新メディアとしての試練
そんな状況もあり、企業としてもどれだけの効果が見込めるか分からない新しいメディアということで、ましてや、従来のインターネット広告とは異なる、音声(映像)広告であるという点で、ラジオやTVのコマーシャルに経験が無い企業にとっては、「興味はあるが…」と、二の足を踏んでいるところが多いようです。
アメリカでは、早くもポッドキャスト広告の広告代理店が現れてきたことなどからも、国内でも「マスメディアとしての、Podcastによるビジネス展開」が期待されましたが、よくよく調べてみるとアメリカと日本国内での既存のラジオ局の数が桁違いであることや、ポッドキャストを配信する土壌の違い(個人放送局の配信環境や、音楽著作権の扱い方、音声番組リスナーの意識)などから簡単に追従できないのではないか…つまり単純に同じ方法でPodcastを普及させることが、国内では簡単ではないことが徐々に分かってきました。
そのためか、徐々に、BtoBよりもBtoC、法人よりも個人といった方向を重視していく流れになっており、例えばNIFTYの2006春のサイトリニューアルや、各社ユーザコンテンツに重点をおいたサイト作りになってきていることが感じ取れます。
それでは今後、市場を活性化させていくために消費者によるメディア展開が1つポイントになってくるわけですが、そこを詳しく見ていきます。
市場活性化のためのメディア展開
当たり前ですが、メディアが普及するには、まずはコンテンツ(映像・音声番組)が必要であり、そのためには制作が必要です。
さらにそれを広めていく手段(プロモーション、宣伝、告知)が必要になりますが、それらを個人が制作する場合、「何をどうやって作ったら良いのか?」「どうやって配信したら良いのか?」といった問題にぶつかると思います。
そして、さらに、「もっと聞いてもらえる番組にするにはどうしたら良いのか?」「番組配信により利益を上げるにはどうしたら良いのか?」といった段階へと発展していくでしょう。
ここでは、その具体例の一部を見ていくことにします。
- 制作した番組を配信できるサイト
選択肢としては決して多くはありませんが、掲載できる番組ジャンルの指定等はありませんので、まずは各サイト内にある番組を聞いてみて、実際に使用してみるのが一番だと思います。
それぞれに特色があり、ポータルサイト的要素が強かったり、管理機能の使いやすさに違いがあったりしますが、アップロードできるフォーマットや利用料金(無料)の点などはほとんど同じです。
ケロログ
ポッドキャスティングジュース
- 収録、編集機材について
番組を制作するには、既に音楽・曲データなどを持っているのでなければ、何かしら、音声(音源)の収録が必要になります。
一般的にはPCにマイクをつないで録音したり、ICレコーダーやMDで録音したりするケースがほとんどですが、まだ「Podcast」向けの製品などは少ないことから、選択肢はあまり多くは無いのですが、今後の普及次第で、使い勝手のよい低価格な製品の登場が期待できるでしょう。
実際に自分でやって録音してみましたが、1000円程度のマイクをPC直結で自宅で取り込み、Audacityのようなフリーソフトで編集するだけでも、十分な品質の収録が行えました。
Audacity
- 制作を続けるために
案外これが、機材やソフトの問題よりも大きいかもしれません。1つの番組を作るのに慣れるまではどうしても手間がかかりますし、最初のうちはリスナーも少ないため、制作を続けていくためには何かしらのモチベーションが欲しいものです。
例えば、SNSやブログを併用することで、いち早く制作者同士、制作者と消費者(リスナー)との密な関係を構築できます。これにより自分の番組の「ファン」を獲得し、コミュニケーションをとることで、「聞いてもらえている」実感を得られますし、さらによい番組にしていくためのアドバイスを得られ、結果、リスナーも増えていくでしょう。
- 番組に使用する音楽について
2006年6月1日から、JASRACから「ポッドキャスティングの音楽著作権料を「1番組2.25円」から」という発表がありましたが、実際に一般配信者が著作権保護された音楽を番組内に利用するにはまだまだ厳しい条件であり、今後が期待される部分です。
よって、podsafe music networkなどの著作権フリーの音楽を利用する状況がしばらく続きそうです。
podsafe music network
また、「Caspeee」の「サウンドコレクション」ような会員(無料)向けに著作権フリーの音楽素材を提供しているところもあるようです。
Caspeee
これらは、まだまだ発展途上中といえる部分が大きいですが、これまでのブログ等の例を見ても、最初から質の高いコンテンツや使い勝手の良いサービスが存在したわけではありません。ただ、そこはインターネットというメディアの性格上、1年もしないうちに想像もできないような面白いメディアになっている可能性もあるでしょう。
