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事例を通して見る世界のマーケティング/ブランディングのトレンド

生活者とAIの心理的な距離感━━調査&事例で見る「AIとブランドの向き合い方」


 国内でも“兆し”あるマーケティングの新たな潮流に、業界を先進するブランドはどう向き合っているのだろうか? 世界で100ヵ国以上にオフィスを展開する広告代理店HAVASで日本のエグゼクティブ・ディレクターを担う北市卓史氏が、同社が持つ専門研究チームとそのネットワークを活かし、世界各国の先進的なブランドによる取り組み事例を紹介する本連載。今回は現在大きく注目されるAIの活用について、生活者からどう見られているかに着目。事例を通じて「AIとブランド」の付き合い方に迫る。

生活者心理から見たAIとは?

 最近のAIの発展は目覚ましいものがありますね。2022年11月にOpenAIが「ChatGPT」を発表してから2年弱が経ち、あっという間にAIを活用した商品やサービスが、生活に浸透してきました。

 さて、テクノロジー的な側面から語られることが多いAIですが、生活者は昨今のAIブームをどのように感じているのでしょうか?

 調査によると、AI技術は一過性の流行ではなく、今後の社会を形づくる中心にあると考えられています。特にプロシューマー層(トレンドを生み出し、社会の消費行動に影響を与える生活者グループ)になると、その傾向は顕著になっていることがわかります。

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 社会レベルでは、人々の手では長年解決ができなかった課題に対して、AIが変革や解決の糸口として期待されています。たとえば、治安や失業率といった社会のリスクを減らすようなものから、政治的なイデオロギーといった行動指針に至るまで、幅広い分野での活用が望まれています。

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 また個人という観点では、自身の能力を引き上げてくれるものだと考えているようです。驚くことに、サイボーグ化していくこと(脳にチップを埋めこむようなことなど)に対して抵抗も少なく、生活者の積極的なAI導入の姿勢が伺えます。

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 このようにAIが今後の社会変容の中心と考えられるなか、マーケティングやブランディングの世界でも、様々な試みがなされています。一方で、導入の事例を見ていくと、そのすべてが生活者から好意的に受け取られているわけでなく、時には反発を持って受け止められるケースが見られるのも事実です。

 この記事では、人工知能の技術的な側面ではなく、どのようなAIの活用であればブランドは生活者との関係性を深められるのか、といった情緒面に着目をしました。成功した事例を紹介しながら、分析していきたく思います。

キャドバリー ‐ Not Just A Cadbury Ad

 最初にご紹介するのは、チョコレートブランドであるキャドバリーが2021年にインドで行った事例です。

 当時のインド経済はコロナ禍から完全に回復をしておらず、特に小規模店舗は深刻な売上減少に苦しんでいました。そこでキャドバリーは、ディワリ(インドのお正月)商戦に合わせ、ボリウッドの有名な俳優である、シャー・ルク・カーンを活用したキャンペーンを実施しました。

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キャドバリーの公式YouTubeチャンネルが公開した「Supporting Local Retailers This Diwali | Not Just A Cadbury Ad Campaign Video」より

 ただし、このキャンペーンは、「キャドバリーを購入しよう!」と広告を展開するのではなく、商戦を盛り上げるために「シャー・ルク・カーンを活用した広告が作れる」AIプラットフォームを、マイクロサイト上で提供したものでした。

 このサイトでは、たとえば店舗事業者が自身の店舗名を入力すると、シャー・ルク・カーンがその店舗名を読み上げて、視聴者にお勧めをしてくれる動画広告を作成できました。これにより、店舗事業者はそれを自社のソーシャルメディアに投稿することで、商戦のプロモーションに活用ができるというキャンペーンでした。

 使われたAI技術では、訪問者が入力した店舗名に合わせて、シャー・ルク・カーンの声と口の動きを動画上に生成することが可能。これにより、無数のパターンを作ることが可能になっていました。

 本キャンペーンは大きな話題を呼び、期間中には約13万本の広告が作成され、YouTubeとFacebook上では9,400万回の再生がなされました。

 調査から見ても、社会課題の解決にAIが活用されることを生活者は期待しているとわかります。下記のデータが示唆しているように、様々な分野での課題解決にAIの活用が期待されています。

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 もちろん有名な俳優をAIで喋らせるというおもしろさも大きな話題になった要因かとは思いますが、コロナ禍からの回復という経済課題に対して、特に“小規模な小売業を応援しよう”と銘打った本キャンペーンは、好意的に受け入れられたのだと考えます。

 次にご紹介するのは、「カーディーラーがAIを活用して車好きの顧客層の心を掴んだ」キャンペーンです。

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この記事の著者

北市 卓史(キタイチ マサシ)

HAVAS JAPAN 株式会社   Executive Director

営業職をベースに、国内と海外にて広告代理店の会社/新規事業立ち上げに従事。2022年より世界149カ国にオフィスを展開する広告代理店であるHAVAS社の日本法人の現職に就任。多様性のある職場や働き方、他国オフィスとのオペレーシ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2024/11/06 21:04 https://markezine.jp/article/detail/47194

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