変わっていく「検索」の形
田中:Google検索1つとっても、AI活用の範囲はかなり広がっていますよね。
岩村:そうですね。今、大きく時代が変わっているのは、生成AIの影響が大きいです。たとえば、生成AIを活用することで、検索結果をまとめて提供することができます。Googleの検索結果に出てくる「AIによる概要」がそれです。ユーザーの体験をよりよくする。ユーザーをより深く理解して、ユーザーが望んでいるものを提供する。さらにはユーザー自身がニーズに気づいていない発見をも提供したいという考えがGoogleのベースにあります。
マルチモダリティに関して言えば、これまでインターネットの操作は、基本的にはテキスト=言語によるものでした。しかし、言語だけだとわからないことが、世の中には多々あります。たとえば、花を見ていて名前がわからない時、テキストで検索をかけるのは難しいですよね。そこで、スマホをかざすとそれが何かがわかる「Googleレンズ」が出てきました。
さらに、それら複数のモードの情報をマルチモーダルに結びつけることによって、物事がよりわかるようになります。たとえば、出張先のホテルの部屋でコーヒーマシンの使い方がわからない時、スマホをかざして「これの使い方を教えて」と言うと、その使い方を教えてくれます。つまり、「それはコーヒーマシンである(画像)」「そのコーヒーマシンの使い方はこうである(テキスト)」と結びつけて教えてくれるのがマルチモーダルなAIなのです。
マーケターにとって本当におもしろい時代に
田中:私の経験ですが、自分のあるアイデアを投げかけると、「それはいいアイデアですね」と言ってそのアイデアをバーッと展開してくれたんですよ。その時AIがクリエイティブに使えることを実感しました。
岩村:田中先生のような研究者の使い方で、一番便利なものとしてNotebookLMがあります。 NotebookLMはパーソナルにも使える、特定の情報源だけに基づいた自分だけのAIみたいなものです。たとえば、手持ちの資料を全部入れて、授業のシラバスや講義資料のドラフトを作ることもできますよ。
田中:なるほど。それで岩村さんは一橋大学ビジネスクールの授業でAIを使ってクリエイティビティを学ぶ授業をなさったんですね。
岩村:はい、「AI時代のマーケティングマネジメント~Driving Innovation & Growth」という講義ですね。その中の1つにAIを活用したワークショップがあります。たとえば、数ヵ月かかるプロセスも数時間から2日間ほどでできたりします。
マーケティングリサーチやインサイト発見におけるAI活用は、この先かなり増えていくだろうと思います。アイディエーション(アイデア発想)やプロダクション、結果のトラッキングも含めて、AIを活用することでマーケティングプロセスが圧倒的に速くなり、しかもより高いクオリティでアウトプットできる時代が来ているのです。マーケターにとって本当におもしろい時代だと思います。
田中:とてもエキサイティングな時代になっていると、岩村さんは捉えているんですね。私もギリギリその時代に入り込めるでしょうか(笑)。さて、後編では、Googleの圧倒的な成長の要因について切り込んでみたいと思います。