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X DIVE2025レポート(AD)

クラシルが明かす「1週間で成果を出す」AI時代の高速グロース開発と運用コストの効率化

 レシピ動画プラットフォームなどで知られるクラシル社は、KARTEを活用した効果検証やアジャイルなプロジェクト開発手法によって高速なPDCAサイクルを回し、サービスを継続的にグロースさせてきた。また、レシート買取りアプリ「レシチャレ」では、AIを情報解析などに活用しつつ運用コストの効率化を実現している。どのようにして、それらの取り組みを実践しているのだろうか。2025年7月に開催されたプレイド主催のカンファレンス「X DIVE(クロスダイブ)」に同社CPOの坪田朋氏とプロダクトマネージャーの大村汐里氏が登壇。プレイドの相馬直明氏によるモデレートのもと、その秘訣を語った。

クラシルの成長に欠かせないKARTEの活用

 クラシル社はレシピ動画プラットフォーム「クラシル」で知られ、2025年10月には社名をdely株式会社からクラシル株式会社へ変更した。同社は他にも様々なサービスやメディアを展開しており、今回はレシート買取りアプリ「レシチャレ」での取り組みを中心に紹介していく。

 このアプリは、歩いた距離やチラシの閲覧などでポイントが貯まり、各種ポイントサービスや電子マネーなどに交換できる。その中でもクラシルが一番売りにしているのが、ユーザーがレシート画像をアップロードすることでポイント付与される機能だ。

 もともとは「クラシル」から派生した姉妹サービスであることから「クラシルリワード」というアプリ名称であったが、このレシートを活用した機能=「レシチャレ」のニーズが高まったことから、2025年11月よりアプリ名称そのものを「レシチャレ」へと変更した。

レシチャレのイメージ
レシチャレのイメージ

「レシチャレは買い物体験をまるごとお得に変えるアプリです。レシチャレではメーカーや小売店とともにキャンペーンを実施し、対象商品を購入したレシート画像をユーザーがアップロードすることでポイントを付与します。これにより、提携するメーカーや小売店の売上を伸ばして店頭の棚を獲得・維持することをミッションとしています」(坪田氏)

クラシル株式会社 プロダクトマネジメント室 執行役員 CPO 坪田 朋氏
クラシル株式会社 プロダクトマネジメント室 執行役員 CPO 坪田 朋氏

 CPOとして全社のプロダクト責任者を務める坪田氏、開発部のプロダクトマネージャーとして、各機能開発の意思決定や施策の立案などを手掛ける大村氏は、クラシルの成長を語る上で、プレイドが提供するCXプラットフォーム「KARTE」が欠かせないと語る。では、どのように活用してきたのだろうか。

ピンポイントの検証を高速で繰り返し、インサイトを集積

 プレイドの相馬氏は、クラシルの成長の背景に「高速グロース開発」があると言及。具体的な取り組みを尋ねる。

株式会社プレイド Partner Team 相馬 直明氏
株式会社プレイド Partner Team 相馬 直明氏

 クラシルでは、以前よりKARTEを様々な場面で活用してきた。たとえば、新機能の導入や新たなキャンペーンを実施する際には、KARTEのようなノーコードツール上で効果検証を行い、結果がよければ本格的に開発をするという手順を踏んできた。

「時間をかけてアイデアを膨らませると、1リリース当たりのサイクルが長くなってしまいます。しかし、事業成長においては検証サイクルを高速で回すことが重要です。我々はスクラム開発の手法を用いて、短期間に区切って反復的な開発を繰り返すスプリントを1週間ごとに実施しています」(坪田氏)

 1リリースにつき1検証だけに絞り、変数を一度に2つ以上動かすような検証はしない。ピンポイントでの検証を短期で実行することを繰り返していく。たとえば、今日思いついた施策を明日実施・検証し、明後日意思決定するといったスピード感で取り組んでいる。

