アルゴリズムの中から「知らない世界」に飛び出したい
これらのトレンドから、未知の世界に触れるわくわく感に夢中となった女の子たちの「知らない世界を知りたい」というインサイトが見えてきます。
「知らない世界を知れるコンテンツ」は、前回の記事でご紹介した「平和100%のコンテンツ」と一見矛盾するようですが、いずれにも心を幸せで満たしたいという共通項があります。未知の世界に触れ、自分の世界に心が揺さぶられる体験は、時に共感や浄化を伴って幸せな気持ちに繋がるのかもしれません。だからこそ、「平和100%」の対極にあるように感じる「知らない世界」を無意識に求めてしまうのではないでしょうか。

また、女の子たちは、SNSで自分の興味があることだけに触れている状況に飽きてしまっているのではとも考えています。今自分の好きなものに囲まれるより、未知の世界に触れることの面白さに気付き始めているのかもしれません。あるいは、新鮮で面白いものを求めるのとともに、みんなと違うことを知ることで、優越感を得たいという欲求も垣間見えます。
つまり、先ほどご紹介した未知の世界を描いたコンテンツは、フィルターバブルにある人々の需要に応えたものとなっていたからこそ、爆発的な人気を博したのだと思います。
コンテンツで疑似的に自分の世界を広げても……やっぱりまだまだ満足できない?
今後の未来予想としては、コンテンツを通して知らない世界を知っていく風潮が、一定のところまで加速すると推察します。コンテンツで見たもの・聞いたことを疑似体験的に捉えるようになるイメージです。
たとえば、行ったことがない場所が舞台の海外ドラマを見て、その場所を疑似体験するだけでなく、むしろ行ったことがあるかのように認識するようになるのでは、と考えています。実体験では経験していない世界を、コンテンツを通して「知っている世界」に変換していく。そうして、興味があるものの、実際に体験するにはハードルが高いことを、画面を通して“疑似的に”経験にすることで、知識上の経験値を高めていくのです。
このもう少し先には、また新たな展開が待っています。疑似体験的なコンテンツ視聴が習慣になると、あるとき、それは自分ではない誰かのフィルターを通したものでしかないことに気づくはずです。そして、コンテンツを見ることを経験にカウントしていたが故に、それに関する実体験をしなくなっていたことにも気づくでしょう。つまり、疑似体験で満足した結果、現実の自分の世界がかえって狭まっていたことを知るのです。
そうした気づきを経て、ゆくゆくは、自分で実際に行動して世界を広げるようになるというのが、現時点での未来予測です。ただ受動的にSNS上の情報やデジタル上での学びを享受するのではなく、新鮮な体験を求め、能動的に動くことを自然に望むようになると推察されます。
実は、いち早くそのフェーズに至っている女の子たちの姿も見られます。まるで物語や作品の世界に入り込んだかのような、深い没入感を得られる体験ができる「イマーシブ体験施設」では、これまでは知らなかった五感体験をすることができ、普段とは違う自分自身の心の動きに気付かされます。ほかにも、最近人気の昭和な雰囲気が漂う「ディープな居酒屋」では、知らない人と知らない場所で交流することで、デジタルにはない人の温かみを感じ取っています。
このように、実際に体感することでしか味わえない世界に踏み込み、自分自身のリアルな体験で世界を広げる女の子が増えていくと、実体験を伴った交流が増えていくでしょう。そうすると、女の子の数だけ化学反応が起き、より多様な未来の可能性が生まれます。様々なものに興味を持ち実際の体験に飛び込むことを促す機会を生み出すことで、女の子たちの世界を広げる一助を担いたいものです。
電通GIRLʼS GOOD LABは、「女の子」のインサイトに特化して研究をする社内横断チームです。女の子たちがいいね!と思える社会を作るべく活動しています。毎月気になるトレンドをお届けしていきますのでお楽しみに!

本記事のイラストは、電通グラレコ研究所が描いたものです。電通グラレコ研究所は、グラフィックレコーディングを 中心としたビジュアライゼーションサービスの提供と研究を目的とする電通グループ横断チームです。