SHOEISHA iD

※旧SEメンバーシップ会員の方は、同じ登録情報(メールアドレス&パスワード)でログインいただけます

おすすめのイベント

おすすめの講座

おすすめのウェビナー

マーケティングは“経営ごと” に。業界キーパーソンへの独自取材、注目テーマやトレンドを解説する特集など、オリジナルの最新マーケティング情報を毎月お届け。

『MarkeZine』(雑誌)

第104号(2024年8月号)
特集「社会価値創出につながる事業推進の在り方とは?」

MarkeZineプレミアム for チーム/チーム プラス 加入の方は、誌面がウェブでも読めます

業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究

花王からキリンへ「ヘルシア」ブランド譲渡 “エモい”広告の真意と長年愛されるブランド作りの姿勢を問う

 花王のロングセラーブランド「ヘルシア」が、2024年8月にキリンビバレッジへと譲渡された。譲渡を前にした7月、東京メトロ東西線で「花王からキリンの皆さんへ、ヘルシア事業の譲渡にあたり、お伝えしたいこと。」と題した心温まる広告を展開し、話題を集めた。事業譲渡に際して企業が広告を打つことは珍しい。その狙いや真意を探るべく、ヘルシア譲渡に関わった両社の担当者3名を取材。ヘルシアのように、長年愛され続けるブランドを育むために必要な姿勢についても伺った。

“茶系トクホ”のパイオニアとしての歩み

──花王にとって「ヘルシア」はどのようなブランドだったのでしょうか? ブランドの歴史とともにお教えください。

長谷川(花王):ヘルシアは、花王の健康事業を確立したブランドです。体脂肪や内臓脂肪に関する長年の研究をベースに商品を開発し、2003年に茶系飲料として初めて体脂肪低減機能を訴求した特定保健用食品(トクホ)として発売しました。ロングセラー商品として長く愛され、累計販売本数は約31億本に上ります。今では多数の茶系トクホ飲料が発売されていますが、パイオニアとして市場をけん引してきたのはヘルシアであると考えています。

花王 ライフケア事業部門 ヘルス&ウェルネス事業部 長谷川舞氏
花王 ライフケア事業部門 ヘルス&ウェルネス事業部 長谷川舞氏(※取材当時の所属部署)
前職は食品メーカーで、ベビーフード、ヨーグルト、飲料などのマーケティング業務に携わる。2022年花王に入社、ヘルシアのブランドを担当

長谷川(花王):飲料・食品業界の慣習は、他の業界とはまったく異なります。花王は日用品メーカーのため、トクホの申請手続きからマーケティング手法まで新しいチャレンジを重ねながら、21年間にわたり走り続けてきました。

ヘルシアの歴史
ヘルシアの歴史

柳田(花王):2023年10月からは、リブランディングにも取り組んでいました。ヘルシアでは長年、内臓脂肪の低減を助ける効果のエビデンスや、機能価値の訴求をコミュニケーションの中心に据えてきました。しかし、多くの機能性商品が発売され、ヘルシアのユニーク性が失われつつある中、機能性だけでなくブランドの人格を出す方向へとシフトしたのです。「食事や運動などで健康行動を実践する人を、ヘルシアが応援する」という寄り添い型へとリブランディングしていきました。

花王 ライフケア事業部門 ヘルス&ウェルネス事業部 ブランドマネージャー 柳田雄一氏
花王 ライフケア事業部門 ヘルス&ウェルネス事業部 ブランドマネージャー
柳田雄一氏(※取材当時の所属部署)
2005年に花王に入社。人材開発担当として本社や国内工場、アジアリージョンへの駐在を経て、2016年からマーケティングの事業部に異動。食品飲料やサニタリーなどのマーケティングを担当し、2022年4月からヘルシアブランドマネージャーを約2年務めた

「お客様の健康を支えたい」ヘルシアの想いをキリンへ

──事業譲渡に至った理由や背景をお教えください。

柳田(花王):花王グループは、中期経営計画の目標達成に向けて事業ポートフォリオの強化を推進中です。その一環として、ヘルシア事業の譲渡を決定しました。市場環境が急速に変化する中、飲料事業はもとより免疫研究のリーディング企業であるキリングループの下で再出発することが最良の選択肢であると判断しました。

──ヘルシアが譲渡されると聞いて、どう思われましたか?

猪股(キリンビバレッジ):事業譲渡の話を聞いたときは、大変驚きました。ヘルシアと聞いて真っ先に思い浮かんだのは発売当時のことです。当時、私は高校生だったのですが、発売時に大きなインパクトを受けた記憶があります。ペットボトルの形が斬新でしたし、トクホという新しい市場のパイオニアとして話題を集めていたためです。

キリンビバレッジ マーケティング部 ブランド担当主任 猪俣唯子氏
キリンビバレッジ マーケティング部 ブランド担当主任 猪股唯子氏
2011年にキリンビバレッジに入社後、約10年間マーケティングリサーチ部門に従事。現在は主にヘルスサイエンス・健康領域の商品開発・ブランド戦略などに携わる

──花王とキリンは、内臓脂肪と免疫に関する共同研究や「ヘルシア緑茶プラス 免疫ケア」の販売などで協働された経験もあります。2社間で、ブランドの引き継ぎに関してどのようなコミュニケーションがありましたか?

長谷川(花王):我々の原点にあるのは「生活者起点」という考え方です。ヘルシアは「トクホの茶系飲料を作ろう」という視点で生まれたのではなく、生活者の困りごとや課題を捉えた上で「どのような形態が課題解決に適しているか」を考えた結果、誕生した商品です。今後も長くブランドとして愛されていくためにも、その点はちゃんとお伝えしたいと思いました。

猪股(キリン):「お客様の生活の一番身近な場所で寄り添い健康を支えたい」というヘルシア発売時からの想いを丁寧に説明いただきました。そのお話にはメンバー全員が感動しましたし、改めて「だからこれほど長く愛されてきたんだな」と再確認しました。同時に責任も感じましたし、歴史と信頼があるブランドを今後どのように育成していくか、チームでも熟慮を重ねていきました。

次のページ
事業譲渡の直前になぜ?手書きのメッセージ広告

この記事は参考になりましたか?

  • Facebook
  • X
  • Pocket
  • note
業界キーパーソンと探る注目キーワード大研究連載記事一覧

もっと読む

この記事の著者

堤 美佳子(ツツミ ミカコ)

ライター・編集者・記者。1993年愛媛県生まれ。横浜国立大学卒業後、新聞社、出版社を経てフリーランスとして独立。現在はビジネス誌を中心にインタビュー記事などを担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

この記事は参考になりましたか?

この記事をシェア

MarkeZine(マーケジン)
2024/09/24 08:00 https://markezine.jp/article/detail/46298

Special Contents

PR

Job Board

PR

おすすめ

イベント

新規会員登録無料のご案内

  • ・全ての過去記事が閲覧できます
  • ・会員限定メルマガを受信できます

メールバックナンバー

アクセスランキング

アクセスランキング