“茶系トクホ”のパイオニアとしての歩み
──花王にとって「ヘルシア」はどのようなブランドだったのでしょうか? ブランドの歴史とともにお教えください。
長谷川(花王):ヘルシアは、花王の健康事業を確立したブランドです。体脂肪や内臓脂肪に関する長年の研究をベースに商品を開発し、2003年に茶系飲料として初めて体脂肪低減機能を訴求した特定保健用食品(トクホ)として発売しました。ロングセラー商品として長く愛され、累計販売本数は約31億本に上ります。今では多数の茶系トクホ飲料が発売されていますが、パイオニアとして市場をけん引してきたのはヘルシアであると考えています。
長谷川(花王):飲料・食品業界の慣習は、他の業界とはまったく異なります。花王は日用品メーカーのため、トクホの申請手続きからマーケティング手法まで新しいチャレンジを重ねながら、21年間にわたり走り続けてきました。
柳田(花王):2023年10月からは、リブランディングにも取り組んでいました。ヘルシアでは長年、内臓脂肪の低減を助ける効果のエビデンスや、機能価値の訴求をコミュニケーションの中心に据えてきました。しかし、多くの機能性商品が発売され、ヘルシアのユニーク性が失われつつある中、機能性だけでなくブランドの人格を出す方向へとシフトしたのです。「食事や運動などで健康行動を実践する人を、ヘルシアが応援する」という寄り添い型へとリブランディングしていきました。
「お客様の健康を支えたい」ヘルシアの想いをキリンへ
──事業譲渡に至った理由や背景をお教えください。
柳田(花王):花王グループは、中期経営計画の目標達成に向けて事業ポートフォリオの強化を推進中です。その一環として、ヘルシア事業の譲渡を決定しました。市場環境が急速に変化する中、飲料事業はもとより免疫研究のリーディング企業であるキリングループの下で再出発することが最良の選択肢であると判断しました。
──ヘルシアが譲渡されると聞いて、どう思われましたか?
猪股(キリンビバレッジ):事業譲渡の話を聞いたときは、大変驚きました。ヘルシアと聞いて真っ先に思い浮かんだのは発売当時のことです。当時、私は高校生だったのですが、発売時に大きなインパクトを受けた記憶があります。ペットボトルの形が斬新でしたし、トクホという新しい市場のパイオニアとして話題を集めていたためです。
──花王とキリンは、内臓脂肪と免疫に関する共同研究や「ヘルシア緑茶プラス 免疫ケア」の販売などで協働された経験もあります。2社間で、ブランドの引き継ぎに関してどのようなコミュニケーションがありましたか?
長谷川(花王):我々の原点にあるのは「生活者起点」という考え方です。ヘルシアは「トクホの茶系飲料を作ろう」という視点で生まれたのではなく、生活者の困りごとや課題を捉えた上で「どのような形態が課題解決に適しているか」を考えた結果、誕生した商品です。今後も長くブランドとして愛されていくためにも、その点はちゃんとお伝えしたいと思いました。
猪股(キリン):「お客様の生活の一番身近な場所で寄り添い健康を支えたい」というヘルシア発売時からの想いを丁寧に説明いただきました。そのお話にはメンバー全員が感動しましたし、改めて「だからこれほど長く愛されてきたんだな」と再確認しました。同時に責任も感じましたし、歴史と信頼があるブランドを今後どのように育成していくか、チームでも熟慮を重ねていきました。