狙いは“熱狂”する男性ファン。コミックシーモアがDAZNに見出した勝算
MarkeZine編集部(以下、MZ):まず、DAZNへの出稿を決めた理由からお伺いします。なぜ電子コミックサービスの「コミックシーモア」が、広告の配信先にスポーツプラットフォームである「DAZN」を選ばれたのでしょうか?
坂元:事業を拡大していく上で、男性ユーザーをさらに増やしていきたいという狙いがありました。コミックシーモアは月間4,000万人ものユーザーにご利用いただいていますが、比率としては女性ユーザーが多く、これまでアプローチしきれていなかった男性層にどう振り向いてもらうか、というのが次の課題だったのです。
そこで主要OTTサービス(Over-the-Top media service)への出稿を検討し、他の媒体に比べDAZNは私たちがリーチしたいM1・M2層(20~34歳、35~49歳の男性)の会員率が非常に高いメディアであるため、候補として選ばせていただきました。
電子書籍事業部 マーケティンググループ チーフプロデューサー 坂元 富士太氏
坂元:もう1つの重要なポイントは、DAZNユーザーが持つ「熱量の高さ」です。DAZNには「好きなチームのためなら、会費を払ってでも全試合見たい」と思う、非常に熱心なファンが集まっています。そんなDAZNユーザーなら、一度コミックシーモアを気に入ってくれれば、マンガにも同じ熱量でハマってくれるに違いない。そう期待したのです。
「ながら見」ではなく「目的視聴」。広告効果の土台となるDAZNユーザーの熱量
MZ:DAZNのユーザーは、他の配信プラットフォームのユーザー層と比較してどのような特徴があるのでしょうか。
安宅:DAZNは、日本最大級のスポーツ専門OTTサービスです。そのためユーザーの方はほとんどが熱心なスポーツファンであり、「ながら見」ではなく、明確な目的視聴で見ていただいている方が多いという特徴があります。言い換えれば、自分の趣味嗜好や好きなコンテンツに対してお金をかけて行動するアクティブなユーザーといえます。
視聴態度にも大きな特徴があります。まず、視聴が「習慣化」している点です。スポーツの特性上、90%以上がライブ視聴で、「週末はJリーグ」「仕事終わりはプロ野球」のように、視聴が生活のルーティンに組み込まれている方が多いのです。
そうして皆さんが可処分時間を費やしてライブ中継に集中するため、視聴完了率や画面への注視時間も非常に長くなります。私たちは、こうしたファンの方々が持つ熱狂的な一体感が「Fandom(ファンダム) 」の特徴だと捉えています。
MZ:そうしたDAZNのFandomは、広告配信においてどのような影響を与えるのでしょうか?
安宅:ライブ中継という没入感が最も高い状態で、ホームランやゴールの瞬間といった感情が高まるモーメントが数多く生まれるコンテンツに継続的に広告を配信し、リーチすることで、広告クリエイティブはユーザーの記憶に定着されやすくなります。これにより、ブランドはユーザーとの心理的な距離を近づけることができ、結果として態度変容も引き起こしやすくなります。熱狂している時に見た広告はやはり強く印象に残りますし、「海外サッカーにはこの広告だよね」など、強い親近感を抱くユーザーの方も多数います。SNSへの波及効果も非常に高いという調査結果もあります。
DAZNとシーモア、双方の「需要期」を掛け合わせる。熱量を最大化させた配信戦略
MZ:コミックシーモアでは、DAZNというプラットフォームをどのように活用されたのでしょうか。 配信タイミングや設計、クリエイティブなどを含めて、DAZNの活用法を教えてください。
坂元:まず配信タイミングですが、2つの軸で考えました。1つは、DAZNが最も盛り上がるタイミングです。私たちが最初に広告を出稿したのは今年2月なのですが、ちょうどJリーグの開幕時期に当たり、非常に盛り上がります。このように、熱量の高いDAZNユーザーの方が集まるタイミングに合わせてCMを配信しました。
もう1つは、コミックシーモアが最も盛り上がる需要期です。電子コミックサービスはゴールデンウィークや年末年始、お盆などの長期休暇中に読者が増える傾向にあるため、ゴールデンウィークのタイミングでもリーチを最大化したいと考え、DAZNで広告配信を行いました。

坂元:配信設計については、初めての出稿で新しい試みだったので「わかりやすさ」を重視し、シンプルに設計しました。クリエイティブもテレビCMの素材を活用しています。理由は2つあります。
第1に、まずは「コミックシーモアを知ってもらい、気軽に楽しんでもらいたい」という意図があったことです。DAZNユーザーの方の多くは、おそらくこれまでコミックシーモアのテレビCMに接触する機会が少なかったと考えられます。私たちはテレビCMで「無料で読める作品がたくさんある」「気軽に読める」と訴求しており、まずは「無料」と「気軽さ」を切り口に、コミックシーモアに興味を持っていただくことを重視しました。
第2に、テレビCM素材でパフォーマンスを見たいという思いがあったことです。一度、現状の素材を活用して成果を見ることで、次の戦略につなげたいと考えました。そのため「男性向け」「スポーツマンガ」という訴求はあえてしませんでした。また次の展開では素材を変えた展開なども検討したいと思っています。
マーケティングファネル全体で高リフト、継続出稿で成果は上昇
MZ:2月の出稿が好評だったため、ゴールデンウィークも継続されたそうですね。その具体的な成果と、継続を決めた戦略的な狙いについて、詳しくお聞かせください。
坂元:主要KPIとして置いていた「利用意向のリフト」は、2月の初回出稿から非常に高い結果が出ました。興味関心や好意度なども含め、ファネル全体でリフトが見られ、DAZN出稿がブランド全体に効果的だと分かりました。ただ、一度の結果では判断できないため、ゴールデンウィークに再度出稿して効果を検証しました。結果は前回同様に良好で、確かな手応えを感じましたね。
また、5月の出稿では、訴求の切り口を「無料で読める“作品数の多さ”」から「無料で読める“ジャンルの多さ”」に変えたCMも試したところ、こちらも好結果でした。まずはこうした「ちょっと見てみよう」と思える切り口で始めたのが良かったのだと思います。

