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MarkeZine Day 2025 Spring

インセンティブでは顧客の本音は集まらない!ドン・キホーテの施策設計に学ぶ、顧客の声の集め方・活かし方

 アンケートやインタビューなどの「顧客の声」データの活用は取得や分析におけるハードルがある上、「顧客の意見を反映しても売れなかった」など一筋縄ではいかない。パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(以下、PPIH)が展開するドン・キホーテでは、約1,500万人の会員基盤を持つ電子マネー「majica(マジカ)」アプリ内で、顧客の意見や要望をもとに商品改善を行うサービス「マジボイス」を提供している。MarkeZine Day 2025 Springでは同取り組みを推進するPPIH マーケティング戦略本部の宮本氏が登壇し、顧客の本音を集め活用する仕組み作りや工夫について語った。

商品の評価をすべて公開する「マジボイス」

 PPIHには、「情熱価格」というプライベートブランド(PB)ならぬ「ピープルブランド」がある。同社が掲げる、顧客にとって最も“都合のいいお店”であろうとする「顧客最優先主義」のもと、顧客のためになる商品をともに作っていくブランドだ。

 同社ではこれまで顧客からの商品へ寄せられた声をもとに、商品開発担当者と議論を交わしながら対応方針を突き詰めることで、多数のヒット商品を生み出してきた。ただ、昨今は円安や原材料高で、あらゆるものの値上げが相次いでいる。顧客最優先主義を実現し続けるため、電子マネー「majica」アプリ内で顧客の声をもとに商品改善を行う「マジボイス」というサービスがスタートした。

 「いかなるときもお客様の暮らしを支え、お客様にとって最も都合のいい店になることが重要です。価格設定やお買い物に関するすべてのサービスを、お客様の声をもとに変えていこうと考えました」(宮本氏)

株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス マーケティング戦略本部 マーケティング戦略部 マジボイス推進課 宮本慎太氏
株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス
マーケティング戦略本部 マーケティング戦略部 マジボイス推進課 宮本慎太氏

 買い物時にポイントが貯まったり、お得なクーポンが使えたりするmajicaアプリ。その会員数は、2024年6月時点で約1,500万人にのぼる。宮本氏はその中の機能であるマジボイスについて、企業が主語となるプロモーションの場ではなく顧客が主語の“ドキュメンタリーの場”と説明した上で、「お客様からいただいた声をもとに改善をした成果だけでなく、真摯に対応したが難しかったという結果も含め、包み隠さず見せています」と話した。

 マジボイスの主要コンテンツは、「正直レビュー」と「おしえて掲示板」の二つだ。正直レビューでは、常時10万以上のアイテムに対して「いいよ!」「ビミョー」の二択の評価と、文字数制限のないフリーコメントによる口コミ投稿ができる。

 商品の評価がリアルタイムでわかる仕組みもある。たとえば、ある商品の購入客がビミョーを押すと、グラフ上のビミョーの割合にすぐに反映され、その時々の評価が可視化される。より納得感のある買い物のためリアルタイムでの反映にこだわっており、人気商品のみならず「イマイチ商品ランキング」も毎月更新している。

 おしえて掲示板は、行きつけの店舗への要望や商品用途などに関するふとした疑問を解決できるコミュニティ型コンテンツだ。ある顧客が「中目黒本店のタイムセール情報を教えて」と発信すると、他の顧客から「毎週月曜日にタイムセールをやっていますよ」と返答が寄せられるなどコミュニケーションが生まれ、疑問が解決できる。

 「情熱価格の商品に関する辛辣なコメントも、公序良俗に反するもの以外はすべて公開しています。マジボイスがお客様にとって都合の良い場所になってもらうことが非常に重要です」(宮本氏)

多くの声を集めるために、短絡的なインセンティブに頼らない

 顧客の声を集めるために重要なポイントとして宮本氏が挙げたのは、「短絡的なインセンティブを与えないこと」だ。商品に関する口コミをするとポイントやクーポン付与といった策も検討できるが、インセンティブだけに頼ると有益な声は集まりにくくなる。顧客はインセンティブ欲しさにとりあえず意見を送る構図ができ、その内容まで気を遣わなくなるからだ。

 宮本氏は「お客様には、自分の時間を使ってわざわざ有益な情報を与える時間は限られています。価格や味などに関する有益な声が集まらない口コミサイトは使えないと思われ、離脱していく悪循環に陥ってしまうのです」と指摘。企業にとっても有益な情報を集められないと、その後の改善につなげにくいため、単なる「声を集める箱」で終わらせない工夫が必要になる。

 そこでマジボイスでは、細部まで顧客体験を徹底的に考え抜いた。たとえば、実際に「二択評価か、5段階評価にするか」で多くの議論があったという。5段階の評価は日本人特有の中間を選びたくなる心理になりやすいため、イエス/ノーで迷わず評価できる点を重視した。

 「いいよ!」「ビミョー」というネーミングにもこだわった。検討過程で「バッド」「ダメ」などの表現案もあったが、顧客目線で考えると「そこまで悪くはないが微妙」と感じる商品は多くある。投稿に対する心理的ハードルを下げるためにも、ビミョーだからこそ言いたくなる、という表現にこだわった。コメントについても、文字数制限を設けるのは企業都合だと考え、制限を設けないフリーコメントとした。

 「小さなこだわりの積み重ねにより、累計100万件を超える多くのお客様の率直な声を集めることができています」(宮本氏)

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この記事の著者

佐々木 もも(ササキ モモ)

 早稲田大学卒業後、全国紙で約8年記者を経験。地方支局で警察や行政を取材し、経済部では観光や流通業界などを担当した。現在は企業のオウンドメディアの記事企画や広報に携わる。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/04/17 09:00 https://markezine.jp/article/detail/48591

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