押し付けがましくない投稿を続ける
――具体的な投稿内容はどのように作っているのでしょうか?
福田:Xのほうは毎月3人でアイデアを出し合い、翌月に発信するレシピや食べ方を8つほど決めます。月に一度、グループ会社のスタジオキッチンを借りて、選定したレシピの調理と写真撮影をまとめて行います。所要時間は4~5時間ほどです。
その後、各レシピを投稿する担当者を振り分けて、投稿日もざっくりと決めます。担当者が撮影した写真の中から投稿に使用するものを選定しつつ、テキストも作成していく、という流れです。
田久保:紹介するレシピや食材は、「簡単さ」「親しみやすさ」「旬」をポイントに選びます。特別な技術や材料を必要とせず、誰でも気軽に挑戦できるレシピを心がけています。
福田:「大さじ◯杯、◯ml」などレシピサイトのような完璧な情報を発信することよりも、「美味しそう!」「作ってみたい」と感じていただくことを重視しています。レシピは検索すればたくさん見つかります。それより、SNSを眺めながら「今日はこの食材を使ってみよう」と思っていただくことが大切だと考えています。
――写真や文章で意識していることはありますか?
吉田:いちXユーザーの視点ですが、絵文字を使わずゴテゴテさせない何気ない投稿のほうが受け入れやすいという感覚があります。改行もあまりせず、読まれやすさを重視したキレイで整理された文章にもあえてしていません。
福田:企業アカウントの投稿がタイムラインに流れてくると、一目ですぐわかりませんか?投稿から情報を得るより先に、どこかの企業のPRだなという感覚が立ちます。自分自身もユーザーとしてXをずっと見てきたからこそ、フラットにコンテンツが届くようにしたいと思っています。
田久保:私は料理の写真を撮る係ですが、Xの写真は映えるキメた写真よりは、手作り感や身近な写真のほうが好まれるように感じます。そのため撮影はiPhoneで、照明機材も使用していません。
吉田:全体の雰囲気は、押し付けがましい投稿にならないように気をつけています。「ここに置いておきますね、よかったらどうぞ」といった、さりげない心遣いのような投稿を続けていきたいと思っています。
一定のクオリティを保ち続けることが大事
――SNS内の指標とSNS外の指標で、ウォッチしているものはありますか?
福田:インプレッションやいいね・リポスト数は見ていますが、かといって「バズればいい」わけでもないとも思っています。一定のクオリティの投稿を「積み重ねていく」こと自体が大事だと考えています。
情報があふれている中で投稿を読んでもらうには、アカウントに対する信頼感が必要だと思うんです。これは、自分がいちユーザーとして他のアカウントの投稿を読むときの取捨選択の行動を振り返ると、そうかなと。あとは、ユーザーさんの反応で「全農さんがいうなら試してみよう」といったコメントをありがたいことに見かけることがあり、そういった反応からも信頼感が重要なのだなと感じています。その分、毎度の投稿が身の引き締まる思いにはなるのですが……。
ただ、アルゴリズムの変化によって、投稿の露出に変化は感じます。静画より動画のほうが見られやすいなどの話も聞きますが、「危ない橋を渡ってまで挑戦するものでもないな」とも思うんです。だからといって、何も変えないことが答えだとも思っていません。少し悩ましいところです。
――JA全農さんの現在のキャラクターでアカウントのファンになっている人も多いと思うので、突然すごく凝ったレシピ動画が投稿されると人が変わったようでフォロワーの方も驚きそうですよね。
福田:そうなんです。取り入れるとしても少しずつ、違和感のない範囲で取り組んでいきたいと考えています。