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『MarkeZine』(雑誌)

第107号(2024年11月号)
特集「進むAI活用、その影響とは?」

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電通グループが掲げる「CX-Connect」から紐解く、顧客とつながり続けるために大切なこと(AD)

“できるところから”進める、アートネイチャーの連鎖的な顧客体験変革 データで顧客と末永いお付き合いを

 ブランドのファンやリピーターを増やすために、データを活用した顧客体験の改善は欠かせない。しかし、顧客接点や施策が多様化する中で、どこから着手するべきか悩む企業も多いだろう。本記事では、アートネイチャーがdentsu Japanとともに推進している顧客体験変革の取り組みを紹介。「できるところから」進めていき、連鎖的に顧客体験の向上を実現。さらなる高みを目指す同取り組みについて、MarkeZine編集長の安成がインタビューした。

お客様の「髪の悩み」に寄り添う

安成:長年にわたり広告で高い知名度を獲得してきたアートネイチャーが、どのように顧客体験のアップデートを進めているのか。今回はこの大変興味深いテーマを深掘りしていきます。まずは皆さんのミッションや役割を教えてください。

小野:アートネイチャーの広告宣伝部で責任者を務めています。当社は、お客様の髪の悩みに寄り添うことを大切にしており、広告もお客様に寄り添った内容を意識しています。

須田:同じくアートネイチャーの情報システム部で、社内システムの企画・導入のプロジェクトマネージャーを担っています。入社時はカウンセラー職としてお客様の悩み相談に対応していた経験もあり、現場経験を現在の仕事に活かしています。

左:株式会社アートネイチャー 執行役員広告宣伝部長 小野陽介氏、右:株式会社アートネイチャー 情報システム部 次長 須田拓弥氏
左:株式会社アートネイチャー 執行役員広告宣伝部長 小野陽介氏、
右:株式会社アートネイチャー 情報システム部 次長 須田拓弥氏

竹下:マーケティングコンサルタントおよびCXプロデューサーとして、プロジェクトの戦略を描きそれを実行まで落とし込むための伴走や、個別プロジェクト間の整合性を調整するご支援をしています。これまでもアートネイチャー社に伴走して、ECのシステム改修やCRM、リピーター獲得などの施策を推進してきました。2023年に通販事業の改善についてご相談いただき、広告運用やシステム改善なども進めています。

当广(とうま):私はITコンサルタント並びにデータ基盤構築のプロジェクトマネージャーとして、電通デジタルから参加しています。マーケティングの効果を最大化するために必要な、データ基盤の構築支援を担当しています。

左:株式会社電通 第5マーケティング局 竹下康介氏、右:株式会社電通デジタル トランスフォーメーション事業部 当广智氏
左:株式会社電通 第5マーケティング局 竹下康介氏、
右:株式会社電通デジタル トランスフォーメーション事業部 当广智氏

関心とリピーターの獲得が大きな課題に

安成:アートネイチャーでは、顧客体験の面でどのような課題があったのでしょうか。

小野:昨今は、スカルプシャンプーやAGA治療など髪の悩みに対応するサービスが多種多様となり、競争が激しくなっています。その中で、当社にいかに興味を持ってもらうかが重要な課題となっています。

 また、新規のお客様にリピートしてもらえないと、広告の費用対効果は上がりません。どのようなお客様がリピートされるかなどを可視化し、リピートにつなげることも、大きな課題でした。

安成:それはデータ活用にも関わってくる課題ですね。データ基盤の構築についても、課題を伺えますか。

須田:これまでは、店舗とECの顧客データをうまく連携できていませんでした。ECを利用した人がどれほど店舗に来ているか、あるいは、来店した人がどの程度ECを使っているのか。このようなデータを取りづらい状況だったのです。

 また従来は、情報システム部に作業依頼を出してもらい、その都度対応する形でデータを取得してきました。そのため、データ入手やその後の分析に時間がかかっていました。現場で必要なデータをリアルタイムで確認し、迅速にマーケティングに活かすために、dentsu Japanの力を借りて基盤の構築に着手しました。

