「見た目映え」から「センス映え」へ
ここまでの内容を踏まえ見えてくるのは、“映え”の基準の変化です。
以前の“映え”は、SNSで投稿した際にどのように見えるかを重視する「見た目映え」でした。しかし、映えがただ見た目を真似するものではなくなった現在、何を選択し、どのように自身のスタイルらしく取り込むのかという“センス”が試されるようになっています。つまり “映え”は、女の子自身のセンスを可視化する「センス映え」へと変化しているのです。
その背景には、「憧れの人のマネではなく、自分の選択として映えをシェアしたい」というインサイトがあります。
彼女たちはSNSを通して、タレントやインフルエンサーといった憧れの存在から“映え”の情報を絶え間なく受け取っています。これまでの「見た目映え」では、その情報を見たままに真似するだけで十分でした。しかし、“映え”が日常化した今、それだと個性が埋もれてしまいます。だからこそ“映え”に自分なりのアレンジを加えることで、自身の選択としてシェアしようとしているのだと考えます。
このように、“映え”は自分らしさに昇華しながら、女の子たちの日常に反映され続けています。言い換えれば、女の子たちは“映え”を通じて、日常を少しずつ憧れに近づけているとも言えるでしょう。
さらに先に起こる「マインド映え」の定着
未来予測としては、現状の「センス映え」がさらに進化し、「マインド映え」へ変化していくと推察します。つまり、他者にどう見せるかではなく、自分自身がどう感じたかが基準になると考えています。
「見た目映え」「センス映え」は“映え”のための行動ありきですが、「マインド映え」の未来では、日々を過ごす中で自分の心が動いたものが“映え”となるはずです。たとえば、朝ごはんに作ったベーコンエッグトースト、家の近くの公園で咲き始めたコスモス、地元の定食屋の昔ながらの暖簾といったように、今まで見過ごされてきた生活の1シーンが“映え”の対象となっていくでしょう。

それに伴い、“映え”は言葉のもつ派手さや装飾性が抜け落ち、女の子たちの自然で無意識なマインドとして定着していくと考えます。
こうした変化は、デジタルネイティブである女の子たちが、SNSで共有される周囲の情報に自分自身が振り回されない術を身につけ始めている証でもあります。“映え”というポジティブなモチベーションは大事にしつつも、無理に他者に合わせるのではなく、自分にとってちょうどいい形でSNSにへと向き合いたいという感性の表れだと考えます。
そしてこの感性は、ありのままの自分らしさを尊重する時代における価値観の土台となり、今後のSNS文化を支える潮流となっていくでしょう。
電通GIRLʼS GOOD LABは、「女の子」のインサイトに特化して研究をする社内横断チームです。女の子たちがいいね!と思える社会を作るべく活動しています。毎月気になるトレンドをお届けしていきますのでお楽しみに!

本記事のイラストは、電通グラレコ研究所が描いたものです。電通グラレコ研究所は、グラフィックレコーディングを 中心としたビジュアライゼーションサービスの提供と研究を目的とする電通グループ横断チームです。