界隈消費の定義と特徴
「界隈消費」は、SHIBUYA109 lab.が毎年15歳〜24歳のZ世代の間で流行したものを発表する、SHIBUYA109 lab.トレンド大賞の2022年にランクインしたトレンドワードです。界隈消費について具体的に見ていきましょう。
界隈消費とは
界隈消費とは、特定の界隈(コミュニティ、集団)の間で支持されている商品や必要とされるサービスなどにお金を使う消費行動です。
消費者の属する界隈によって興味関心の対象や価値観が異なるため、A界隈では見向きもされない商品が、B界隈では熱烈に支持されているということも珍しくありません。このように、界隈を起点とした消費傾向が「界隈消費」です。
ただし、博報堂とSHIBUYA109 lab.による共同レポートによると、特定の界隈で広まった商品・サービスが別の界隈へと伝播していくのが界隈消費の特徴だとしており、特定の界隈のみで流行が終わるというわけではありません。
商品・サービスを他の界隈へと広めていくことが、市場で優位性を保つために必要だと言えるでしょう。
「界隈」と「推し」
「界隈」と近い言葉として使われているのが「推し(おし)」です。
「推し」とは、自分にとってイチオシの人物やグループ、キャラクターなど、熱烈に応援している対象を指します。
そして、推しのグッズを購入したりコンサートに行ったりして、お金を使う行動を「推し活」と言います。
対して「界隈」とは、共感しあう緩いコミュニティのことです。同じ「推し」を持つ人たちが集まったコミュニティは「○○界隈」と称され、仲間としてともに推しの成長を応援し「推し活」をするため、推し活も界隈消費のひとつと言えるでしょう。
また推し活は、対象となる推しのグッズやイベントにお金を使うだけでなく、周りに推しの良さを広めたいという意識も働きます。
そのため、自社のブランドや商品・サービスを推してもらって事業を成長させようと、推し活をマーケティングに活用する企業も増加傾向にあります。
推し活マーケティングについてはこちらの記事で詳しく紹介しているので、あわせて参考にしてください。

界隈消費が起きている領域の例
界隈消費は、推し活のように推しに対する消費行動のほかにも、ビジネスやライフスタイルなど幅広い軸で発生します。具体的には、以下のような領域で界隈消費が起きています。
- エンタメ(アイドル、声優、VTuber、歌い手など)
- アニメ、漫画
- ゲーム
- 音楽
- キャラクター
- グルメ
- 美容、ファッション
- 趣味(キャンプ、登山、サウナ、鉄道など)
- ビジネス、仕事(副業、生成AI、スタートアップなど)
- ライフスタイル(節約、子育て、マタニティなど)
上記のように、さまざまな界隈の中で消費活動が起こっており、さらに界隈内で流行した商品・サービスが他の界隈へ広まるという現象が発生しています。
界隈消費が広まった背景
界隈消費が起きている背景には、スマートフォンやSNSの広がりがあると考えられています。
Z世代は、生まれたときからインターネットやデジタルデバイスが身近にあり、幼い頃からデジタルを使いこなしてきた「デジタルネイティブ世代」です。
そのため自分の興味がある分野や領域に関して、スマートフォンを駆使して情報を収集するスキルを持ち合わせています。
またZ世代は日常的にSNSを利用しているため、興味・関心が同じ人とSNSで簡単につながり、情報を得ています。
SNSで情報を集めたり仲間とつながれたりするため、デジタルネイティブなZ世代を中心に界隈消費が広がっていると考えられます。
界隈消費を狙った「界隈マーケティング」とは
界隈消費の広がりとともに注目を集めているのが「界隈マーケティング」です。界隈マーケティングがどのようなマーケティング手法を指すのか、見ていきましょう。
界隈マーケティングとは
「界隈マーケティング」とは、特定の界隈をターゲットとして新たな市場を開拓してマーケティングを実施する手法です。
ブランドが主軸となるのではなく、界隈が主軸となるのが特徴です。消費者が界隈が楽しく快適に過ごせる価値を提供することに重きを置きます。

