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5年以内に活用が当たり前になる?博報堂DYグループに聞く、Web3×マーケティングの可能性

 暗号資産やNFTアートなどをきっかけに、多くの方がブロックチェーンやWeb3といったワードを多く耳にしたはず。Googleトレンドを見るとWeb3の人気度は2022年7月をピークに減少しつつあるが、実はWeb3が今後のマーケティングのカギを握る存在であることを、読者の皆さんはご存じだろうか。本記事では、企業のWeb3×マーケティング活用を積極的に支援するHakuhodo DY ONEと博報堂キースリーのキーパーソンに取材。Web3によって社会や生活者がどのように変化し、企業のマーケティング活動にどのような影響を与えるのか、またマーケターはどのような対応が必要になるのか、話を聞いた。

Web3が生活者の購買行動にもたらす変化とは?

――Web3とマーケティングの関連性を考える前に、最初にWeb3の概要を説明いただけますか。

重松:Web3は一言でいえば「紙と同じ信頼性をデジタル上で担保できる」技術です。一見、何がすごいのかと思う方もいるかもしれません。しかし、この技術があらゆるイノベーションを起こしています。

 たとえば、戸籍謄本や卒業証書、不動産証明書などは提出の際、紙の原本を求められますよね。なぜPDFなどのデジタルデータではダメなのかというと、いくらでもコピー可能で、結果どれがオリジナルのファイルかわからず、本物であることが証明できないためです。

 一方、一時期話題となったNFTアートは億単位の金額で取引されています。これは、NFTが紙キャンバスなど実体のある絵画と同等の価値を持つと証明できるようになっているためです。このようにWeb3の世界では、ブロックチェーンの技術を用いてデジタル上のデータを本物と証明することができ、これが社会のあらゆる場面に活かせると期待されています。

株式会社博報堂キースリー 代表取締役社長 重松 俊範氏
株式会社博報堂キースリー 代表取締役社長 重松 俊範氏

――複製が容易にできてしまうデジタルの世界でも、ブロックチェーン技術を基盤にNFTや暗号資産のような、価値のあるものを提供できるようになるのは理解できました。一方で社会や生活者にどのような影響を与えるのかがまだイメージできないところがあります。重松さんは、どのような変化が訪れると考えていますか。

重松:ブロックチェーン技術の活用によって、取引の透明性が高くなっていくのですが、これがあらゆる商品・サービスに導入されて新たな顧客体験が生まれます。

 たとえば中国のあるサービスでは、キャラクターのフィギュアが当たるオンラインくじを引いた際、最初にブロックチェーン上で所有権が付与されます。もしキャラクターが重複した場合も、ブロックチェーン上の所有権をユーザー間で売買することができるのです。最終的に、ブロックチェーン上の所有権をフィギュアに交換すると申請したユーザーのもとへ、フィギュアが送られてきます。

 この仕組みによって偽物とすり替えられる可能性がなくなりますし、配送にかかる費用や時間も削減できます。これらの仕組みは中国人が毎日使っているチャットアプリWeChatのミニプログラムとして完結しています。

青山:重松さんが挙げたオンラインくじの例でわかるように、Web3が一般社会に浸透すると購買体験がよりスムーズになっていくはずです。

 たとえば、Webサイトで買い物をする場合も、Web3の技術を通じて企業と生活者、または生活者同士が、直接決済を一瞬で済ませられるようになります。今はさまざまな決済プラットフォームを仲介してEコマースでの決済が行われていますが、Web3では、例えば国を跨いだ取引でもより安全に、より迅速に売り手と買い手が直接取引することができます。また、取引の記録が残るため、二次流通の場合でもスムーズな返品交換が実現できるようになるなど、これまでの購買のあり方も変化していくのだと予想しています。

株式会社Hakuhodo DY ONE 執行役員 プランニング本部 本部長 青山 友樹氏
株式会社Hakuhodo DY ONE 執行役員 プランニング本部 本部長 青山 友樹氏

CRMの強化に相互送客の活発化、Web3がマーケに起こす変化

――今後Web3が浸透すると、マーケティングはどう進化するのでしょうか?

重松:NFTを発行した企業は誰がそのNFTを保有しているか確認することが可能です。そのため企業がNFTを活用した場合、既存のCRMと組み合わせることで、顧客とのつながりをより強固にできます。昨今の自動車保険では安全運転をしていると割引になるものが出てきていますが、その証明にNFTを活用すれば、加入者がどれだけの期間安全運転を続けてきたのかも可視化できます。このように、NFTの保有者がどのような人かわかれば、アップセルやクロスセルも容易になっていくでしょう。

青山:この顧客とのつながりを強固にできる話をすると「既存のCRMはWeb3に置き換わっていくのか?」という質問をいただくことがあります。しかし、私は置き換わることはなく、Web3とCRMの組み合わせで土台が強固になると考えています。NFTなどの活用で顧客接点が増えて行える施策も増え、信頼性の高いNFTから得られる情報で顧客理解がより進んでいくためです。

