コンテンツとの新たな“出会い”を作るために何ができるか?
新たなコンテンツファンを育てるために、生活者とコンテンツの偶発的な“出会い”やジャンルを超えた利用やファン化がカギになるのではないかと考えます。具体的な事例をご紹介します。
ある有名アーティストは話題を呼んだ大規模ライブをYouTubeで無料公開しました。ファンに向けて有料配信する選択もあったと思いますが、これまでこのアーティストのファンでなかった人でも接触するきっかけを作ろうとしたと見られます。
コンテンツジャンル内外を横断した“相乗り”も効果がありそうです。音楽ジャンルでいえば、フェスのような多様なアーティストが集まるイベントは代表例ですし、たとえばバンドとアイドルといったファン層が異なりそうな組み合わせで競演する「対バン」も珍しくありません。また、あるスポーツ選手が他の複数の競技のアスリートや音楽アーティストらも呼んでジャンル横断のイベントを実施したケースもあります。
その他、改めてメディアやプラットフォームの環境の変化を捉えた発信は重要です。今はSNSやショート動画といった場でコンテンツを楽しむことは中心的な体験のひとつです。コンテンツ調査で、2025年にユーザーの平均利用時間が最も長かったSNSはTikTokで、1日1時間近くに達しています。コンテンツへの意識を聞いた設問では「長編コンテンツより短編コンテンツのほうが好きだ」という回答が急増し、前年より10ポイント近く上昇して2025年調査では34%に上りました。
生活者はより短時間、手軽に動画でコンテンツを楽しむことに慣れているといえ、そういった環境の中でどう訴求していくかが問われています。
コンテンツホルダーだけじゃない、マーケターへの影響
ここまで見てきた変化はコンテンツホルダーだけでなく、コンテンツを活用したマーケティングに取り組む事業会社にとっても影響があるはずです。
既に多くのファンを獲得しているコンテンツだけでなく、これから新規ファンを獲得していくような成長性のあるコンテンツとのコラボレーションを望む事業会社は少なくありません。しかし、ファンが新たなコンテンツと“出会えていない”としたら、これから成長するコンテンツを見つけることは難しくなっている可能性があります。
ただ、そんな時こそ、データから兆しを見つけることができると考えます。次にヒットしそうなアーティストや拡散力の高いファンを持つコンテンツの発見、まだコンテンツを利用してない新規層との接点になるようなメディアや企画のきっかけとして、コンテンツ調査のデータがコンテンツホルダーや事業会社の助けになればと考えています。
コンテンツマーケティングへの示唆
- コンテンツへの一人あたりの支出金額が増える一方、支出層・利用層が減っている
- 生活者は新たなコンテンツと“出会う”よりも、既存コンテンツを深める傾向か
- 新規ファンを育てるために、生活者の変化を捉えた偶発的な“出会い”創出がカギに
