「生成AI」活用でOOHとの接触をより楽しいものに
──DOOHにおいて、クリエイティブの進化も注目すべきポイントかと思います。生成AIの活用で特徴的な事例や、今後の活用可能性について教えていただけますか。
世界的にも生成AIを活用したクリエイティブが増えています。HEINZの事例では、生活者が生成AIを用いて作成したケチャップの画像を、サイネージに映し出す広告がありました。
当社も、東京ビエンナーレというイベントの際、新宿駅東南口前にある長野屋ビルに設置したマイクに向かって話しかけると、擬人化されたビル(デジタルサイネージ)自身が建物や街の歴史を話してくれるというクリエイティブを提案しました。
生成AIの活用法としては、生活者が作ったクリエイティブを出し、双方向のコミュニケーションを図るやり方など様々な可能性があります。広告制作側が生成AIを便利に活用するだけでなく、コミュニケーションの起点が変わることで、生活者視点でおもしろいと思えるDOOHにしていくことが大事だと思います。
その中で、最近の生成AIを使った取り組みとして「AI擬態ビジョン」を紹介させていただきます。これはスクリーンの後ろにある実際の空にビジョンを擬態させて、リアルタイムで画像を生成して反映するようなクリエイティブです。ここに、風景に馴染む月や星を出すだけでなく、UFOを浮かべるのもおもしろいですよね。
我々はDOOHを通して、生活者と屋外広告の「偶然のきっかけ」を作ることを最も大事にしています。これを左脳的に表現すると、先ほどのプランニングや効果検証の取り組みにつながりますが、右脳的にもOOHと接触したときの出会いを楽しくすることは重要です。生成AIにはそのための可能性が含まれていると感じており、今後も注力していきたいと考えています。
DOOHは「屋外のデジタル広告」へ
──今後、DOOHはどのような進化を遂げていくと予測されていますか?御社のこれからの展望も併せてお聞かせいただければと思います。
冒頭でもお伝えしたとおり、テレビやデジタルとどう協業していくのかがこれからのDOOHのポイントになります。ここが、OOH市場における5%の壁を乗り越える1つの鍵となるでしょう。
一方で、ここまで技術が進化していて、あらゆるターゲティングや効果検証が可能になったチャネルを果たして「OOH」と呼び続けるのか、という疑問も持っています。これはもはやデジタル広告と呼べる領域に来ているのではないでしょうか。
そこで、DOOHを「屋外にあるデジタル広告」だと捉えると、デジタルメディアとしての可能性はより大きく広がります。我々は、OOH市場におけるアクセルであると同時に、パソコンやスマートフォンの中に閉じられてしまっているデジタル広告の可能性を打破する存在でもある。その中で、デジタル広告というのは、全数データが採れて、imp単価に対する効果の期待度も明確に決まっており、運用のハードルはどんどん高くなっていると感じています。そういったデジタル広告と土俵を同じにできるように、DOOHをさらに進化させていきたいですね。
屋外にあるデジタル広告というポジションに至ることで、今まで見えていなかった市場が広がってくると思うんです。これまでは予想できなかったマーケットを我々が開拓できるかもしれないので、積極的にチャレンジしていきたいですね。
