生活者理解に革命を起こすリサーチエンジン「Dockpit」とは?
MarkeZine:はじめに、Dockpitとはどのようなソリューションなのか教えてください。
榊:Dockpitは、ヴァリューズが保有する約250万人の消費者パネルのWeb行動ログデータを活用した競合調査・市場分析ツールです。何時何分何秒にどのような検索や広告接触を行い、どのページを閲覧したかという詳細な行動データを取得し続けており、3C分析(Consumer、Competitor、Company)のフレームワークをベースに、消費者軸・競合軸での分析が可能です。
MarkeZine:ヴァリューズは、どういった背景・考えでDockpitを開発・提供しているのでしょうか?
榊:Dockpitは「その意思決定に、データを。」というコンセプトのもと、2つのミッションを掲げています。1つ目は「生活者理解に“新しい変化”をもたらす」というミッションです。
マネジャー マーケティングコンサルタント 榊規宇氏
従来の意識調査(アンケートやインタビュー)では、対象者に直接質問することで消費者の声を収集してきました。しかし、人は記憶から抜け落ちてしまった事柄について正確に答えることができないほか、無意識の思考や感情は抽出しづらい傾向があります。
このような課題を解決するため、私たちは意識調査と行動調査(行動データ調査)をブリッジすることで、新しい生活者理解の形を提案しています。行動データは消費者の実際の行動を客観的に記録したファクトであり、記憶の曖昧さや回答バイアスの影響を受けません。意識調査で得られる「なぜそう思うのか」という理由と、行動調査で明らかになる「実際に何をしているのか」という事実を組み合わせることで、より深く正確な生活者理解が可能になります。
MarkeZine:なるほど。マーケティングリサーチは意識調査で完結してしまうケースが多いですが、行動データを取り入れると、曖昧な部分の解像度が高くなりますね。
榊:ええ。もう1つ、「Dockpit」はマーケターの皆様にとって身近で頼りになる存在を目指しています。何か気になることや課題が発生した際の最初のとっかかりとして、Googleで検索するような感覚で気軽に調べられる“リサーチエンジン”でありたいのです。
私たちが考える課題解決の「初めの一歩」とは、事業課題の解決プロセスにおける「仮説出し」のフェーズを指します。売上低迷や新規顧客獲得、ブランドの若返り、市場縮小といった様々な事業課題に対して、経験と勘ではなく消費者行動というデータに基づいた仮説立案を行うことで、課題解決の成功確率はぐっと高まるはずです。
たとえばこんな時、Dockpitなら瞬時に「数字(ファクト)」を抽出できる!
・対象業界の規模や動向、ユーザー属性を知りたい
・市場トレンドに基づいた新商品開発のアイデアが欲しい
・企画の方向性や仮説が正しいか、定量的に検証したい
・今の消費者に響くコミュニケーションの切り口を知りたい
・競合サイトと比較して、施策やキャンペーンの効果を客観的に検証したい
・企画を提案する際、業界内でのシェアなど競合の状況を踏まえてプレゼンしたい
3社の活用事例、たった5分で「市場トレンド」を探索
MarkeZine:Dockpitでは「250万人のWeb行動ログデータ」をサクッと参照できるということですが、そのようなビッグデータを各社どのように活用しているのでしょうか?
榊:実際の活用例をお伝えしたほうがイメージしやすいと思うので、今回は3つの切り口から「Dockpit」の活用事例を紹介します。
活用事例1:若年女性向けドライシャンプーのコミュニケーション開発
榊:1つ目は、Dockpitをコミュニケーション開発やユーザーニーズ分析に活用した事例です。大手日用品会社様が新商品のドライシャンプーを若年層女性向けに展開する際、メッセージング開発でDockpitを活用されました。
ドライシャンプーは、シャワーで髪を洗うことなく、髪の清潔感を手軽に取り戻せる商品です。同社は、「若年層女性に対して単純に“清潔感”の提供価値を訴求しても響かないのではないか?」という仮説を持たれていました。そこで、若年層女性に響く表現を見つけるため、Dockpitで清潔感というキーワードの周辺検索行動を分析。その結果「垢抜け」というキーワードが頻出し、実際に垢抜けに関するページを閲覧する人は、髪の美しさや清潔感についてのコンテンツも多く参照していることが判明しました。
この分析結果を踏まえ、「垢抜け」を切り口にしたメッセージングで、企画がスピーディーに進んだそうです。従来のアンケート調査では発見できなかった若年層女性の「生の声」を5分程度でクイックに発見できたことが、「Dockpit」の提供価値だったと考えています。
活用事例2:市場トレンドの探索・発見と事業アイデアの検証
榊:続いては、Dockpitを「新たな兆し」や「トレンド」のクイックな発見に活用した大手ペットフード会社様の事例です。
同社は、コロナ禍に「免疫力」への関心が高まっていることを受けて、ペットにも同様の傾向があるのではないかという仮説を立てられました。Dockpitでペットの免疫に関する検索動向を調査したところ、実際にその分野での検索が伸びていることを確認。この結果を基に免疫力をテーマにしたペットフードの商品化し、その商品は現在も人気商品として支持されているそうです。
市場の潮流をいち早く掴めたことで、迅速な商品開発と市場投入が可能になったとの評価をいただいています。
活用事例3:企画書・営業資料の裏付けに
水野:私からは、Dockpitを企画書や営業資料の精度向上に役立てている例を紹介します。
企画書や営業資料を作成する際、従来は担当者個人の経験や肌感に基づいた提案が多く、データの裏付けがないと、上司や取引先から「本当に売れるのか」「企画として大丈夫なのか」といった疑問を持たれることは多いと思います。しかし、毎回多額の費用をかけて調査を実施することは現実的ではありませんよね。
マネジャー マーケティングコンサルタント 水野夏菜氏
そういった日々の業務でもDockpitは重宝されています。たとえば「20代女性では、このキーワード検索が伸びている」「自社商品ページがこのような人に閲覧されている」といったデータを1つ加えるだけで、企画・提案の精度は大幅に向上します。何より、そうした数字を5分もあれば抽出できること、自分のアイデアをスピーディーに次につなげられることが、マーケターの皆さんにとって大きな価値となっています。
お酒を飲んでも楽しく見られる?わかりやすいUIで情報収集が習慣に
MarkeZine:従来のマーケティングリサーチに+αでDockpitを取り入れることで、仮説思考や意思決定のベースラインが上がるのですね。導入企業は、通常のマーケティングリサーチとDockpitをどのように併用していますか?
