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Cookieレス時代のネット広告を考える~利用者保護とマーケティング成果を両立するために(AD)

デジタル広告でも進む「脱デモグラ」 AIにより大幅に進化しているMeta広告ターゲティングの実態

 近年、マーケティング領域では、「脱デモグラ」に関心が寄せられるようになっている。社会全体的に多様化が進み、性別・年齢・家族構成などの区分が曖昧になってきていることにより、消費者像を従来通りの「ペルソナ」で設定するのが難しくなってきていることなどが背景にあるだろう。こうした変化を受けて、デジタル広告のターゲティングはどう変わっていくのだろうか? Meta広告の運用に精通しているADKマーケティング・ソリューションズの阿部恵佑氏、清田琴美氏、Meta日本法人 Facebook Japanの長谷川氏に話を聞いた。

デジタル広告でも進むターゲティングの「脱デモグラ」

MarkeZine:近年、広告・マーケティング業界では「脱デモグラ」というワードをよく見聞きするようになりました。これにはどのような背景があると考えますか?

阿部:性別や年齢、家族構成などの多様化により、消費者は自身の価値観やライフスタイルに合った商品・サービスをより強く求めるようになっています。こうした消費者の変化を受け、性別や年齢、一般的な興味関心軸といった従来通りのセグメンテーションでは、個々の消費者を正確に捉えることが難しくなってきました。これが「脱デモグラ」がキーワードとして出てきた背景だと考えます。

株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ プラットフォームビジネス本部 パフォーマンスデザイン局 第2パフォーマンスデザイングループ シニア・プランナー 阿部恵佑氏
【左】株式会社ADKマーケティング・ソリューションズ メディアビジネス本部 
パフォーマンスデザイン局 第2パフォーマンスデザイングループ グループ長 阿部恵佑氏
【右】同社 同部 同局 第3パフォーマンスデザイングループ プランナー 清田琴美氏

清田:これまではデモグラや一般的な興味関心軸によるセグメンテーションである程度のニーズを把握できていましたが、最近は想定していなかった層に潜在的なニーズが存在するケースも見られます。消費者ニーズの把握と分析は、従来以上に難しくなっている状況です。

 なお、私はこの「脱デモグラ」の流れは、今後ますます進むと考えています。ライフスタイルの多様化に加え、SNSなど情報収集手段の拡大に伴い、消費者ニーズが細分化され、それに応じた新たな需要・ニッチな需要が増大しているためです。

MarkeZine:デジタル広告のターゲティングにおいても、脱デモグラの流れは来ているのでしょうか?

阿部:SNS広告を中心に、おおよその媒体で進んでいる流れだと思います。肌感では、ここ1~2年でその流れが強くなっている印象です。

MarkeZine:そうした変化にともない、デジタル広告の運用ではどのような対応が求められてきますか?

清田:様々な潜在ニーズに対応するため、まずはコンテンツの幅を広げ、クリエイティブを拡充することが重要になっています。その際、多様化するライフスタイルを捉え、ユーザーそれぞれが自分ごと化しやすいようなストーリーやメッセージで発信することも必要になってくると思います。

 また、近年ではAIの活用も重要性を増しています。AIにより、これまで取得が困難だった行動パターンや個人の趣味嗜好に関するデータを活用した広告配信が実現するようになりました。従来のセグメンテーションとは違う粒度でターゲットを捉えられるようになっており、これも「脱デモグラ」の流れを後押ししていると考えます。

AIにより、深いインサイトベースでのターゲティングが可能に

MarkeZine:プラットフォーム側の立場から、Metaは「脱デモグラ」の潮流をどのように捉えていますか?

長谷川:ユーザーのニーズが細分化する中、Metaのテクノロジーやシステムもアップデートし続けています。たとえばMeta広告では、広告主が想定するターゲット層と実際のニーズとの間に生じる乖離を、機械学習によってカバーすることが可能です。これにより、従来は想定していなかった層における潜在的なニーズや興味関心を発見し、アプローチの範囲を拡大することができます。

Facebook Japan Agency Partner マネージャー 長谷川卓見氏
Meta日本法人 Facebook Japan Agency Partner マネージャー 長谷川卓見氏

 この取り組みの代表例として、AIによる自動最適化を実現した製品群「Meta Advantage」と「Meta Advantage+」シリーズがあります。その中でも「Advantage+ショッピングキャンペーン(以下、ASC)」は、購買行動に対してアルゴリズムを強く打ち出していく製品となっており、多くのクライアント様および代理店様にご活用いただいています。人間によるセグメンテーションよりももっと深い、インサイトを捉えたアプローチをAI活用で実現していく方向性が強まっているのです。

清田:ADKでは、ECなどの購買のみを目的としたケースに留まらず、より幅広い用途でASCの活用が進んでいます。現在、社内の約半数以上のプロジェクトでASCが活用されている状況です。

 たとえば、ターゲティングが困難なケースにおいてもASCは効果を発揮します。ターゲティング項目に希望する条件が存在しないようなニッチな商材の場合でも、ASCを活用することで、CVにつながるユーザーや購入意欲の高いユーザーへリーチできた例は複数あります。

従来のターゲティングではリーチできなかった層にもリーチ!

