旅マエ・旅ナカ・旅アト……訪日旅行者の一連の接点を押さえるには?
MZ:データ面の課題に対して、どう対応すればよいのでしょうか。
石坂:訪日旅行者数が月間300万人を突破する中で、一人ひとりに的確なアプローチを行う必要性は日々増しています。たとえば流通や店舗を持つブランド企業などは、「訪日が確定している」「既に来ている」状態の層に向けたターゲティングのニーズが生じます。
そこで、私たちはより効果的なマーケティング支援のため、豊富な中国人データを持つEternity X社と協業を開始しました。これにより、旅マエ・旅ナカ・旅アトと、すべてのタッチポイントを押さえることが可能となったのです。
石坂:訪日中国人へのアンケート調査によれば、事前に作成した買い物リストの商品だけを購入するわけではなく、来日中に「衝動買い」をする人が9割以上にのぼりました。旅マエから旅ナカをつなげたマーケティング戦略の重要性が見て取れます。
MZ:Eternity X社からも、マイクロアド社との協業についてうかがえますか。
アゴス:私たちのような海外企業が日本市場に参入する際、まず大きいハードルは言語面です。さらに信頼性を高められる観点からも、国内でパートナー企業を探すことがカギとなります。
マイクロアド社は海外に拠点を持ち、インバウンド向けソリューションの提供実績や国内の広告代理店との連携にも強みがあり、協業する運びとなりました。
海外大手旅行サイトなどの多彩なデータで、効果的にリーチ
MZ:両社の協業によって、どのようなソリューションが実現できたのでしょうか。
石坂:訪日外国人向けソリューション群「MicroAd X Travelers」の第一弾として、訪日中国人に訴求を行う企業に向け、中国人データを活用した広告配信サービスを2024年8月にローンチしました。
本ソリューションの一番の強みは、データの質と量です。Eternity X社は海外の大手旅行サイトと連携しているため、「日本旅行を予定している」という大雑把なセグメントではなく、どのタイミングで、どういうスタイルの旅行を検討しているのかなど詳細な情報を取得でき、より具体的なアプローチが行えるのです。
また、航空券やホテルの予約データなど、GDS(グローバルディストリビューションシステム)データを保有している点も特徴です。宿泊が確定している訪日外国人に対し、旅マエから質の高いターゲティングを行い、デジタル広告による効果的な訴求が可能です。
石坂:旅ナカのフェーズでは、リアルタイムでタッチポイントを押さえられるデータも保有しています。GPSを活用した位置情報による来店者数の把握も可能となりました。
加えて旅アトも、ユーザーが日本で購入した商品のデータによる継続したアプローチが行えます。この他、中国人であれば、消費データから普段どのような商品を自国で購入・検索しているのかもわかります。このように「MicroAd X Travelers」では、豊富なデータを活用することで一気通貫でのアプローチが実現できるのです。
MZ:デジタル広告による認知拡大の他に、どのような訴求が可能ですか?
石坂:当社では訪日客向けに特化した情報メディア「Japaholic」を運営しています。台湾香港向け(中国語/繁体字圏)から開始し、中国向け(中国語/簡体字圏)となる「Japaholic China」の他、他国版もリリースしています。タイアップ記事で商品やブランドの魅力を発信することで、効果的に消費につなげる導線をパッケージで提供しています。
海外用に国内サイトを単に翻訳した形にとどまる企業が多い中、「Japaholic」は各国にローカライズして情報を掲載しています。当社は海外法人があるため、現地の生の声や世の中のトレンドを反映したコンテンツを制作し、ユーザーに適切な見せ方で発信を行っています。
アゴス:中国向けマーケティングにおいて、データはもちろんのこと、この「Japaholic」の存在は大きな意味を持っています。特に中国国内ではメディアの広告審査が厳しく、誇張表現どころか「最高の○○」という表記すら難しいのが現状です。
その一方で、第3者目線で情報を掲載したサイトで新しい商品や場所を発見する中国人が多いことも事実です。そのため訪日予定の中国人向けにプロモーションを行うには、公式サイトの発信だけでなく、情報サイトとも連携する必要があります。ですから、プロモーションで「Japaholic」を活用できることは非常に強みだと考えます。