スクラム開発で仮説検証を高速で実施
スクラム開発で仮説検証を高速で実施

「1週間という期間でPDCAを回し、インサイトを得る必要があるため、おのずと1週間で成果が出る設計をするようになりました。すると、検証がシャープになり、1ヵ月後にはかなり大きなインサイトが積み重なっていきます。最近では開発部だけでなく、営業部でも1週間ごとにPDCAを回して何かしらインサイトを出すやり方になりました」(大村氏)

高速なPDCAを実現する組織とKARTE活用

 高速でPDCAを回すためには、組織体制も重要となる。レシチャレではグロース施策と非連続施策を分け、目標や評価の方法も差別化している。

高速なPDCAを実現するクラシルの組織
高速なPDCAを実現するクラシルの組織

「たとえばグロース施策の成長率は着実に年間120%を目指し、非連続施策は当たれば150%いくかもしれないというように目標値を分けて設定します。また、グロース施策は、開発に2〜3週間かかるものだとしても、1週間ごとに何らかのKPIを設定してインサイトを出すようにします。1週間で結果が出ないものはやりません。

 一方、非連続施策も1週間でスプリントを行いますが、失敗する可能性がある前提で都度、指標を決めてチャレンジします。まず1ヵ月チャレンジしてみて、失敗したらそれを糧に次の目標を決めるというように進めます。このように、グロース施策と非連続施策は分けて考えることが重要です」(坪田氏)

 こうしたスプリントにおける効果検証に、KARTEを活用している。主に利用している機能は、顧客データや行動データなどをデータベースで統合して顧客の解像度を上げ、各接点でコミュニケーションするためのセグメントを抽出できる「KARTE Datahub」と、メールやポップアップなどユーザーに効果的な方法やタイミングでコミュニケーションを取る「接客サービス」だ。

「KARTE Datahubでセグメントを抽出して、表示の出し分けを行ったり、タブの並び順を変えたA/Bテストを実施したりしています。また、接客サービスを活用して画面の一部を覆って表示されるハーフモーダルを出すなどしています。高速でPDCAを回すには、こうしたKARTEの機能がないと成り立ちません」(坪田氏)

Slackで情報を蓄積し・共有する

 KARTEを運用するには、データをセットアップするエンジニアと、その上でディレクションをしていくCRM Opsの存在も必要だ。

「クラシルのCRM Opsは、PDCAを回すことへの執着が強い点も特徴です。1週間どころか1日ごと、ときには1時間単位でPDCAを回しています」(大村氏)

クラシル株式会社 開発BU プロダクトマネージャー ⼤村 汐⾥氏
クラシル株式会社 開発BU プロダクトマネージャー ⼤村 汐⾥氏

 高速にPDCAを回して得たインサイトは、きちんと蓄積・活用してこそ成長の糧になる。クラシルのCRM OpsはSlackのオープンチャンネルに情報を集約することで、社内での情報共有・活用をしている。接客サービスを使ったクリエイティブのPDCA、クリエイティブごとのファネル分析、デイリー・アワリーでの施策管理など様々な知見が集約され、社内のメンバーであれば誰でも検索・閲覧できるようになっている。

 これらの資料を経営陣も定期的に閲覧するため、現場のスタッフと意思決定の基準が合う。さらに開発現場も、経営視点でのフィードバックを得られるという。

AIを効果的に活用する秘訣

 続いて、相馬氏はクラシルのプロダクト開発におけるAIの活用について尋ねた。今やAIは多くの企業で活用されているが、便利な反面やたらに使うとコストが嵩むというデメリットもある。どのような使い方をすると事業成果に貢献しやすいのだろうか。

「AIを用いた抽象度の高い取り組みは、経験上うまくいかないことが多いです。AIは無尽蔵にコストをかけられるので、具体的な活用方法を考え、きちんとコストを考慮することが大切です。また、AIツールは年間契約を勧められることが多いですが、日進月歩で進化している分野なので、すぐにもっといいツールが出る可能性があります。こうした過渡期には、あまり長期で使用するサービスを決め込まないほうがよいでしょう」(坪田氏)

