既存のブランドイメージを見直し、新たな価値を打ち出す
MarkeZine編集部 吉永(以下、MZ):今回はブランディング編の4回目となります。これまで、ブランディングの「記憶してもらい初回購入や継続購入を促す」という機能、3つの目的、また事例などをお聞きしてきました。
ブランディングの基本定義:
顧客がプロダクトに「価値」を見出した「便益と独自性」を、ブランド名・色や形・デザイン・ロゴ・音・言葉など何らかの形でそのプロダクト特有の記憶として残し、そのプロダクトの忘却を防ぎ、想起を容易にし、初回購入や継続購入へとつなげるための手段
MZ:今回は、これもMarkeZineでたびたび取材するテーマですが、「リブランディング」についてお聞きしたいです。第17回で紹介されたロート製薬の「メラノCC」は、リブランディングの事例となりますよね?
西口:はい。既存の「しみ・そばかす対策液EX」という名称や競合と区別がつきにくいデザインから、ビタミン感を強調した名称と黄色いパッケージに変更して大きく売り上げを伸ばした例ですね。
MZ:そもそも、リブランディングはどういう時に検討される施策なのでしょうか?
西口:これは上級者の質問ですね。まずリブランディングを定義すると、既存ブランドイメージの便益と独自性と、記憶化の仕組みを見直し、新たな価値を打ち出す手段を指します。
「リブランディング」はどんな時にすべき?
西口:リブランディングが検討される場合は、次のような幾つかのパターンがあります。メラノCCは(1)に当たりますね。
(1)価値を生み出し得る便益と独自性が潜在顧客に伝わっていない、記憶されず忘れられている:
プロダクトの中身は変えず便益と独自性の訴求と記憶化を再検討する
(2)既存顧客が高年齢化して離反が増えた(ブランドの成熟により、潜在顧客には便益と独自性が古く感じられる):
既存顧客の離反を招かないように、新規顧客が価値を見出す便益と独自性の訴求を検討する、またはプロダクト自体を再検討する。ただし、既存顧客が記憶化しているブランディング内容を失うと、既存顧客を多く失うことになるので、難易度は高い。
もしくは、新規顧客層向けの新プロダクトを検討する
(3)便益と独自性が弱い:
プロダクト自体を再検討し、便益と独自性を強化してから、訴求と記憶化を検討する
MZ:何が課題かによって、伝え方や訴求点の刷新で済むのか、プロダクト自体の練り直しが必要なのかが分かれるのですね。リブランディングの成否を分けるポイントなどはあるのでしょうか?
西口:前提として、パターンの区別がついていない、本当は(1)なのに(2)の策を打つといったケースは失敗の要因になります。
また、多かれ少なかれ既存顧客がいるので、その方々にどう受け止められるかもポイントの一つです。
端的に解説すると、(1)や(3)はそもそも既存顧客でも印象が弱いためビジネスリスクは低めですが、(2)は既存顧客の反発が起きたり、認識されなくなって忘れられたりと、失敗例が多いです。この場合、まさに既存顧客の中にあるイメージ=“記号”は残して刷新するか、「新しいのもいいね」と思われるものにするかがカギになります。