界隈マーケティングのメリット・効果
価値観が多様化している現代では、幅広い層に向けて画一的なアプローチを行う方法では限界を感じている企業も少なくありません。そこで、特定の界隈の価値観に寄り添って価値を提供することで、ブランドの価値を高められます。
界隈マーケティングでは、今までターゲットとしていた消費者層だけでなく、別の界隈でも新たな利用方法や価値が提供できないかを考えます。従来とは異なる利用価値を見いだせるため、ブランドの優位性につながるでしょう。
また界隈消費は新たな界隈へと波及していく効果もあるため、次々と認知度を高められます。
界隈消費をマーケティングに活かす方法
界隈消費をマーケティングに活用する方法を、4つのステップを解説します。
1.ターゲット集団を特定する
最初に、自社の商品・サービスやブランドと関連するターゲット集団、つまり「界隈」を特定します。
界隈を特定するには、まずは自社の既存顧客について分析しましょう。性別や年代・居住地だけでなく、家族構成や職業・年収、価値観・抱えている悩みなども分析すると、顧客の解像度が鮮明になります。そうして分析した顧客像から、顧客対象がどのような界隈に属しているか把握できます。
またSNSによる分析も有効です。たとえば、視聴数や投稿数の多い人気のハッシュタグや投稿内容を分析すると、どのような界隈が存在しているのか、界隈内でどのようなニーズがあるのか把握できます。分析結果を自社のブランドと照らし合わせることで、ターゲットとする界隈を特定できるでしょう。
2.ターゲット集団の課題やニーズを探る
界隈を特定したら、界隈が抱える課題やニーズを探ります。まずは対象となる界隈内での常識や価値観を探り、どのような課題を抱えているのか、どのような商品・サービスを求めているのか分析しましょう。
課題やニーズの分析にも、SNSが役立ちます。界隈内でよく見られている投稿内容を見ると、界隈内で流行っている商品・サービスや活用方法などが紹介されている投稿が見当たるはずです。そうした情報をもとに、界隈に属する人たちが困っていることや求めているものを探りましょう。
3.ターゲット集団が楽しめる仕組みを作る
界隈消費を狙ったマーケティングでは、対象となる界隈が楽しく快適に過ごせる価値の提供が重要です。
自社の商品・サービスを活用した課題を解消する仕組みや、ニーズを満たせる工夫を提供することで、自社ブランドの価値を向上させましょう。具体的には、以下のような例があります。
- SNSでのコミュニティ形成
- コミュニティの構築・運営
- 顧客の声を反映した商品・サービスの提供
こうした仕組み作りにより、界隈内でブランドの価値を高めます。
4.界隈外にも広めていく
他の界隈へと波及させるには、まずは界隈内のメンバーによるUGCが重要となります。
UGCとは「ユーザー生成コンテンツ」のことで、SNSの投稿やレビューサイトの口コミ投稿など、ユーザーが自主的に作成したコンテンツを指します。
自社ブランドに関するUGCが増えると界隈外のユーザーの目に留まる機会も多くなり、別界隈への波及効果が期待できるでしょう。
界隈消費は、界隈内だけでなく、別の界隈へと波及していくのが特徴です。

界隈消費の具体例
実際にどのような界隈消費が起きているのか、注目すべき具体的な事例を3つ紹介します。
Y2K
Z世代を中心に流行しているのが「Y2K界隈」です。Y2Kとは「Year2000(2000年)」を指す言葉で、2000年前後に流行したファッションやメイクが現代でリバイバルブームとなっています。
Y2K界隈では、ミニスカートやロングブーツ、ルーズソックスなどのアイテムや、「たまごっち」や「カードキャプターさくら」といったキャラクターなど、2000年前後にトレンドだったモノ・コトが再燃しています。
BeReal.
Z世代を中心にじわじわと流行を集めているフランス発の新たなSNS「BeReal.」。1日に1度届く通知を開くと2分間のタイマーが始まり、スマートフォンのインカメラとアウトカメラで撮影した画像を投稿するというSNSです。
投稿すると友だちの投稿も見られるようになり、1日経過すると過去の投稿は見られなくなるというポイントにも、希少価値を感じているユーザーが多いようです。
「BeReal.」は加工もできないため、そのときのありのままの姿を撮影しなければなりません。また通知が届く時間帯もランダムで、ワクワク感やリアリティを感じられるのが、他のSNSとは異なる点です。
風呂キャンセル
2024年に大きな話題となったのが「風呂キャンセル界隈」です。風呂キャンセル界隈とは、その名の通り、入浴やシャワーをしない(=キャンセルする)人たちの集団を指します。
風呂キャンセルの理由は「疲れて寝てしまう」「お風呂後に髪を乾かしたりスキンケアをしたりするのが面倒」などさまざま。
中には、便利なアイテムを活用して風呂キャンセルを防ごうと努力している人もいるようです。たとえば、髪を乾かすのが面倒だと感じて風呂キャンセルに陥ってしまっている人は、スタンド式ドライヤーを活用すると髪を乾かしながら他のことができます。このように、風呂キャンセル界隈でも界隈消費が起きています。

界隈をターゲットにしたマーケティングで成果を高めよう
自分と同じ価値観を持つ人たちとつながれる界隈は、Z世代をはじめとする若者世代にとって、大事な存在となっています。
界隈消費は、ビジネスやライフスタイルなど幅広い軸で発生し、ほかの界隈へと波及していきます。今後ますますニーズが増していくと考えられているため、界隈をターゲットとしたマーケティングを展開して自社のブランド価値を高めましょう。