持続的なAI活用の判断基準
持続的なAI活用の判断基準

 レシチャレでは、コストのバランスを取りながらAIの機能を活用している。提携しているスーパーやドラッグストアなどでキャンペーン対象の商品を購入してレシート画像をアップロードすることでポイントが付与されるレシチャレでは、ターゲティングにAIを使用した。

「たとえばA社の飲料をずっと買っている人は競合B社にとってもターゲットユーザーとなるため、B社のキャンペーン時にポイント還元率を上げて購入してもらいやすくする。あるいは、過去30日間にその商品を購入していないユーザーだけを特定してアプローチすることで新規顧客獲得を狙うなど、AIによる過去の購買行動に基づいた分析をターゲティングに活用しています」(坪田氏)

AIレシート分析を用いたターゲティング
AIレシート分析を用いたターゲティング

 また、レシートからいつどこで何を買ったのかといった情報を収集し構造化するのにもAIを活用している。

「レシートから店舗名や住所、購入日や商品名、合計金額、支払い方法などの情報をOCRで分類・構造化しました。レシートはチェーンごとにデザインが異なり、商品名もチェーンごとに省略の仕方が違うので、きちんと分類して同一商品を一致させる名寄せに苦労しました」(坪田氏)

AIの精度を裏付け、コストを抑える

 レシチャレでAIによるレシート分析を実現するにあたり、運用コストがかかるという高い壁があった。月間1,000万枚レシートが投稿されるとすると、ユーザーに付与されるポイント分のコストに加えて、OCRやLLM、その他データ費用等によりコストは1,000万円を超える。これだけの運用コストがかかるとなると、社内での承認を得るのも難しい。では、どのようにしてレシチャレを実用化していったのだろうか。

「どのようにしてコストを抑えて実現するか? という点にはかなり工夫をこらしました。まずはゴールに向けて段階的なステップを設定し、最小サイズで検証を実証することを繰り返していきました。その最初のステップが、ニーズの検証でした」(坪田氏)

 当初は、アップロードされたレシートの内容はすべて人間がスプレッドシードに入力するという方法で収集・構造化し、KARTEを活用してニーズ検証を実施した。ユーザーのニーズを把握できたら、人力で収集したデータとOCRで読み込んだデータを比較して、分析精度の確認を行っていった。こうしてAIの分析精度を確認しながら、徐々に人力から自動化へと置き換えていく。

 次のステップとして運用コストへの対応だ。こちらは、プロダクトのフェーズに応じて、レシート解析に必要なAPI選定を見直すことで、レシート1枚あたりの分析代は当初試算したものの5分の1と大幅に削減できた。こうしてレシチャレでのOCR活用を実現していった。

 このように運用コストとニーズを確認しながら開発を続け、現在のキャンペーンでは、POSが200%、中には400%も向上する成果が出たものもあるという。レシチャレの活用によって、メーカーは小売店で棚落ちしそうな商品の維持や、棚獲得の交渉力向上が期待できるわけだ。

 これまでBtoCのサービスを中心に手掛けてきたクラシル。高速PDCAによるプロダクト開発によって、レシチャレではBtoBtoCで価値を作っていく。

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この記事の著者

平田 順子(ヒラタ ジュンコ)

フリーランスのライター・編集者。大学生時代より雑誌連載をスタートし、音楽誌やカルチャー誌などで執筆。2000年に書籍『ナゴムの話』(太田出版刊)を上梓。音楽誌『FLOOR net』編集部勤務ののちWeb制作を学び、2005年よりWebデザイン・マーケティング誌『Web Designing』の編集を行う。2008年よ...

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2025/12/09 10:00 https://markezine.jp/article/detail/49576