――CRMを強化できる以外にWeb3をマーケティングに活用する方法はありますか。

重松:その他にも、企業同士の相互送客をスムーズにするという使い方もできます。たとえば、お子さんのいる母親をターゲットとする企業は、ベビーカーや粉ミルクなどの各種メーカー、赤ちゃん用品店など様々です。そこで、お母さんを応援したい企業がそれぞれNFTを配布し、相互に参照してマーケティングに活かすことができるようになれば、生活者にとっても利便性が高まり、また参加企業のマーケティング活動も効率が良くなるでしょう。 

――企業同士がデータを参照してマーケティングに活用するとのことですが、顧客の情報を提供することに対して不信感を抱く生活者もいると思いますが、その点に関しては対策可能なのでしょうか。

 お客様の「この情報は知られなくない」といった課題に応える技術として注目されているのが、ゼロ知識証明技術です。特定の情報を知っていることを、事実を明らかにすることなく他社に数学的に証明できる技術のことで、個人の秘密を守りながら、企業が適切な形でデータを活用できるようになります。

 先ほどの例の場合、その人の名前や年齢、住所を知らずともお子さんのいる母親であることをNFTで証明することが可能になります。

松尾:Hakuhodo DY ONE博報堂キースリー、NTT Digitalでは、共同でマーケティングにNFTを活用した事例があります。たとえばスポーツチーム様とのプロジェクトでは、試合に来場してくださったお客様にNFTを配布し、NFTを多くためたお客様に特別な体験を提供する仕組みを整えています。

株式会社Hakuhodo DY ONE 第二クリエイティブ本部 第一クリエイティブ局 Associate Criative Director 松尾 良馬氏
株式会社Hakuhodo DY ONE 第二クリエイティブ本部 第一クリエイティブ局 部長 松尾 良馬氏

 NFTを通じてお客様とのつながりを作り、スポンサーを巻き込んだプロモーションなどに活用して、スポーツチームとステークホルダーとの相互送客を実現しようと考えています。これがWeb3を用いた新しいロイヤリティ施策だと考えています。

――スポーツチームの事例を紹介いただきましたが、Web3を活用したマーケティング・プロモーション施策と相性の良いビジネスはなんだと思いますか。

重松:スポーツ・エンターテインメントビジネスとの相性は良いですね。コアなファンによるコミュニティが形成されており、コアなファンを中心にNFTの取得・活用が進みやすいためです。スポーツ・エンターテインメント以外であっても、ファンコミュニティが形成されている商品やサービス、ブランドであれば、活用できる可能性が高いです。

NTT Digitalとサンリオなど33社が取り組むWeb3キャンペーン最新事例

――その他にNFTなどのWeb3技術を駆使したマーケティングの事例はありますか。

重松:直近一番大きなプロジェクトとして動いたものだと、NTT Digital様と共同で行った「web3 Jam」です。web3 Jamとはブロックチェーンを活用した円滑な企業連携の可能性を探求する共創プロジェクトで、ブロックチェーンを共有顧客基盤として活用し、NFTなどのユーザーのトークン保有状況を共有します。本プロジェクトには、エイチ・アイ・エス様、カルビー様、JR九州様など33社が賛同しています(2025年3月時点)。

web3 Jamのイメージ

web3 Jamのイメージ(出典:web3 Jam特設サイト

 これにより、企業間の相互送客ができる上に、複数企業で顧客の行動や嗜好の把握ができるようになります。直近では「はっぴー&ウェルネス」がテーマの「はぴウェル応援団」キャンペーンを実施し、サンリオのキャラクターユニット「はぴだんぶい」とコラボしたNFTが獲得でき、参加企業33社の賞品が抽選で当たる施策を展開しました。

カルビーでは、購買につなげるNFT活用を実施

――昨今ユーザーのプライバシー保護の観点から、Cookieをはじめとしたデータ利用の規制などが進んでいますが、ブロックチェーンはデータ規制問題の解決策にもなりますね。

重松:まさしく、今後ブロックチェーン技術が発展すると、企業が保有する1st Partyデータと、グループ企業間で共有する2nd Partyデータの間にある1.5st Partyデータの存在が出てくると思います。これまでだと連携が難しかった、他社同士のデータ連携が容易になり、より精緻なデータドリブンマーケティングも可能になると思います。

――先ほど、CRM領域での活用も強まっていくという話がありましたが、実際に購買につながっている事例もあるのでしょうか。

重松:たとえば、カルビー様との取り組みでは、NFTチップスキャンペーンと題し、対象商品を購入したおまけにNFTを付与しました。これまでプロ野球チップスなどポテトチップスにおまけを付けてきたカルビー様にとって初の試みです。

 獲得したNFTは購買と紐づいて成長する仕組みとなっており、ユーザーはゲーム感覚で楽しむことができ、カルビー様はNFTを保有するユーザーのファン度や購入頻度を測ることができます。また、抽選で限定のポテトチップスも当たるキャンペーンを行うなど、「ポテトNFT」を持つ人だけの体験を提供してきました。

 このように、NFTを起点に購買を生み出しながら、ファンコミュニティを形成することも可能です。

――ここまでさまざまな事例を紹介いただきましたが、どの事例も比較的広いターゲットにリーチできる施策のように感じました。Web3を絡めた施策を展開する場合、相性の良い生活者やターゲットはいるのでしょうか。

青山:Web3が比較的新しい技術であることから、若年層向け施策での活用を考える企業様も多いですが、若年層以外であってもリーチできる可能性があります。デジタル技術に慣れている20代と30代からだとは思いますが、Web3は社会のインフラ技術としてすべての生活者に広がっていくはずです。

Web3が浸透する前に、マーケターがしておくべきことは?

