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電通グループが掲げる「CX-Connect」から紐解く、顧客とつながり続けるために大切なこと(AD)

魅力的な体験とデータ蓄積を両立!アサヒビール×電通グループが実現した、ストック型マーケティングとは

 顧客と深い関係を築きながらビジネス成長を実現するにあたり、データ活用やプロモーション戦略の設計に悩む企業は少なくない。そんな課題を抱える企業を支援しているのが、国内電通グループ約150社からなるdentsu Japanだ。2024年6月には、CX領域における注力テーマ「CX-Connect」に基づき、ストック型マーケティングを実践する横断組織「dentsu CX-Connect」を発足。本記事では、MarkeZine編集長の安成がアサヒビールと取り組んだプロジェクト事例について話を聞いた。

データ活用で顧客体験向上と事業成長に貢献

安成:dentsu JapanのCX領域の取り組みを紹介する本連載、第1回の記事では「CX-Connect」の構想について、CXプレジデントの杉浦氏にお話を聞きました。質の高い顧客体験への投資が重要だと認識していても、それが事業成長につながると確信し切れていないマーケターや経営層もいるのではないでしょうか。今回は具体的な事例として、アサヒビールと取り組んでいるプロジェクトについてお聞きしたいと思います。

佐野:今回のプロジェクトは、電通がアサヒビール社のデータパートナーとして、1stパーティデータを収集、分析し事業成長に貢献していく取り組みです。私はプロジェクトをまとめる役割を担い、全体を管理しながら質の高い顧客体験を創出することがミッションです。

平嶋:プロジェクトにおけるデータマーケティングのコンサルティング、データを使った顧客分析、体験設計などを担当しています。

左:株式会社電通 第5ビジネスプロデュース局 アカウントリード9部 シニア・アカウントリード 佐野有彦氏、右:株式会社電通 第3マーケティング局 CXコンサルティング1部長 平嶋雅氏
左:株式会社電通 第5ビジネスプロデュース局 アカウントリード9部 シニア・アカウントリード 佐野有彦氏、
右:株式会社電通 第3マーケティング局 CXコンサルティング1部長 平嶋雅氏

佐藤:電通プロモーションプラスに在籍し、プロモーション領域全般を担当しています。これまでもアサヒグループ社の販促や体験イベントなどに携わってきました。

小田:カスタマーエクスペリエンス・クリエーティブ・センター(CXCC)というクリエイティブ領域のセクションで、クリエイティブの面からエンゲージメントに結び付く顧客体験作りに取り組んでいます。

左:電通プロモーションプラス 第1BD 佐藤郷平氏、右:株式会社電通 CXクリエーティブ・センター エクスペリエンスニュートラルデザイン5部長 クリエーティブ・ディレクター 小田健児氏
左:電通プロモーションプラス 第1BD 佐藤郷平氏、
右:株式会社電通 CXクリエーティブ・センター エクスペリエンスニュートラルデザイン5部長 クリエーティブ・ディレクター 小田健児氏

安成:dentsu Japan では2024年6月に「dentsu CX-Connect」を発足しました。どのような組織なのでしょうか。

佐野:「dentsu CX-Connect」は、電通、電通デジタル、電通プロモーションプラスの3社を横断した、ストック型マーケティングの専門チームです。

 企業のマーケティング活動は、継続性や拡張性に欠けた単発の取り組みが多いことが課題です。施策やノウハウ、データをつなげて蓄積し、ストック型のマーケティングに発展させていくことがこの組織の目的です。CXの要素を10領域に整備し、それぞれに精通したメンバーを中心に、100種類以上のソリューションメニューを駆使しながら企業と生活者との継続的な関係構築を支援していきます。

ストック型マーケティングはなぜ重要なのか?

安成:ストック型マーケティングが重要である理由をお聞かせください。

平嶋:あるブランドが好きで、その情報を受け取りたい人がいるならば、単発の広告キャンペーンのみに頼るより、継続的にブランドから直接情報を届けるほうが効果的です。企業が顧客と直接つながってコミュニケーションを取るためには、関係を構築・維持し強化するストック型のマーケティングに取り組むことが不可欠となります。

佐藤:キャンペーンも、単発で終わってしまうと参加者のデータなどを次の施策に活かせません。まだフロー型で施策に取り組む企業も多いものの、データを使ってより良いキャンペーンを作っていく方向へ、少しずつ意識が変わっているように感じます。

佐野:アサヒビール社の場合は、特に顧客一人ひとりを深く理解する「N1インサイト」を大切にしています。顧客を深く理解し、商品開発やキャンペーン施策に活かすためには、データの蓄積が欠かせません。

小田:大事なのは“ファン化”だと考えています。ファンを作ること、増やすこと、そして人に薦めてもらうことが重要です。そのために、体験を設計するクリエイティブに力を入れています。

LINEを中心に据えた、アサヒビールと電通の取り組みの全貌とは

安成:アサヒビールのプロジェクトは、どのように進めたのですか。

平嶋:「データマーケティングのLINE活用」「データ基盤の整備」「運用型販促」という3つのフェーズで進んでいます。まずはデータ規模を大きくする取り組みに集中し、その後、LTVを高める施策を検討していきました。

安成:はじめの「データマーケティングのLINE活用」のフェーズについて、LINEをデータ基盤に活用したのはなぜでしょうか。

佐野:アサヒビール社は以前から、1億近いユーザー数を抱えるLINEを活用した先進的な取り組みをしていました。LINEのユーザーIDでデータを収集(※)し、CDP(Customer Data Platform)に蓄積しています。

