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MarkeZine Day(マーケジンデイ)は、マーケティング専門メディア「MarkeZine」が主催するイベントです。 「マーケティングの今を網羅する」をコンセプトに、拡張・複雑化している広告・マーケティング領域の最新情報を効率的にキャッチできる場所として企画・運営しています。

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「ROIばかり」見ていないか?戦略的なメディアプランは「広告の出発点=リーチ」の最適化から始まる

 メディアが多様化する昨今、広告主が直面する課題のひとつが「効果検証の複雑化」だ。計測できるデータは増えていく一方、溺れてしまうほどの「データの海」に苦戦するマーケターもいるだろう。この状況に対し、広告効果の出発点となる「リーチ」の最適化に立ち返るべきだと提案するのはビデオリサーチ。本記事では、ビデオリサーチの鈴木康啓氏と、元P&G/現カンテサンスの日髙由香子氏が対談。日本のマーケティング課題やROI向上に向けたリーチ最適化の意義、課題解決のための具体的なソリューションについて語る。

「予算の最適配分」=「戦略的なメディアプランニング」とは言えない

MarkeZine:まずはお二人の自己紹介からお願いします。

日髙:私は1998年にP&Gに入社後、23年間ほどマーケティング一筋でキャリアを歩んできました。そのうち半分ほどがブランディング領域、もう半分がメディア領域で戦略設計やバイイングを経験しています。その後、2022年にフリーランスのマーケティングコンサルタントとして独立し、現在は企業のマーケティングや販促活動を支援させていただいています。なお、ビデオリサーチさんとはP&G時代から縁が深く、独立後もよくお仕事でご一緒していますね。

カンテサンス 代表 日髙由香子氏
カンテサンス 代表 日髙由香子氏

鈴木:私は2008年に新卒でビデオリサーチに入社後、10年間P&Gさんの営業担当を務めていました。日髙さんとも長くご一緒させてもらいましたね。その後、営業企画や営業推進などを経て、現在はビデオリサーチで主にマーケティング領域のコンサルティングを担当しています。

株式会社ビデオリサーチ ソリューションユニット エグゼクティブプロデューサー 兼 ビジネス戦略室 鈴木康啓氏
株式会社ビデオリサーチ ソリューションユニット エグゼクティブプロデューサー 兼 ビジネス戦略室 鈴木康啓氏

MarkeZine:ではさっそく本題に入り、日本の多様化するメディア環境と、そこにあるマーケティング課題から伺えればと思います。

日髙:メディアが細分化されてきたがゆえに、数多くあるデータをどう見て・判断すればいいのかという問題には、いつも頭を悩まされます。

 単純に「テレビ」と「デジタル」の2つに分類した場合でも、テレビなら視聴率、デジタルならインプレッションなど計測指標が異なっており、広告効果をフラットに判断することは困難です。結果を横並びで見られないために、メディアプランニングや予算の割り振りにも苦戦しているというのが、多くの事業者に共通する課題と考えます。

鈴木:日髙さんは、「プランニングの部分を代理店に任せようにも、日本にはプロのメディアプランナーが少ない」というお話もよくされていますよね。

日髙:そうですね。「戦略としてのプランニング」ではなく、広告予算を適切に配分する「最適化」に留まってしまっているのではないかと感じます。

鈴木:多くの企業で「マーケティング戦略」を「メディアプラン」に落とし込む部分が不足しているのかもしれません。たとえば、マーケティングの上流では細かなペルソナが設計されているのに、メディアプランニングのフェーズになった途端、「F1層」のように粗い解像度になってしまうケースは往々にしてあると感じます。

日髙:メディアプランの手前に、売上・利益目標など事業としてのゴールがあるはずです。マーケティングの上流から寄り添い、事業にとって本当に適切なメディア戦略を考えてくれる代理店やプランナーの必要性を感じているところです。

