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生活者データバンク

調査データから読み解く「タイパ」実態 世代間で異なるタイパ意識、2つの行動タイプとは?

 今、消費キーワードのひとつとして「タイパ(タイムパフォーマンス)」という言葉が注目を集めている。タイパはZ世代の特徴のひとつとも言われているが、果たして本当にそうなのだろうか? タイパの実態を探るべく、インテージは「タイムパフォーマンスに関する意識調査」を産学連携生活者研究プロジェクトで実施。本記事では、まず同社研究員である小林春佳氏が、調査結果を元に「世代によって異なるタイパ意識」について解説。後半では、青山学院大学の久保田進彦教授が「時短型のタイパ行動」と「バラエティ型のタイパ行動」という2つのタイパ行動について解説する。

タイパ意識の高まり(インテージ・小林春佳)

 タイパとはタイムパフォーマンスの略で、費やした時間に対して得られる満足の割合を示し、コストパフォーマンスを時間に置き換えた造語で「今年の新語2022」の大賞に選ばれました。

 1995~2010年頃に生まれた「Z世代」の特徴のひとつとしても挙げられます。筆者はミレニアル世代にあたりますが、Z世代に限らず、私たちの年代でも日常生活でタイパを意識するシーンは増えたと思います。

 背景として、時間対効果を高める環境が整備されつつあることが1つの要因として挙げられます。たとえば、行列のできるカフェやレストランでは、整理券がオンライン化されたことで、お店の前で待っていた時間を別の用事に使えるようになりました。自宅のネット環境の整備に加え、デジタルデバイスが普及したことでスマートフォン以外のデバイスでもインターネットに繋ぐことができ、音楽を聴きながら、ネットサーフィンを楽しみ、テレビでサブスクリプションの動画を視聴するなど、いわゆる“ながら”使いに拍車がかかっています。

 今回の記事では、タイパとは本当にZ世代の特徴と言えるのか、Z世代のタイパの特徴とは何か、有識者のご意見も踏まえて解説していきます。

タイパはZ世代だけの特徴ではない

 心理学では、心理的状態を心理尺度や設問項目で数値化して分析する方法がしばしば用いられます。そのため、国内外で心理尺度の開発も盛んに行われています。たとえば、幸福度を計測するためには、いくつかスタンダードな心理尺度があります。

 残念ながら、タイパを計測できるスタンダードな尺度がなかったため、今回は様々な機関で行われているZ世代調査を参考に、タイパを数値化するための質問を10問作成し、2023年2月に16~65歳の男女5,504人に対してアンケート調査を行いました(図表1)。

タイムパフォーマンスに関する意識調査結果
【図表1】タイムパフォーマンスに関する意識調査結果(クリックすると拡大します)
(株)インテージ 産学連携生活者研究プロジェクト調べ
ベース:全国/サンプルサイズ:n=5504

 その結果、全体の約80%が「時間を大切にしたい」と回答し、世代間に有意差はありませんでした。世代に関係なく、時間を大切にしたいタイパの根本的な意識を多くの人が持っていることがわかります。また58歳以上を除いた3つの世代では約50%が「毎日忙しく、時間に追われている感じがする」と回答し、この質問にも世代間の有意差がありませんでした。

 世代に関係なく、毎日忙しく、時間を大切にしたい価値観は、多くの方が持っている価値観であることがわかりました。つまり、毎日忙しいからこそ時間を大切にしたいというタイパ意識は、Z世代だけに特徴的な価値観とは言い切れないと思われます。

 では、なぜZ世代の特徴としてタイパが挙げられるのでしょうか。今回設定した10個の質問を細かく見ていきます。

 10の質問のうち、Z世代は「一定の時間の中で、できるだけ多くのことを楽しみたい、経験したい」「何かをするとき、『使う時間・かかる時間』と『得られる価値』のバランスを考えるようにしている」の割合が他世代と比べて有意に高いことがわかります。このことから、Z世代は物事を始める前から“時間と価値”を考えた上で実施の可否を選定していると推察されます。

 さらにZ世代の40%が「毎日の時間の使い方に満足している」と回答していて、この質問も他世代に比べて有意に高い結果でした。日々の時間の使い方とそれによって得られる価値に、一定の満足感があることがわかります。

 タイパの具体的な行動として、動画の同時視聴、倍速視聴、要約などのネタバレ閲覧の割合や、あらすじや口コミの事前確認行動も他世代よりも有意に高く、まさに一定の時間の中でできるだけ多くのことを楽しむために工夫していることが明らかになりました。

 今回対象とした10個の質問の内、なんと7個の質問でZ世代が他世代に比べ、有意に高い傾向を示しました。この結果から、時間を大切にしたい根本的なタイパ意識は世代問わず持っているものの、タイパを実現するための行動とその選択は、Z世代が他世代よりも積極的に行っており、さらに時間の使い方に自信を持っていることがわかりました。

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Z世代とミレニアル世代では「タイパ意識」が異なる

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この記事の著者

小林 春佳(コバヤシ ハルカ)

株式会社インテージ リサーチイノベーション部 生活者研究センター 主任研究員

 トビー・テクノロジー株式会社、株式会社エヌ・ティ・ティ・データ経営研究所を経て、2019年にインテージ入社。社内外の研究開発や新規事業開発に従事し、行動科学分野の知見を活かした取り組みを行っている。インテージグループ横断事業として、...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

久保田 進彦(クボタ ユキヒコ)

青山学院大学 経営学部教授、博士(商学)(早稲田大学)。日本商業学会学会賞受賞(2007年論文部門 優秀論文賞、2013年著作部門 奨励賞)、公益財団法人吉田秀雄記念事業財団助成研究吉田秀雄賞受賞(2010年度、2016年度)。最新作は『ブランド・リレーションシップ』(有斐閣)他著書多数。

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MarkeZine(マーケジン)
2024/08/19 09:30 https://markezine.jp/article/detail/46450

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