組織にとって都合のいい広報ツールにしない
――SNSはコンスタントな投稿が必要な反面、モチベーションの維持も難しいと思います。運用で疲弊しないために心がけていることはありますか?
吉田:当初は「いくら旬だからって同じものばかりだと飽きられるだろう」と、珍しくてニッチな農産物もまんべんなく紹介するようにしていました。それがある意味「私たち(JA全農)らしさでもある」と思っていました。
しかし、やはり安定して反応がいいのは定番の食材。フォロワーが求めているのはそちらなのだと実感しました。定番食材は過去の投稿を参考にできるので、考えすぎずに効率化のメリットも享受しながらコンテンツを制作できるようになりました。
田久保:福田さんがリーダーではありますが、3人でアイデアを出し合い相談しながら進められるのも長く続く秘訣かもしれません。すべて1人で考えなければいけないと大変だと思います。
――広報業務全体における、SNS運営の比率はどのくらいですか?
吉田:3人ともメディア対応や会内報・広報誌の制作などとの兼務ですが、SNS運営は1~2割ほどです。
――限られた時間の中でも、質の高い情報発信を継続されているのは素晴らしいですね。JA全農さんの組織内では、SNSアカウントの注目度は高いのでしょうか?
田久保:フォロワー数が急増したときは話題になり声をかけられる機会もありましたが、最近は落ち着いています。
福田:各部署から「このキャンペーン情報を発信してほしい」「このイベントの告知をしてほしい」という要望を受けることは多いですね。ただ、私たちのアカウントはあくまでも「フォロワーに役立つ情報を発信して、国産の食材に目を向けてもらう」ことが目的なので、内容によっては断ることもあります。
“組織にとって都合のいい発信ツール”にならず、国産農畜産物の消費拡大に結びつくように、内容を精査してコントロールしていくことが担当者として大事なことだと思っています。
吉田:PR情報を載せるにしても、ユーザーにとってプラスになる要素をできる限り入れたり、レシピ投稿にぶら下げて投稿したりする程度にとどめるようにしています。
ふんわりとした信頼感を形成し、日本の農業の未来に貢献
――最後に、SNS運用の今後の目標や展望を教えてください。
福田:これまでと同様に、フォロワーの皆様の中に「たまに役立つよね」「いい組織なんだろうな」というふんわりとしたイメージを持ってもらえるように、現在のテイストの投稿を積み重ねていきたいと思います。
田久保:Xの投稿がきっかけで、スーパーやお店で国産農畜産物を手に取ってくれる方が1人でも増えたら嬉しいです。
吉田:結果的に、私たちの活動が日本の農業を支える生産者の皆様の励みになればと思っています。
ここに注目!JA全農流SNS活用のポイント
SNS運用には様々な工夫の余地があるがゆえに、1投稿に時間や手間をかけすぎるケースが多々あります。また、運用の目的が「バズること」にすり替わっていることも多いです。
しかし、JA全農広報部さんの投稿は、撮影器具はiPhone、照明機材なしと、レシピを発信するアカウントとしては非常にローコストです。さらに、運用を継続することを重要視されており、「1投稿を作り込むこと」ではなく「コミュニケーションを重ね続けること」で、エンゲージメントや農畜産物の消費拡大につなげていらっしゃいます。
「最小工数で最大の成果」を得ているアカウントであり、SNSと他業務を兼業している皆さんにこそ参考にしていただきたい事例です。