メディアと生活者の未来を考える2日間「VR FORUM 2025」開催

株式会社ビデオリサーチ主催のビジネスフォーラム「VR FORUM 2025」が、10月8日(水)・9日(木)に東京ミッドタウン・ホールおよびオンラインで開催予定。今年のテーマは「Next STANDARDをともに。」、業界の第一線で活躍する53名の登壇者による全19セッションを通じて、変化するメディアと生活者の未来を探ります。

メディアプランニングの事例をご紹介するセッション『KDDIが考えるメディアプランニングの理想と現在地~ROIを高める「量×質」のメディア戦略~』もあります。「VR FORUM 2025」特設サイトより、ぜひご参加お申し込みください(参加無料)。

リーチは「広告の出発点」、ROI指標だけでは見落としてしまうスケールの観点

MarkeZine:うかがった課題を踏まえ、本対談では、大前提としてまず向き合うべき「リーチ最適化」にフォーカスを当てていきます。ROI向上のための「リーチ」の重要性について、お二人のご意見をお聞かせください。

鈴木:広告活動の最終的な目的は、売上や利益の拡大にあります。その上で、リーチは「広告効果の出発点」です。そもそも広告がターゲットに届かなければ、その後の態度変容や購買行動は起こり得ません。なるべく統一の基準で各媒体のリーチを把握し、コントロールしていくことが、最終的な広告効果を高めることに大きく寄与するのではないでしょうか。

日髙:私も広告は「リーチありき」だと考えます。ROI最大化を目指してコンバージョン数やCVRだけを追い求めていると、事業をスケールさせていくことはできません。成果を追求するのは当然ですが、「ROIだけ」を指標にしてしまうのは危険でしょう。

 また、重要なのは単なるリーチの大きさではなく、「誰に届いたのか」という質と「どれだけ無駄なく届いたのか」という効率です。重複接触が多ければ効率は落ちますし、狙っていない層ばかりに届いてもROIには結びつきません。

鈴木:質や効率といった「1リーチの価値」の解明を進めていくことは、業界全体の命題です。単にターゲットに見てもらえたかどうかだけでなく、どれくらいの長さの、どんな内容のCMが、いつ流れて、結果ターゲットは態度変容を起こしたのかなど、まだまだ追及していく余地はあります。これらの検証は企業のマーケティングに役立つのはもちろん、本来のメディアの価値を証明することにもつながっていくと考えます。

業界トップランナーとしてビデオリサーチに求められる「第三者性」

MarkeZine:効果検証が複雑化する中、ビデオリサーチの提供価値や役割はどういったところにあると考えますか?

日髙:ビデオリサーチ社は、テレビの視聴率データをはじめ、業界の「基準」を作ってきた企業です。だからこそ、今後もマーケティングにおける計測や効果検証をリードしていく責任があるのではないでしょうか。メディアデータ、CMデータのみならず、最近ではデジタル領域でのデータも豊富に持たれていますので、「統合指標を作れる会社はビデオリサーチだろう」と期待しています。

鈴木:ありがとうございます、頑張ってまいります。我々としてもテレビとデジタル、あらゆるメディアを横断した「共通の物差し」を提供することが求められていると考えています。

 また、重要な点として、当社はメディアではなく第三者の調査機関です。企業のガバナンスが問われる時代、ビデオリサーチが創業当初から貫いてきた透明性や公正性は、ニーズが高まっているのではないでしょうか。特にP&Gさんをはじめとするグローバル企業では、媒体データと第三者データを突き合わせて厳格にチェックされている印象です。

日髙:そうですね。ガバナンスは会社を縛るルールではなく、組織を強くしていくために必要なもの。客観性の高いエビデンスがあることで、広告主が各媒体とより真摯に向き合っていくことができます。

 外資系企業では、広告投資に対する結果を示すエビデンスを提示する際、媒体ではなく第三者機関によるデータを求められることもあります。マーケティング全体を活性化させていくために、第三者データの活用は重要だと認識しています。

ビデオリサーチ×世界的企業で実現した2つの計測ソリューション

MarkeZine:では、ビデオリサーチが提供しているメディア横断のソリューションについて教えてください。

鈴木:テレビとデジタルを横断する計測サービスとして、「CMR(Cross Media Reach Report)」と「TAR(Total Ad Ratings)」を紹介します。

