重ねるには?

――最初の“小さい成功”をどう作っていくのでしょうか?

 検索連動型広告を用いることが小さい成功の近道であると考えます。そこでキーとなるのが「検索」であり、企業の方に「検索はマーケティングである」ということをご理解いただくことからスタートする必要があると考えます。

 Google AdWords(現「Google広告」)を思い出してみてください。Googleはリリースされた当初高い検索性が非常に話題になり、その後マネタイズの手段としてリスティング広告が登場しました。

 リスティング広告は「精度の高い検索エンジンを使って何かを探している人に対し、その検索キーワードに基づいた広告を出せば喜んでくれるはずだ」という発想に基づいた広告で、実に画期的なビジネスモデルでした。

 この点を踏まえて、購入意欲の高いユーザーが多く集まっているECサイト内でどのような広告であればCXも広告効果も高めることができるでしょうか? そのように考えると検索連動型広告の優位性もご理解いただけるかと思います。

 ただし、忘れてならないのは検索精度です。Google広告の成功の基盤は「高い検索精度を誇るテクノロジーがある」という点です。これと同じで「リテールメディアで良質な広告を出す」ためには、前提として検索精度が高いことが必要になるのです。

 そしてもう1つ大切なポイントは広告の出稿先である「リテールメディアの媒体規模」です。2つのECサイトがあったとして片方のPV数がもう片方の100倍あるとしたら、媒体価値の差はさらに大きくなるでしょう。大規模でありかつ高い精度の検索エンジンを持つリテールメディアで一歩を始めることが、最初の小さな成功を達成するポイントなのではないかと考えています。

信念を突き通し、伴走する

――リテールメディア広告を出稿したい企業の方、またはリテールメディアとして広く広告主の方から投資を受けたい事業者の方に対し、ZETAはどのように伴走していくのでしょうか。

 私たちの強みは日本の主要な大手ECに対し、高精度な検索エンジンを提供している点にあります。まだ日本のECの地位が高くなかった頃から実績を積み重ねてきたので技術力も上がりましたし、媒体力の高い大手ECサイトにおいて圧倒的なシェアがあります。

 大手ECサイトで高精度な検索結果を提供し、かつ広告事業を展開できる企業と言えばZETAしかないと考えています。

 私たちには「消費者にとって好ましい取り組みは、いずれ世の中に受け入れられるようになる」という信念があります。消費者を幸せにする方法を媒体社、広告主の方々と実践し、この信念が近い将来多くの方々にご理解いただけることを信じて皆さまと伴走していきます。

リテールメディアやサイト内検索に興味のある方におすすめ!

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:ZETA株式会社

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/07/29 10:30 https://markezine.jp/article/detail/46167