ポイント2:人へのターゲティングから、AEO、データ基盤の連携へ
2つ目は「AEO(AI-Agent Engine Optimization)」に向けた、AI同士が会話できるデータの基盤化である。旧態のCookieに頼ったプログラマティック広告代理事業のコモディティ化は、過去2年の下降が顕著だった(下記事例1・2)。いわゆる“ターゲティング”の対象は、ユーザーの向こう側で成長する「AIエージェント」へ既に向けられている。
旧態ターゲティング広告のゆくえ【1】Oracleの広告事業撤退
米国Oracleは、2024年9月30日をもってグローバルでの広告事業を終了した。10年以上にわたり計4,000億円以上を広告事業のM&A(BlueKai、Moat、Datalogix、Grapeshotなど)に投下してきた同社のこの決断は、市場の変化を示す重要なシグナルであった。
旧態ターゲティング広告のゆくえ【2】2025年に2回発生したTTDショック
SSP、DSPの巨人であり、33四半期連続で業績成長を達成してきたThe Trade Desk(TTD)だったが、2025年2月と、同年8月の四半期決算説明会の直後、TTD株価が急落する「TTDショック」が発生。株価は1年で139ドルから37ドル(2026年1月時点)に。2020年の外出自粛特需以降の価値がすべてなくなり、それ以前に戻ってしまった。日本のサイバーエージェントの企業価値推移も2020年初頭の値に戻っている。
旧態ターゲティング広告のゆくえ【3】新たな経済OSの誕生
「AIエージェント型コマース」として、「Walmart+Google(Alphabet)」は、2026年1月に「Universal Commerce Protocol(UCP)」を発表した。AIエージェントがあちこちからの買い物を代行するための「世界共通言語(新たな経済OS)」の誕生であり、従来のターゲティング広告を根底から変える可能性がある。
(※)Universal Commerce Protocol(UCP)とは?
Googleが構想する「エージェンティックコマース」とは、「人間がECサイトを訪れることなく、AIとの会話だけで買い物を完結させる」もの。たとえば、Geminiに「週末に釣りに行く準備」と指示すれば、用具から食料品やその他の商品を複数の店から分析し、天候情報の提供や状況に応じた行動指針を提示し、新規登録やポイント換算を考えた上で、商品を決済し、到着に合わせて宿泊先へ配送することも可能。UCPは、このエージェンティックコマースを支える共通基盤として設計された、オープンプロトコル。各小売店や決済サービス、物流などが連携するための翻訳機であり、共通のルールである。
OpenAIの「Instant Checkout(オンライン購買の即時決済)」とUCPの決定的な違いは、実店舗の在庫や物流といった「物理的なデータ」を扱える点(フィジカルAIとしての強さ)にある。Amazonの「ウォールド・ガーデン」に対抗する企業連合軍を組めるオープンなプロトコルで、Anthropicが提唱したMCPのオープン接続の概念にも近い。
旧態のターゲティング広告では、大前提としてターゲティングの対象が「人」だった。「映えるAI動画」も「バズるコンテンツ」も、人の視聴や共感を集めるものであった。今後は、人へのウケ以前に、「AIエージェント同士の連携」が起こる。AIエージェント同士がリアルタイムで繋がり、フィジカルAIとしての行動(支払や配送)が発生し、人間ユーザーへの価値が創出される。つまり、AIが共通して理解し合える「標準データ基盤」の上に自社事業を載せることが、マーケティングの第一歩になる。