深い顧客関係を目指し、「できるところから」進める

安成:課題に対して、dentsu Japanではどのように支援しているのですか。

竹下:現在、「店舗とECの一元的な顧客管理」「顧客のステータスの分析と活用」「お客様とのより良い関係構築」などを目指して、様々なことに取り組んでいます。

 これまでは、お客様がアートネイチャー社に対して持つブランドイメージや関与度などが見えづらい状態でしたが、新たな基盤が構築されると、データマーケティングによって愛着度や関与度を把握しながら取り組めるようになります。これによって、クリック率や獲得率など目先の数字だけで成果を判断するのではなく、よりお客様と「深いお付き合い」をするための施策ができるようになり、実行すべき施策も広がります。

 現状はその手前の取り組みとして、今できる施策から着手し、推進しています。たとえば、クリック率を高めるバナー作りやコールセンターの接客品質の向上、ECのコンバージョン率を上げるための導線改善など、地道に一つひとつ進めている段階ですね。広告に限らず顧客体験の全体像を俯瞰した上で、体験向上につながることなら幅広く、業務領域の壁を作らずに支援させていただいております。

 今は「点」に見える改善施策でも、顧客基盤によりそれらを連鎖させられるようになれば、「線」としての顧客体験の改善、さらには事業全体のアップデートにつながっていきます。

安成:顧客体験というと、壮大で完璧な理想像を描き、どこからやればいいのかわからなくなる企業も多いと思います。目の前の「できるところ」から一歩ずつ進めることは、とても大事ですね。データ基盤の構築はどのように進めていますか。

当广:データの出力から分析、帳票(帳簿や伝票)を作成する業務に時間がかかることが課題でしたので、この業務を効率化し、適切なタイミングで必要なデータを確認できる環境作りとその高度化を目指しています。

 しっかり使っていただけるシステムにするため、まずはアートネイチャー社の各部署にヒアリングし、データの使い方に関する情報収集から始めました。情報収集が完了した現在は、高度化に向けたデータ構造に整理して基盤の構築に取り組んでいます。

須田:情報システム部としては、依頼に対応してデータを提供するだけでは、単純作業で終わってしまいます。そのデータが売り上げに寄与したり、効果的な施策に使われたりすることがわかれば、価値を提供している意識も向上すると思います。最終的にはそのような解像度の高い状態を目指したいですね。

 そのためにも、まずは効率化によって、依頼に対応する業務の負担を軽減しようと取り組んでいるところです。

ECのコールセンター改善で、定期購入への引き上げ率が15%→70%に向上!

安成:できる取り組みから進められているとお話がありましたが、これまでの取り組みでどのような成果がありましたか。

竹下:通販事業のコールセンターを改善し、事業上のKPIが劇的に向上しました。約1年前「コールセンターを改善したい」とご相談を受け、dentsu Japanの多彩なネットワークを活用して最適なコールセンターを手配し、トークスクリプトやお客様への向き合い方を改善しました。

 トライアルの結果、明確な成果が見られたため、定期購入への引き上げ率やお問い合わせへの回答品質のさらなる向上を目指して通販事業全体でコールセンターの切り替えを進めています。

小野:この成果は大きかったですね。以前は15%だった新規顧客の定期購入への引き上げ率が、70%に向上しました。

安成:データを活用した顧客体験の向上も進んでいるのでしょうか。

小野:現在はGoogleなどのプラットフォーマーのデータを使って、アートネイチャーに興味がある人、AGA治療に興味がある人、他社サービスに興味がある人などをIDベースで把握できています。新規顧客獲得のために活用していますが、今後はリピートにつながりそうな層にも広告を出せるようにしたいと考えています。

須田:現在取り組んでいるデータ基盤構築の第1段階は、2024年11月にリリースの予定です。MA(マーケティングオートメーション)との連携を含めた第2段階は2025年3月の見込みで、その先は状況を見ながら進めていきます。