 まず、CMRはテレビCMとYouTube広告のリーチを統合的に計測できるサービスです。テレビは当社の視聴率調査をベースとしたデータを活用、YouTubeはGoogleのデータクリーンルーム経由のデータを活用し、弊社独自の推計ロジックでトータルリーチを算出しています。10回以上リーチまでの算出や、テレビ×デジタルのクロスフリークエンシーも可視化しているので、解像度高くR&F(Reach&Frequency)の評価、管理に活用いただけます。

Cross Media Reach Reportで検証できる範囲と指標
Cross Media Reach Reportで検証できる範囲と指標

 一方、TARはテレビCMとデジタル広告のリーチを可視化するためのツールです。世界的なリサーチ企業であるニールセンデジタル社と提携することで、動画・静止画を含む幅広い範囲のデジタル広告データと、当社のテレビCMデータを突合させています。

Total Ad Ratingsで検証できる範囲
Total Ad Ratingsで検証できる範囲

 「テレビ×YouTube広告」ならCMR、「テレビ×デジタル広告」ならTARといった形でニーズに応じて使い分けが可能です。

日髙:どちらも「人」ベースでリーチを可視化できるのがポイントです。ビジネスは、突き詰めると、「何人がいくらで買ってくれたか」の掛け算。テレビのような「率」ではなく、最も根本的な指標である「人数」に落とし込んで把握できるのは、非常に汎用性が高いと言えます。CMRやTARのようなサービスがあることで、メディア間の役割分担や予算配分を戦略的に考えられるようになりましたね。

鈴木:現在は別々のサービスですが、将来的にはテレビとデジタルを一つのサービスの中で表現することも目指していきたいです。ほかにもOOHや音声広告、新聞広告など、あらゆるメディアの効果を同じ指標で可視化できるようにすることが、ビデオリサーチの目指す最終的な形です。

データに囲まれている今こそ、絶対に外せないKPIを見極めるべき

MarkeZine:最後に、マーケターが日々の業務で数字やデータをどう活用していくべきか、アドバイスをお願いします。

鈴木:データが大量にありすぎる時代、今一度見直すべきはキャンペーンのKPI設計でしょう。もし現状のKPIで一面的な部分しか見られていないのであれば、非常にもったいないです。メディア環境が変化する今こそKPIを改めて考えるべきですし、当社も企業様と伴走して考えていきたいと思っています。

日髙:指標がいくつもあるからこそ、絶対に外せないKPIを見極めるべきです。ビジネスにとってキーとなるドライバーは何なのか? あれこれ追いかけるより、2~3個のKPIに絞り込んで集中的に改善していくことが成果につながると考えます。

 テクノロジーが発展した昨今、企業やマーケターは「可視化できるデータがあればあるほどよい」と考えがちです。しかし、結局どのデータをどう活用すればいいかわからないまま、「データの海に溺れている」組織も多いのではないでしょうか。データが溢れる時代だからこそ、原点に立ち返って「事業で何をやりたいのか」を見直し、メディアプランを戦略的に策定することが成功のカギとなるはずです。

 その際には、今日お話ししてきたとおり、スケールの観点を入れることが重要です。CMRやTARのようなソリューションを活用した「リーチ」最適化のアプローチも有効でしょう。お困りのことがあれば、ぜひビデオリサーチさんに相談されるとよいと思います。

ビデオリサーチは「リーチの最適化」「適切なKPI設計」を伴走支援します

本記事内でご紹介した、「リーチの最適化」にお役立ていただける「CMR」「TAR」のサービス詳細はこちらの案内資料からぜひご覧ください。また、戦略的なメディアプラン策定を目指す包括的な伴走支援も行っておりますので、お気軽にこちらのフォームよりお問い合わせください。

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この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社ビデオリサーチ

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2025/09/29 11:00 https://markezine.jp/article/detail/49805