MZ:出稿を重ねることで効果に変化はありましたか?
坂元:1回目も2回目もフルファネルで各項目が高いポイントでリフトしましたが、1回目よりも2回目のほうがリフト率が高いという成果がありました。これはおそらく、以前接触した人が再び接触したことなども含め、継続的な蓄積効果があったのではないかと考えています。
MZ:安宅さんに伺いますが、DAZNへの継続出稿にはどのような価値があるのか教えてください。
安宅:私たちの調査から、スポーツファンはブランドロイヤルティが非常に高いというデータが出ています。好きなチームやスポーツとの距離が近いブランドを選ぶ傾向があるため、継続してご出稿いただくことで、スポーツファンとの距離は着実に縮まります。

安宅:実際に広告接触者/非接触者を比較したところ、購入意向が平均して5~10ポイント、認知に至っては平均10~20ポイントも上がる傾向が見られました。継続的な接触によってブランドとファンとの関係を築くことが、結果として利用意向の向上につながると考えています。
またDAZNでは、視聴体験を阻害しないよう、プレイ中ではなくハーフタイムやイニング間など、感情が下がりすぎないモーメントでCM配信を行うため、ユーザーにも好意的に捉えていただいていると考えています。コンテンツの視聴体験を損なうことなく、高いモーメントが維持されている時に何度も接触することで、ブランドへの親近感も生まれやすくなります。
「没入体験」という共通点。スポーツとマンガ、熱狂するファンを繋いだもの
MZ:スポーツと関連性が低いサービスと思われるコミックシーモアが、フルファネルで高い成果を出せた要因をDAZN側からどう分析されますか?
安宅:成功要因は大きく2つあると考えています。1つ目は、坂元さんがおっしゃった「タイミング」の掛け合わせです。DAZNが最も盛り上がる時期と、コミックシーモアの需要期を的確に合わせていただいた点が非常に大きかった。
2つ目は、ユーザーの「共通点」です。スポーツとマンガは一見すると別物ですが、どちらも「コンテンツの世界観に深く没入して楽しむ」という点で、ユーザーのコンテンツへの接し方が非常によく似ています。私自身、DAZNで野球観戦をしながら、守備のイニングにマンガを読むこともあります。スポーツ観戦の合間に、同じ「エンタメ」としてアプリを行き来する行動は、ごく自然なんです。
この2つの要因、つまり最高の「タイミング」で、親和性の高い「ユーザー」にアプローチできたこと。これこそが、スポーツの熱狂が広告への好意に繋がるという、良い結果を生んだのだと分析しています。

スポーツの熱狂を広告主の事業につなげ、あらゆる企業のマーケティングを支援
MZ:坂元さんに、今回の結果を受けての今後のマーケティング活動やDAZNへの期待についてお聞かせいただけますか。
坂元:今後は、クリエイティブの進化に力を入れたいと考えています。今回はテレビCM素材でしたが、DAZNはスポーツに特化したメディアなので、「サッカーマンガを読むなら」「野球マンガを読むなら」といった、作品に落とし込んだ訴求をすることも考えています。そうすれば、視聴体験としても「邪魔な広告」ではなく、ナチュラルにコンテンツとして入ってくる見せ方ができると思います。
もちろん新クリエイティブの制作に当たっては、コストやスケジュールとの兼ね合いはありますが、これが実現できればパフォーマンスはさらに高まるでしょう。また、短期間で当たりすぎないよう、最適な配信の仕方をDAZNさんと相談しながら展開していきたいと考えています。
MZ:今回は非スポーツ関連企業の事例でしたが、安宅さんからも今回の事例をベースに、スポーツ関連・非スポーツ関連企業の皆様へのメッセージをお願いします。
安宅:DAZNは、単に特定の競技に興味のあるファンだけの場ではありません。そこには、熱量の高い時間を過ごしており、マンガアプリのようなデジタルエンタメ商品に高い興味を持つ人々が集まっています。
一見ジャンルが異なっていたり、スポーツと関わりのないサービスだったとしても、ターゲット層がM1・M2層などで重なったり、感情の熱が高まる瞬間にリーチできる1インプレッションの価値を求めたり、「挑戦」「情熱」「仲間」といったキーワードが共通したりする場合は、ブランドの好意度や利用意向を大きく伸ばすチャンスがあります。
「自社はスポーツと関係ないから」と線を引くのではなく、スポーツの熱をどう自社のサービスの価値にブリッジさせるかを、ぜひ我々と一緒に考えていただきたいと思っています。この新しい世界につながるスタートを、ご一緒できることを楽しみにしています。
熱狂的なスポーツファンと深くコネクトしたい広告主様へ
DAZNには日々、様々なライブスポーツを楽しむ熱量が高いスポーツファンがユーザーとして多く存在します。視聴者同士が熱狂を共有し、リアルタイムで交流できるFanZoneなどを通じて、コンテンツ視聴を深い共感と参加の体験へシフトさせています。本記事でDAZNのユーザーやサービス特長、広告商品などにご興味を持たれた方は、DAZN広告公式サイトへお問い合わせください。