 そのデータを活用する段階で、dentsu Japanをデータパートナーとして選定いただき、アサヒビール社のCDPとLINEのデータを活用し、マーケティング戦略を最適化するための「LINE DATA SOLUTION」を利用した、データ基盤の構築を進めていきました。

安成:「データ基盤の整備」のフェーズはどう進めましたか。

平嶋:すべてのキャンペーン施策が、LINEアカウントを介して参加できる形に設計されています。LINE公式アカウントの友だちがキャンペーンのたびに増え、その人たちがどの施策に参加したかを把握できるようになりました。また、アンケート施策を重視し、ユーザーの行動だけでなくその時の“気持ち”や、ブランドに対する態度変容も把握して次の施策につなげています。

※LINEアカウントと紐づいた行動データの取得・活用にはユーザーの許諾が必須となります。

継続して楽しめる体験を提供しながら、リアルタイムで効果検証を実現

安成:最後のフェーズ「運用型販促」については、どのような取り組みをしましたか。

佐野:あくまで一例にはなりますが、2023年10月に発売開始した、アルコール分3.5%の「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」において、AIを活用したデジタル販促ソリューション「SCAN DA CAN」を実施しました。これは、缶をスマホで撮影するだけでキャンペーンに応募できる購買証明システムです。

 リアルタイムで分析しながら施策を改善し、日々PDCAを回しながらキャンペーン成果最大化を追求します。また発売時の初期飲用者データを取得・分析することで、以降の同商品のマーケティングに有効活用していくことを強く意識していました。

平嶋:キャンペーンに対する反応や参加傾向は、時系列で分析することで明確になっていきます。キャンペーンの効果について、リアルタイムかつ時系列で検証可能なデータを取得できることが、この施策のメリットです。

佐野:CX面においては、缶をスマホのカメラでかざすと「パックマン」のARゲームで遊べる仕掛けを施しました。驚きを提供してユーザーを引き込みながら、顧客データを収集することを重視した設計になっています。

安成:ゲームの体験設計で工夫したことを教えてください。

小田:「パックマン」は、皆に知られるゲームで、ルールもわかりやすいことから採用しました。体験設計で重視したのは、驚きを意味する「WOW」をともなうこと。缶をスマホでかざすと、ARによって商品そのものが変身し、ラベル部分が開いてキャラクターが出てきます。新規のブランド訴求であるため、まずは多くの方に興味を持っていただける仕掛けを取り入れました。

 もう一つ重視した点は、熱中できる仕組み作りです。ユーザーが競い合ってゲームにのめり込めるように、ランキング機能を設定しました。最初の仕掛けに驚くだけでなく、継続して楽しめる体験設計を意識しています。インタラクティブなゲームの強みを活かし、認知から飲用し続ける段階まで、フルファネルを意識した体験作りとなっています。

「参加したい」と感じてもらうキャンペーンを作るポイント

安成:キャンペーンのプロモーションでは、どのようなことを意識しましたか。

佐藤:話題性や、「ゲームをやりたい」と感じていただけるかを重視しました。近年は「お酒であまり酔いたくない」という若年層も増えていますが、そういった層に商品を手に取っていただくことを目指しましたね。結果として、狙い通りの顧客層が参加してくれました。

 生活者目線では、キャンペーンに参加するためにポイントをためたり、シリアル番号を入力したりすることは手間がかかります。この取り組みは、缶をスキャンするだけで参加できる上、「缶ビールを買ってゲームで遊べる」という珍しい体験を提供できたことがポイントです。多くの方に参加いただいたことで、次につながるデータ資産が作れました。

安成:今回の取り組みを通して見えた、今後の課題はありますか。

佐野:運用型販促はキャンペーンを一過性で終わらせずに、継続的にデータを分析することで価値を見出し、有効活用できるわけですが、継続的なキャンペーン参加をユーザーのモチベーションにつなげることも課題です。企業にデータを預けることで、自分にとって良いことがあると思っていただける取り組みを実現していくことが大切です。

ストック型マーケティングは「顧客を深く知ること」につながる

安成:最後に、今後の展望をお教えください。

小田:データの取得と利活用を促進するために、「参加すると良いことがある」「企業に自分を知ってもらうことは意義がある」と顧客に感じていただける体験を作っていきたいです。また、近年トレンドの「推し活」にも注目しています。クリエイティブの力で、企業と顧客との距離を縮める取り組みを推進していければと思います。

佐藤:プロモーションは、売り場で顧客と接する時に重要な役割を果たす「購買の切り札」だと考えています。顧客を中心に考え、ファン化や継続購買につながる施策作りに取り組んでいきたいですね。

平嶋:CX領域は非常に幅広いため、顧客一人に対してブランドの様々な施策が同時に行われます。それらが横でつながっていないと、顧客視点では分断された体験になってしまいます。連続性を持たせ体験を統合する観点からも、ストック型のマーケティング戦略の重要性は今後も大きくなると考えます。

 また、新規獲得とLTV向上のどちらか二者択一ではなく、全体をデータでつなげて両方を一気通貫で行う取り組みを実現していきたいですね。

佐野:データをストックして可視化することは、顧客を深く知ることにつながります。その効果を理解いただくことも私たちの使命です。今回ご紹介した「アサヒスーパードライ ドライクリスタル」のパックマンキャンペーンは、日本での好評を受けてグローバル展開も進めています。これからも、先進的な取り組みへの一歩を踏み出すサポートを、様々な企業に提供できればと思います。

安成:データ活用、戦略の実行・伴走、クリエイティブ力を掛け合わせた支援がdentsu Japanならではの強みなのですね。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社電通コーポレートワン

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/09/19 10:30 https://markezine.jp/article/detail/46618