本当は誰かに話したかった、聞きたかった
こうしたトレンドから、「デリケートなことも1人で悩まずに情報交換したい」というインサイトがあったことがうかがえます。有名人やインフルエンサーがリアルな体験談を教えてくれることが何よりも勉強になり、情報共有のスピードを加速させ、日常会話でも自然に話されるようになりました。
社会背景としては、「フェムテック」と呼ばれる女性特有の健康課題を解決してくれる商品が市場に増えたこともオープン化の一因であると考えます。月経カップや吸水ショーツなどが有名ですが、最近では妊活のタイミングを知らせてくれるおりものシートなども発売されており、悩みを隠さず商品を手に取れる環境へと変わってきています。
価値観がオープン化されたことにより必要となった存在として、ドラマや映画の制作現場における「インティマシーコーディネーター」(性的なシーンを撮影する際に、俳優が安心して演技できる環境を提供し、シーンの演出意図を尊重しながら、安全かつ倫理的に撮影が行われるようサポートするスタッフ)もあります。日本でもその存在がクローズアップされることが増え、デリケートなことこそ互いに気持ちを理解しあうべきだという価値観が広がっています。
ただ、なんでもオープンに話したいわけではないのは注意です。
互いが同じ状況ならば気を遣わずに話せますが、人によって事情や悩みのステージは様々。そのため、SNSのXにおいては、たとえば匿名の妊活アカウントでクローズドな情報交換が活発に行われており、「1人目不妊か、2人目不妊か」でアカウントを使い分ける配慮があったり、妊娠判定が陽性の報告では妊活仲間への気遣いから「センシティブ設定」(画像や文章が突然タイムラインに表示されないようにするため)をすることが暗黙の了解になっていたりします。

商品・サービスを通して、企業が応えられること
今後の未来予想としては、メディアでそうしたデリケートな話題を取り扱うことがますます増え、体験談を話す人が増えていくと推察します。また、私たちの日常会話の中で、これまでタブー視されていた単語が、男性がいる場でも頻出するのではないか、と考えています。
そうした流れを受けて、制度改革への要望や、商品ニーズをもっと女性たちが大きな声で言えるように変わる可能性があります。マーケティングにおいては、このオープンな流れをきっかけとして、今までクローズドで見えにくかった課題や、悩みが顕在化してくるため、もっと具体的な悩みに貢献できる商品開発が進んでいくでしょう。
一方、生理などのトピックは受け取り方や体感がそれぞれで違うデリケートな話題です。不快な寄り添い方にならぬよう、細心の注意を払った言葉選びが大切ですし、企業側の本気の想いが見えるかも重要な要素になってくると考えます。
有益な情報をもっとみんなで交換しやすくなり、当事者ではない人も悩みを理解できたり、応援できたりする、優しくて生きやすい社会がもっと広がる未来に期待したいです。
電通GIRLʼS GOOD LABは、「女の子」のインサイトに特化して研究をする社内横断チームです。女の子たちがいいね!と思える社会を作るべく活動しています。毎月気になるトレンドをお届けしていきますのでお楽しみに!

本記事のイラストは、電通グラレコ研究所が描いたものです。電通グラレコ研究所は、グラフィックレコーディングを 中心としたビジュアライゼーションサービスの提供と研究を目的とする電通グループ横断チームです。