アートネイチャーの「サロン」を強みに、顧客との関係性を深める

安成:今後、顧客体験をより一層アップデートしていくため、dentsu Japanとしてどのようにお考えですか。

竹下:アートネイチャー社の最も重要なお客様との接点の一つが、全国にある「サロン」です。その価値を感じてくれているお客様と、末長くお付き合いしていくためのサポートをしていきたいですね。

 これまでは、データ連携が適切に行えていなかったことで、「広告で集客すること」と「サロンでお客様と向き合うこと」が業務として分断された状態でした。それぞれの領域で、部分最適にならざるを得なかったのです。データ連携を実現することによって、長期的な視点で一人ひとりのお客様と向き合い、お届けするメッセージを最適化できると思います。

 たとえば、購入を迷っており背中を押して欲しい人には後押しする広告やポップアップを出し、購入のタイミングではない人ともつながり続けてホットになった時に備えておく。ECで商品をお買い上げくださったお客様がサロンに来店した際に、ひとことお礼をお伝えする。データ基盤が整備されれば、このようなお客様それぞれの状況に沿った関係構築が可能となります。お客様視点でも、きっとアートネイチャーとの心地よいお付き合いにつながります。

顧客体験の設計から施策まで、伴走して“やり切る”

安成:最後に、これからチャレンジしていきたいことを教えてください。

小野:現在、データ基盤の構築を進めていますが、その先で実現したいのは生成AIの活用です。現在は、AIがお客様の悩みに回答する「HAIRの部屋」というサービスをWeb上で提供しています。本サービスは、お客様が相談しやすい環境を作りながらその内容を蓄積し、マーケティング施策への活用につなげています。

 今後は「HAIRの部屋」で蓄積した生の声を元に、よりお客様一人ひとりに寄り添った最適な商品提案を、アートネイチャーの技術力を活かして実現できるようにしたいですね。dentsu Japanには引き続き、環境構築から顧客体験・戦略設計まで、伴走支援してもらえたらと思います。

「HAIRの部屋(https://artnature-ai-chat.jp/)」相談イメージ
「HAIRの部屋(https://artnature-ai-chat.jp/)」相談イメージ

須田:まずはデータ基盤の整備によって、データを統合して適切に分析できるようにしていきます。また、それを今後に活かすには人材育成も欠かせません。DX人材を育成、活用していく面でも、引き続きdentsu Japanの支援に期待しています。

 現状、店舗における1to1マーケティングはデータで可視化されておらず、感覚を頼りにしてリピート契約を取る傾向にあります。これからは、お客様にとってノイズにならない形で商品を提案でき、心地よい体験を提供するサロン作りが事業成長のために必要です。データを活用し、そのような取り組みも進めていきたいと思います。

当广:データ基盤には様々なデータを取り込んでいく必要がありますが、むやみにデータを取るのではなく、システムを使う人の要望に添って整備していくことが大切です。新しいシステムを導入するだけでなく定着させ、現場の皆さんに使い続けてもらう・使いこなしてもらうための伴走支援を続けていきます。

竹下:生活者の価値観が変化する中で、アートネイチャー社がどのように顧客と関係を築き、価値を提供していくか、その方法も変わっていくと思います。状況に応じた適切な顧客体験を設計し、施策実行までやり切る伴走支援を続けていきたいですね。

 アートネイチャー社の取り組みのように、データ基盤を作る人材と顧客体験を設計する人材が密に連携した支援を提供できることは、dentsu Japanの大きな強みです。これからもグループを挙げて、クライアント企業、そしてその先の生活者の方々に価値を提供していきたいです。

安成:お取り組みのこれからに期待が膨らみます。本日はありがとうございました。

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この記事の著者

加納 由希絵(カノウ ユキエ)

フリーランスのライター、校正者。

地方紙の経済記者、ビジネス系ニュースサイトの記者・編集者を経て独立。主な領域はビジネス系。特に関心があるのは地域ビジネス、まちづくりなど。著書に『奇跡は段ボールの中に ~岐阜・柳ケ瀬で生まれたゆるキャラ「やなな」の物語~』(中部経済新聞社×ZENSHIN)がある。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社電通コーポレートワン

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/12/02 10:00 https://markezine.jp/article/detail/47323