運用担当者の仕事は“作業”ではなく“設計”へ
そのための基盤となるのが、Ads ConsoleとAmazon DSPを統合した単一の広告プラットフォームである。Mark氏が紹介した統合後のCampaign Managerでは、従来バラバラに管理されていたスポンサード広告、DSP、動画、国別アカウントなどを1画面で横断的に操作できる。自然言語でのキャンペーン検索や、KPIバーによる重点指標の提示、AIによる改善カードなど、運用担当者が“考えるべきこと”に集中できる構造へ変わり始めている。
さらに、AIアシスタントのAds Agentが、キャンペーン設定や入札調整、ターゲティング設計、AMCを用いた分析クエリの作成までを自然言語で支援する。これにより、従来運用担当者が日々のルーチンで費やしていた時間は大きく削減され、実際に入札管理では作業時間が26%短縮されたという。
広告運用は「手数の多さ」で勝負する時代から、「どのような設計思想で臨むか」を問われる時代へ明確に変わろうとしている。読者の皆様の現場でも、今後は“AIに任せる領域”と“人間が判断する領域”を再整理する必要が出てくるだろう。
認証世帯リーチとシグナルの統合が生む“上流の強さ”
Amazon DSPセッション「Tap into the reach, precision, and results of Amazon DSP(Amazon DSPのリーチ・精度・成果)——CTV × ショッピングシグナルがつなぐフルファネル)」では、DSP部門を率いるPieter de Zwart氏が登壇し、Amazonのリーチ基盤の強さと、シグナル統合による成果改善について語った。
特に、Amazon authenticated household graphが、他のプラットフォームとの差別化要因であることを明確にした点が印象的だった。確率的手法による推定IDではなく、Amazonのログインデータをもとにした決定論的な世帯認識が、米国世帯の約9割をカバーしているという。
この認証リーチは、Prime Videoのストリーミング在庫と組み合わせることで、上流から中流への接続性をも高めるようだ。セッションでは、CTVとオープンインターネットの在庫を組み合わせた際、CTVキャンペーンのユニークリーチが40%増加し、商品詳細ページの閲覧が45%向上したという事例も紹介された。上流での接触が単なる“認知”にとどまらず、検索や閲覧といった具体的な行動へ転換していることが示されている。
さらに、このセッションではAIによる最適化の進展も取り上げられた。たとえば、検索で商品を調べたが購入しなかったユーザーに対して、DSPで15分以内に動画やディスプレイ広告を届ける「Search Remarketing」が試験導入されており、購買率は25%上昇したという。検索シグナルとDSPが結びつくことで、フルファネル全体をシームレスに動かす設計が可能になる。
日本の広告主にとって示唆的なのは、CTV・DSP・リテールメディアを“別チャネル”として捉える発想から脱却すべきという点だ。接触データと購買データが統合される前提では、上流での投資がLTVや新規顧客獲得へどう寄与するのかを、これまで以上に可視化できるようになる。
