「マーケ」と「広報」の分断構造をなくす仕組み作り
早川:マーケティングと広報の連携・役割分担では、組織の構造や人員配置だけではなく、予算作成やKPI設定をしっかりとしておかないと、分断構造が生まれてしまうと思います。そのあたりについて、お二方からアドバイスをいただけますでしょうか。
宮地:売上だけではなく、たとえばファン指数をどれだけ増やすかなどのKPI設定が大切ではないでしょうか。
大橋:私も同じで、目的や戦略、KPIをどちらかに寄せるのではなく、中長期的な視点で連携することが大切だと思います。機能連携だけだと、予算などがネックになりがちですから、できれば組織を超えて目標を共有し、予算や人員などの経営資源を統合運用できるような仕組みを作るとフレキシビリティが上がると思います。
機能ごとに名前と役割を分ける時代は終わる
早川:最後に、マーケターと広報担当者のそれぞれが今後求められるスキルなどをお聞かせください。
宮地:それぞれの専門性はもちろん大事ですが、加えて戦略思考力や共感力を軸にした進化が求められると思っています。
マーケティングと広報は両輪だと思います。さらに、オウンドメディアとSNS等のシェアードメディアが加わることで、まさに四輪駆動になり、推進力が増します。そして、この四輪駆動のエンジンとなるのが「ブランドパーパス」で、企業がどこに向かっているのかということが大事になります。

さらに、そのエンジンを動かす原動力はというと、顧客からの共感や対話、社員の参加意識、社会貢献といったことです。だからこそ、マーケターや広報担当者は、生活者の価値観や悩み・願いにつながり、かつ考え方に賛同して商品を語りたくなるような企業ブランドをデザインする能力が必要だと思っています。
大橋:BtoBの広報とマーケティングでも、企業ブランドをしっかり構築して認知を広げることが大事です。
また、「マーケティング」や「広報」といった、機能ごとに名前をつけるのは、今後は陳腐になってくると思っています。マーケティングは、たとえば「ブランドクリエイター」や「ブランドデベロッパー」など、ブランド価値を高めていく役割に再定義していくことが必要です。
広報においては、メディア中心の発想ではなく、生活者や社会とコンタクトをして関係性を強化する役割と位置付けたほうが、変な対立もなくなり、より包括的な活動ができると思います。