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イベントレポート

マーケターにもアントレプレナーシップを! 越境を恐れないから自分も会社も強くなる

 2024年10月16日から18日にかけて開催された「ad:tech tokyo 2024」では、みずほフィナンシャルグループの秋田夏実氏、茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校の生井秀一氏、横河電機の阿部剛士氏が登壇。企業変革をリードするCレベルの実践者が集結し「会社の変革とマーケティングリーダーシップ」を語った。本稿では講演の様子をレポートする。

花王のマーケターから県立高校の校長へと転身したワケ

秋田:変化が急速に進む現代において、企業も変革を迫られているはずです。このセッションでは二人のゲストをお迎えし、企業変革をリードするためのヒントや、マーケティングマインドに根差したリーダーシップの重要性について、ディスカッションして参ります。

みずほフィナンシャルグループ 執行役 グループCBO兼グループCCuO 秋田夏実氏
みずほフィナンシャルグループ 執行役 グループCBO兼グループCCuO 秋田夏実氏
みずほのCBO兼CCuOとして、グループ全体のブランドマネジメントやカルチャー改革などを担う。みずほ入社前は、米国IT企業のアドビの日本法人副社長として、⽇本のマーケティングおよび広報を統括するとともに、DEIの推進、自由闊達な組織風土の醸成に取り組む。それ以前は約20年に亘って金融業界に身を置き、マスターカードの日本地区副社長、シティバンク銀行デジタルソリューション部長などを歴任。

秋田:変化と言えば、生井さんのキャリアチェンジに触れないわけにはいきません。花王のマーケターから県立中高の校長へと転身されてから一年半が経ちました。改めて、越境の背景からお話しいただけますか?

生井:花王時代に、キャリア採用の面接官を務めていました。様々な経歴の方とお会いするうちに「学校で評価される人」と「社会で活躍する人」のギャップを感じ、課題意識を持つようになったんです。

茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長 生井秀一氏
茨城県立下妻第一高等学校・附属中学校 校長 生井秀一氏
花王に入社し、営業部門を経てヘアケアブランドのマーケティングを担当。2021年にDX戦略推進センターを設立、花王のEC戦略を統括した。2023年に茨城県内の中高一貫校の「校長」を公募するプロジェクトに応募。1,645人の応募者の中からの3人に選ばれ、花王を退職して2024年4月より民間企業出身者の校長として現職に至る。マーケティングスキルやアントレプレナーシップ精神を産業界以外に持ち込み人材育成を図る。

生井:学校で優秀な成績を修めた人が社会に出ても活躍できるのがベストですが、今の日本では「テストの点数は高かったのに、就職した会社では評価が低い」「学校の成績は悪かったけど、会社では評価されている」などの“ねじれ”が生じているような気がしたんです。

 この“ねじれ”を解消したいと感じていた折、転職サイトで「校長募集」のバナーを目にしました。花王を辞める気は元々なかったのですが、これも一つの縁だと思ってチャレンジしたところ、合格の報せを受けて今に至ります。

秋田:校長として、どのような活動をされているんですか?

生井:僕は教員免許を持っていないので、授業は行っていません。筆記試験で測ることができる認知能力の育成は教員に任せています。僕が力を入れているのは、非認知能力を鍛える探求学習の拡充です。探求学習では生徒が自ら問いや課題を見つけ、情報収集や他者との協働、議論を通して独自の答えを導き出します。探求学習の一環でビジネスパーソンを招いたり、企業を訪れたりしながら、生徒のアントレプレナーシップを育む狙いです。

秋田:マーケティングのスキルは校長職に活きていますか?

生井:花王でやってきたIBC(Integrated Brand Communication)、いわゆる統合ブランドコミュニケーションの考え方は、学校の広報活動においても非常に有効です。これまでは学校のホームページやパンフレットしか発信の場がなかったため、現在はInstagramやX、YouTubeなどで学校の公式アカウントを開設し、学内の活動を発信しています。

秋田:マーケターの訴える・伝える力やスキルセットが今の仕事にも活きているんですね。

技術に精通したマーケターが発揮する価値

秋田:マーケティングスキルの話題が出ましたが、阿部さんはMOT(Management of Technology:技術経営)の博士号をお持ちでありながら、マーケティングにも精通していらっしゃいます。二つの得意領域を持つことの利点を教えていただけますか?

阿部:最近、MOTには「Monetize of Technology」の側面があると感じています。要は、技術を市場化してお金にするための活動です。それすなわち「Marketing of Technology」と言うこともできますよね。そう考えると、マーケティングに明るいことはMOTの役に立っているんじゃないでしょうか。

横河電機 執行役常務 マーケテイング本部本部長 CMO 博士(技術経営) 阿部剛士氏
横河電機 執行役常務 マーケテイング本部本部長 CMO 博士(技術経営) 阿部剛士氏
1985年にインテル入社。インテル・アーキテクチャ・テクノロジー本部長 マーケティング本部長 テクノロジー&マニュファクチャリング本部長を経て取締役副社長に就任。2016年に横河電機へ入社。執行役常務 マーケティング本部本部長 CMOとして、マーケティング機能だけでなく研究開発、知的財産、新規事業開拓、渉外、オープンイノベーションを統括する。

阿部:私はマーケティング=経営そのものであると考えています。ただ、マーケティングに明るい経営者は日本にそれほど多くないのが現状です。横河電機の場合、マーケティング本部の下に新規事業の開発部門やR&Dセンター、特許室、工業デザインチームなどを擁しています。ユニークな組織図かもしれませんが、会社を変革するためにはこれらの機能がマーケティングという一つのボックスの中に入っていなければならないと私は考えています。

秋田:一般的な企業の典型的なマーケティングの部署の役割をはるかに超え、会社の未来に向けてあらゆる打ち手を講じられる体制になっていてすごいです。

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無形資産で会社という“人体”が理解できる

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この記事の著者

渡辺 佳奈(編集部)(ワタナベ カナ)

1991年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部を2013年に卒業後、翔泳社に新卒として入社。約5年間、Webメディアの広告営業に従事したのち退職。故郷である神戸に戻り、コーヒーショップで働く傍らライターとして活動。2021年に翔泳社へ再入社し、MarkeZine編集部に所属。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/01/22 07:30 https://markezine.jp/article/detail/48067

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