――Web3が浸透する社会に備え、マーケターが今しておくべきアクションはありますか。

松尾:Web3か否かはあくまでも手段なので、そこまで意識しなくてもいいと思います。本質は、Web3はコンテンツや体験を支える技術であり、大事なのはどのようなコンテンツや体験を提供したいかを考えることです。NFTが話題になり始めたときは、NFTを絡めたキャンペーン自体に新規性がありましたが、今はそうもいきません。Web3という手段が目的にならないようにはしておきたいです。

青山:私自身がしているのは「我々のお客様、ひいてはその先の生活者に向けて、どんな体験を作れるか?」という問いに対する引き出しを増やすために、事例を追うことです。今日ご紹介したCRMなどの事例を見て、自社のマーケティングに転用できないかと考えてみるのがまずは早いかと思います。

――Hakuhodo DY ONEと博報堂キースリーでは、今お話しいただいた「これからWeb3に関する情報のキャッチアップやマーケティングの活用を考えたい」といった企業に対し、支援を強化していくのでしょうか。

青山:Hakuhodo DY ONEは博報堂キースリー協力のもと、「Web3を活用した新規事業・マーケティング施策開発プログラム」の提供を開始し、企業様の支援を強化していきます。

 同サービスは、短期集中型の学習コンテンツの提供を通じてWeb3に関する知識のキャッチアップを実現しつつ、ワークショップを通じて自社の課題や目的に対しWeb3でどのような事業やプロモーションが行えるか具体化します。

「Web3を活用した新規事業・マーケティング施策開発プログラム」の概要
「Web3を活用した新規事業・マーケティング施策開発プログラム」の概要

 技術的な話ではなく、新規事業やマーケティング施策の企画に必要な知識をお伝えするため、マーケターの方でも安心して受講いただけます。また、ワークショップには松尾をはじめとしたクリエイティブのメンバーも加わるため、具体的なアウトプットを描くところまで支援させていただきます。

重松:Web3が及ぼす範囲は非常に広く、活用の幅もまた広い技術です。参加企業の方の「課題はいっぱいあって、でもどうすればいいかわからない」というお声に対して、Web3の知見を持った広告会社の人間として「Web3の技術ではこういったことができるのでは?」と意見をお伝えしていきたいと考えています。

 最終的に私たちがお手伝いできるようなアイデアが生まれればいいですし、そうでなくとも一緒に課題に考えたことに価値があると思っています。自ら調べて理解するのは難しい領域でもあるので、ぜひこういったサービスの利用も検討いただければと思います。

Web3が浸透した社会を見据え、半歩先のマーケティングを考える

――最後に今後の展望について教えてください。

重松:私は今後5年以内にWeb3が爆発的に広がっていくと考えています。今インターネットを使っていない企業がないように、いずれWeb3を使うのは当たり前という状況が訪れるはずです。

 今後もクライアント企業や参画企業様と行ったweb3 Jamのように、Web3に関連した新しいチャレンジを行い、ノウハウを蓄積し、クライアント様の力になれるようなご提案をしていきたいと考えています。

青山:Web3は既存のデジタルマーケティングの仕組みの中では相対的に新しい技術であり、生活者側からの需要もまだ限定的です。しかし、より安全に、より迅速に、そして何より、新しく楽しいWeb体験をしたいという生活者の欲求は確実にあるわけですし、その文脈において企業がWeb3でチャレンジできることは山ほどあるはずです。

 私は何かの成功事例をきっかけに、Web3を活用したデジタルマーケティングが爆発的に広がっていくと考えています。我々としては、そのような先端的な事例づくりと普及の両面でクライアント企業を支援していきたいです。

松尾:私としては新しい技術に対して、広告会社として半歩先の活用を提案したいと考えています。

 Web3は高度な技術で、活用の可能性が広いため、様々な活用法が思い浮かびます。そのため「Web3によって明日、世の中がどう豊かになるのか」という難しい問いが存在します。

 そうした状況でも、世の中が変わることがイメージできるわかりやすいサービスをクライアント様と実現できるよう、新たな企画に落とし込んでいきたいです。

「Web3を活用した新規事業・マーケティング施策開発プログラム」に関するお問い合わせはこちらから

 本サービスに関するご不明点やご相談はHakuhodo DY ONE のお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

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この記事の著者

タカハシ コウキ(タカハシ コウキ)

1997年生まれ。2020年に駒沢大学経済学部を卒業。在学中よりインターンなどで記事制作を経験。卒業後、フリーライターとして、インタビューやレポート記事を執筆している。またカメラマンとしても活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社Hakuhodo DY ONE

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/03/31 17:33 https://markezine.jp/article/detail/48632