「迷うこと」が新たな体験価値になる場合も?
一方で、「迷うこと」が価値になっているトレンドもあります。
たとえば、最近話題の「麻辣湯(マーラータン)」は、ヘルシーで罪悪感がないのはもちろん、「トッピングの多さ」が人気の理由。人気の麻辣湯の専門店では、ショーケースの中にずらりと並んでいる野菜や練り物、日本では珍しい具材などから、自分の好きなトッピングを選び、調理してもらうシステムになっており、スープの種類や辛さをアレンジできる店もあります。迷いながら選べる小さなワクワク感が、女の子たちにとって楽しい体験になっているのです。
今年トレンドになった「耳つぼジュエリー」にも、「迷えるワクワク感」というインサイトが隠れています。耳つぼジュエリーは、見た目がかわいい上に、健康にもよいことから支持されるようになりましたが、色とりどりのスワロフスキーやパール、様々なモチーフのパーツから好みのアイテムを選び、耳に配置していく「楽しく・迷えるワクワク感」があるのです。
また、テーマパークのカチューシャも年々種類が増えています。選べないほどたくさんの種類の中から、どれにするかを友達や恋人と迷うのも園内での楽しい時間になっています。
ポイントは、いずれも「限られた範囲の中で」かつ「答えがなく、どれを選んでも正解」といった「安全圏で迷える仕組み」があるということ。迷うこと=ストレスではなく、楽しい体験になっていることがポイントだと考えます。
「自ら選ぶ人」がより影響力を持つ時代へ
今後も、選択肢や情報の量は増え続け、「もう迷いたくない」「失敗したくない」という気持ちは高まり、「選べる第三者」に判断を委ねる女の子たちも増えていくでしょう。
結果、「選ぶ側」と「誰かが選んだものを選ぶ側」との二分化が進み、「選べる力」のあるインフルエンサーや専門家、有識者の意見や発信が、フォロワーとなるマジョリティの行動や意思決定にこれまで以上に影響力を持つようになると考えます。
「何が正解か」ではなく「誰を信じるのが正解か」が重視され、インフルエンサーなどの「選ぶ側」は、常に一貫した姿勢や発言が求められるようになり、より自身の発言に責任を持たなければならなくなるでしょう。企業とのタイアップ案件であっても「本当に良いと思うもの」を案件として選ぶ必要があるため、企業側もインフルエンサーとの付き合い方には、より慎重になる必要があります。
情報過多で、共通の正解がない現代を生きる令和の女の子たちは、セグメントすることで迷う範囲を狭めたり、信頼できる第三者の選択を自分の正解としたりする(=自分では選ばない)ことで、自分流に情報をスクリーニングし、不要に迷うストレスや、失敗するかもしれない不安から解放され、少しだけ自由になれるのかもしれません。
その分、自分の人生にとって大切な選択や決断は、誰かの意見に委ねるのではなく、大いに迷って、悩んで、自分なりの正解を導き出すための時間を惜しまないでいられたら、と願います。