MarkeZine:デモグラのターゲティングに依らず、ASCを活用して成果が出た例を教えていただけますか。

阿部:金融商材を取り扱うクライアント様の事例を紹介したいと思います。この案件では、既存のデモグラ配信キャンペーンとASCキャンペーンを並行して実施し、効果検証を行いました。

 既存のデモグラ配信では獲得効率の良い年齢層に絞って配信していましたが、ASCでは全年齢層への配信となるため、効率低下への懸念も当初ありました。しかしながら、開始初週からASCは高いパフォーマンスを示し、1ヵ月間の実績比較では、デモグラ配信と比べてCPAを27%削減することができました。

 さらに注目すべき点として、ASCでは約10%が従来リーチできていなかった若年層からの獲得となり、新たなユーザー層の開拓という観点からも成果を出すことができました。商材の特性上、若年層はLTVが高く、積極的に狙いたい層でもあったため、そこで獲得を伸ばせたことにも大きな価値がありました。

ASC成功のカギ、「小さく」検証を積み重ねることが大切

MarkeZine:ASCは「運用の効率化」という文脈で説明されることが多かったですが、潜在的な顧客層を開拓するという目的でも有用なのですね。

清田:そうですね。ニーズが限定的なためターゲティングが難しい場合だけでなく、おおよそのユーザーがターゲットになるような顧客層が幅広い商材であっても、ASCは有用だと思います。

MarkeZine:なるほど。ASCを活用する時は、どのようなポイントを意識していますか?

清田:実際の運用においては、初期段階でのCVの質がその後の成果を大きく左右すると感じています。初期のCVに基づいて最適化が進められ、それを起点にターゲットユーザーが段階的に拡張されていくためです。

 このような特性を踏まえ、初期の成果が期待値に達しない場合は、新たなASCキャンペーンを立ち上げ、質の高いCVユーザーの獲得を目指して再試行します。キャンペーンの立て直しと並行して、クリエイティブのPDCAサイクルも継続的に実施するなど、獲得効率の維持・向上を図っています。

長谷川:Meta社内の分析でも、年に15回以上のキャンペーンテストを実施しているブランドの広告パフォーマンスは30%改善しているというデータがあります。このことから、新たにASCの活用を検討する際も、まずは小規模なA/Bテストから開始し、効果が確認できた領域から積極的な展開を図ることが、代理店様そしてクライアント様にとって最適な戦略であると考えます。

 また、ASCによる自動最適化に不安を感じる場合は、マーケティングAPI「Bid Multiplier」を掛け合わせる選択肢もあります。「Bid Multiplier」を活用し、必要に応じて人的判断による微調整を加えるとよいでしょう。

阿部:私は、ASC活用の成功の鍵は「AIの学習量の確保」と「クリエイティブの質的・量的充実」にあると考えます。まず、AI学習の観点からは、ユーザーの行動データやインタラクションを活用して学習を行うため、インプットの量と質を適切に担保することが必要です。そのためには、CVの計測やキャンペーン設計を綿密に行うことが前提となります。

 そしてパフォーマンスの向上においては、クリエイティブの役割が重要です。具体的には、多様な価値観やライフスタイルを持つユーザーを意識した幅広いバリエーションのクリエイティブを制作することが、成功への近道となります。

「Meta広告×AI」はクリエイティブ領域でも進化中

長谷川:阿部さんのお話にもありましたが、AIにより広告配信の自動最適化が進んでいく中で、クリエイティブはその重要性がますます高まっています。Meta広告においては「クリエイティブも重要なターゲティング手法の一つ」と表現できるほどです。

 また、そのクリエイティブの領域でもAIのソリューション開発は進んでおり、2024年5月には「Advantage+ クリエイティブ」をリリースしました。「Advantage+ クリエイティブ」を利用いただくと、テキストの改善や画像の明るさ調整、BGMのオン・オフなど、細かなクリエイティブの最適化をAIが自動的に行います。たとえば、提供されたテキストを活用し、価格を強調した広告クリエイティブを商品のベネフィットをメインテキストとして強調するものに変更するなど、ユーザーごとに最適な表現方法をAIが判断し、調整をかけていくことなども可能です。

イメージ
「Advantage+ クリエイティブ」のイメージ

MarkeZine:そのようなところまで自動最適化が進んでいるのですね!

長谷川:ええ。ADK様しかり、テレビ広告の取扱いが大きい総合代理店様の中には、テレビ用に制作した横型のクリエイティブを、デジタル広告に適した縦型フォーマットへ展開することが難しいといった課題を抱えられているケースも多いと思います。そのような企業様にとって、「Advantage+クリエイティブ」の活用は有力な選択肢の一つだと思います。ただ、クリエイティブの自動最適化に慎重な姿勢を示すクライアント様もいらっしゃるので、「Advantage+ クリエイティブ」は段階的な導入を進めている状況です。

 Metaは創業当初から、人と人がより身近になる世界を実現することを目指してきました。これには、一人ひとりに役立つ新たな発見や価値のある関係性を生み出すことも含まれていると私自身は捉えています。広告プラットフォームとしてもそれは一貫しており、一人ひとりのユーザーに本当に必要とされるものや情報を届けていくという考え方があります。

 企業やブランド、もしくはクリエイターが適切なユーザーに適切な情報を届けるご支援をするために、ASCや「Advantage+クリエイティブ」をはじめとするAI製品には、これからも積極的な投資がなされていくのでぜひご期待ください。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:Facebook Japan G.K.

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/01/28 11:00 https://markezine.jp/article/detail/47509