創業100年企業の挑戦──リアル×デジタルで築く「オンワード経済圏」
続いて登壇したのは、オンワードデジタルラボ 社長の山下哲氏と、デジタルマーケティングDiv.の芦田敏輝氏。「創業100年!進化をつづける老舗アパレル オンワードの顧客ロイヤルティ設計」と題し、同社のOMO戦略が語られた。
同社 イノベーショングループ デジタルマーケティングDiv. リレーションSec.リーダー 芦田 敏輝氏
間もなく創業100周年を迎えるオンワードグループ。山下氏はまず、同社のビジネス構造における「既存顧客」の重要性を示した。「当社の売上の約8割は既存のお客様によって支えられています。特に、店舗とECの両方を利用する『クロスユース』顧客のARPU(年間平均購入金額)は、単一チャネル利用顧客の約2.6倍にも跳ね上がります」(山下氏)。このデータは、リアルとデジタルの垣根を超えた体験提供こそが、ロイヤルティ向上の最短ルートであることを如実に物語っている。
そのための具体的な施策として芦田氏が紹介したのが、徹底したシナリオ設計だ。初回購入後のフォローメールでは、店舗購入客にはECクーポンを、EC購入客には2回目購入用のクーポンをと、入り口のチャネルに応じて内容を出し分けている。また、サステナブルな衣料品引取サービス「オンワード・グリーン・キャンペーン」をCRMに組み込み、購入から一定期間経過した顧客に案内を送ることで、店舗への再来店と新たな購買サイクルを生み出すことに成功している。「単なる値引きではなく、お客様が『またお店に行きたい』と思うきっかけを作ることで、結果としてクロスユースが拡大しています」(芦田氏)
オンワードでは、チーターデジタルのMAツール「Engage+(現Cheetah Digital)」を10年にわたり利用しており、現在運用している施策数は約800本にものぼる。山下氏は今後の展望として、マルチブランド展開という強みを活かした「オンワード経済圏」の確立を掲げた。
「アパレルだけでなく、ライフスタイル全般に関わるグループ各社との接点を作り、チャネルを広げていく。そうして『オンワード経済圏』を形成し、グループ全体でのLTV最大化を目指します」(山下氏)
オルビスが「顧客解像度」を高め、インセンティブに頼らずLTV115%成長を実現
最後に登壇したのは、オルビス CRM統括部 部長の大村亮平氏と、CRM推進担当 担当部長の藤田剛氏。「ロイヤルティ醸成をどう施策へ落とし込むか」をテーマに、同社のCRM戦略が語られた。
同社 CRM統括部 CRM推進担当 担当部長 藤田 剛氏
2018年のリブランディング以降、変革を続けるオルビス。アプリ会員数600万人を超える顧客基盤を活かし、ブランドとの繋がりを強化することでLTV最大化を目指している。その鍵は、顧客構成比の約8割を占める「スタンダード顧客」を「VIP顧客」へ引き上げることだ。藤田氏は、徹底して「顧客解像度」を高めることの重要性を強調した。
「ロイヤルティの向上とは、顧客のペイン(悩み)の解消やニーズを満たした経験の積み重ねです。定量データだけでなく、アンケートやインタビューを通じて『いつ、誰に、何を』伝えるべきかの解像度を上げることが、施策の成功に直結します」(藤田氏)
その成功事例として紹介されたのが、F2(2回目購入)転換施策だ。データ分析により、トライアルセット購入後の転換ピークは「14日目」にあることが判明。しかし藤田氏は「お客様の手元にはまだ前のスキンケアが残っている可能性がある」という心理的障壁に着目した。そこで、「届いた瞬間から使いたくなる高揚感」を醸成するために配送箱のデザインを刷新。さらに、手持ちの化粧品がなくなるのを待たずに使い始めてもらうため、あえてキャンペーン期間を短縮し、使い終わるタイミングでオファー期限が来るよう再設計を行った。また、ヒートマップ分析に基づき、商品説明よりもベネフィットや悩みの解決イメージを重視したクリエイティブを採用。これらの緻密な改善により、割引などのインセンティブ強度は変えずに、顧客LTV115%成長という成果を叩き出したのだ。
セッションの締めくくりに大村氏は、これからのマーケティングのあり方について提言した。「これまでの購買履歴に基づく『相関関係マーケティング』から、顧客の悩みやデモグラフィック情報からニーズを先回りして提案する『因果関係マーケティング』への進化が必要です」(大村氏)
こうしてすべてのセッションが終了。セッション終了後には、ネットワーキング懇親会が行われ、登壇者・参加者の枠を超えた交流が盛んに行われた。
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