デジタル広告でも進むターゲティングの「脱デモグラ」
MarkeZine:近年、広告・マーケティング業界では「脱デモグラ」というワードをよく見聞きするようになりました。これにはどのような背景があると考えますか?
阿部:性別や年齢、家族構成などの多様化により、消費者は自身の価値観やライフスタイルに合った商品・サービスをより強く求めるようになっています。こうした消費者の変化を受け、性別や年齢、一般的な興味関心軸といった従来通りのセグメンテーションでは、個々の消費者を正確に捉えることが難しくなってきました。これが「脱デモグラ」がキーワードとして出てきた背景だと考えます。

パフォーマンスデザイン局 第2パフォーマンスデザイングループ グループ長 阿部恵佑氏
【右】同社 同部 同局 第3パフォーマンスデザイングループ プランナー 清田琴美氏
清田:これまではデモグラや一般的な興味関心軸によるセグメンテーションである程度のニーズを把握できていましたが、最近は想定していなかった層に潜在的なニーズが存在するケースも見られます。消費者ニーズの把握と分析は、従来以上に難しくなっている状況です。
なお、私はこの「脱デモグラ」の流れは、今後ますます進むと考えています。ライフスタイルの多様化に加え、SNSなど情報収集手段の拡大に伴い、消費者ニーズが細分化され、それに応じた新たな需要・ニッチな需要が増大しているためです。
MarkeZine:デジタル広告のターゲティングにおいても、脱デモグラの流れは来ているのでしょうか?
阿部:SNS広告を中心に、おおよその媒体で進んでいる流れだと思います。肌感では、ここ1~2年でその流れが強くなっている印象です。
MarkeZine:そうした変化にともない、デジタル広告の運用ではどのような対応が求められてきますか?
清田:様々な潜在ニーズに対応するため、まずはコンテンツの幅を広げ、クリエイティブを拡充することが重要になっています。その際、多様化するライフスタイルを捉え、ユーザーそれぞれが自分ごと化しやすいようなストーリーやメッセージで発信することも必要になってくると思います。
また、近年ではAIの活用も重要性を増しています。AIにより、これまで取得が困難だった行動パターンや個人の趣味嗜好に関するデータを活用した広告配信が実現するようになりました。従来のセグメンテーションとは違う粒度でターゲットを捉えられるようになっており、これも「脱デモグラ」の流れを後押ししていると考えます。