水野:最初の仮説立案や企画提案のアイデア探索段階で、Dockpitをスピード重視で活用されることが多いです。そこで見つけたアイデアが本当にポテンシャルがあるのか、実際どのくらいユーザー数がいるのかなどを検証するため別途リサーチを行うといった具合に、使い分けている企業様が多いですね。
また、リサーチだけでなく、施策実施後の効果検証でも活用されています。たとえば、デジタルマーケティングにおいては、実施したキャンペーンの成果を“競合サイトの状況と比較して”客観的に検証することができます。
榊:Dockpitのデータを基に社内会議を行っている企業様もいらっしゃいます。客観的なデータを持参することで、質の高いディスカッションが生まれているそうです。ミーティングのアジェンダにDockpitが入るなど「日常的な業務に組み込んでいる」といった話もよく聞きますね。
MarkeZine:このようなツールは導入しても、なかなか根付かないケースが多いと思います。そのような中で、Dockpitは導入企業にとって「ないと困る」存在になっているのですね。
水野:導入しただけで終わってしまい、十分に活用されずにもったいない状況にならないよう、カスタマーサクセスチームと連携して活用促進に取り組んでいます。具体的には、テンプレート化や日常業務への組み込み方法を提案し、導入企業様が継続的に活用できるようサポートしています。
榊:使いやすさにもこだわっています。実は、Dockpitは「お酒を飲んでも楽しく見ることができるツール」をモットーに開発しており、シンプルで感覚的に使えるUIにこだわっています。iPhoneのようにどこを押せば何が起きそうかが直感的にわかるので、類似ツールを使っていた方が初めてDockpitを見ると、そのわかりやすさに驚かれることが多いです。
AI活用は「独自データの有無」が重要。AI時代にこそ真価を発揮するDockpitの展望
MarkeZine:マーケティング業務でもAI活用が浸透していますが、「Dockpit×AI」の活用も可能なのでしょうか?
榊:AIとDockpitは非常に相性が良いと考えています。AIが活用するデータソースは世の中に公開されている二次データが中心となるため、抽象度が高く汎用的な回答になりがちです。さらに、競合他社も同じ情報にアクセス可能であるため、差別化にはつながりません。
一方、Dockpitは一次データに近い実際の行動データを収集しているという点で、情報の優位性が大きく異なります。
水野:Dockpitから得られたデータを基にAIを活用して、ユーザー像やペルソナのイメージを作成することも可能です。データから特徴的な要素が抽出されるため、一段上のアウトプットが生成されるようになります。
榊:AI時代において重要なのは「AIに何を学習させるか」であり、質の高い独自データがコアバリューとなります。従来の汎用的なAI回答では得られない、実用性と独自性を兼ね備えたソリューションを提供することで、リサーチ領域に革命を起こしたいと考えています。
MarkeZine:AI時代にこそ、Dockpitで得られるデータの価値が活きてくるのですね。最後に、今後のDockpitの展望や、目指しているマーケティングサポートの形についてお聞かせください。

榊:我々は、現在のDockpitの形が最適解とは考えていません。Googleの検索ボックスに知りたいことを入力すれば結果が出てくるような、誰もが慣れ親しんでいる形にDockpitを発展させるべく、様々な取り組みを進めているところです。ChatGPTやGeminiのような対話型UIへの進化も検討しています。
そうした中でも、マーケティングリサーチにおける「難しい・難しそう」を取り除きたいという目標は変わりません。重要なのは、マーケターが本当に知りたい情報をクイックかつ正確に届けること。知りたい情報までの距離をより縮められるよう、今後も継続的に取り組んでいきたいと考えています。

