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「AIの違和感」はあえて消さない。Equinoxの新年広告が示す、生成AI時代の新・クリエイティブ論

 生成AIを使った広告表現は、もはや目新しいものではない。ビジュアル、コピー、動画生成まで技術的なハードルは大きく下がり、「AIを使っていること」そのものが話題になる時代は終わりつつある。そうした状況の中で、米国の高級フィットネスクラブEquinox(イクイノックス)が2026年のニューイヤーに向けて展開した広告キャンペーン「QUESTION EVERYTHING」は、SNS上で賛否両論を巻き起こし、いわゆる“プチ炎上”状態となった。しかし、この物議を醸したキャンペーンこそが、生成AI時代のクリエイティブが次のフェーズに入ったことを強く印象づけるものだったのだ。注目を集めた理由は、技術的な先進性ではない。むしろ、あえて“AIっぽさ”を消さず、違和感ごと前面に出した点にある。

あえて隠さない「AI特有の不気味さ」と強烈なコントラスト

 キャンペーンで使用されたビジュアルは、いずれも奇妙で、不自然さを隠そうとしないものだ。顔立ちや雰囲気はリアルだが、細部を見るとどこか破綻しており、「これは実写ではない」「AI生成である」と誰もが直感的に理解できる。たとえば、赤いダウンジャケットを着た教皇(法王)や、乳房が3つある女性など、一目でフェイクだとわかる生成AI特有の“ズレ”を強調したビジュアルが並ぶ。

画像を説明するテキストなくても可
画像を説明するテキストなくても可
「QUESTION EVERYTHING. BUT YOURSELF.」キャンペーンのビジュアル。意図的にAIの違和感が残されている
(出典:Equinox

 一方で、それらの画像と対になるように配置されるのが、実際に鍛え上げられた人間の身体写真だ。ライティングや構図はシンプルで、誇張も装飾もない。コピーとして添えられているのは、「QUESTION EVERYTHING. BUT YOURSELF.(自分以外のすべてを疑え)」という強いメッセージである。

 この構成によって、広告が語ろうとしていることは一瞬で理解できる。AIによって生成された“それっぽい偽物”と、時間と努力によってしか手に入らない“現実の身体”。その対比を通じて、Equinoxは「本物とは何か」「信じるべきものは何か」という問いを、視覚的に突きつけている。

「AIっぽさを消す」の真逆をいく。違和感をブランド価値に変換する発想

 多くの企業が生成AIを広告に取り入れる際、共通して抱くのは「いかにAIっぽさを消すか」という発想だ。実写に近づける、違和感をなくす、人間の手による表現と見分けがつかないレベルを目指す。Equinoxの選択は、その真逆にある。

 同キャンペーンについて、EquinoxのCMOであるBindu Shah氏は米紙ウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、次のように語っている。

 「AIに関して、私たちはなかなか興味深い領域を進んでいる。ここで使っているものは、いずれも本人の正確な画像ではない。すでに世の中に出回っていて、トレンドになっているものをもとに生成されたものだ。私たちは挑発的なブランドであり、一定のリスクを取ることもある」

 この発言が示しているのは、AIを“便利な制作ツール”としてではなく、メッセージそのものを体現する素材として使っているという姿勢だ。AIが氾濫し、現実と虚構の境界が曖昧になる時代だからこそ、あえてAIの違和感を露わにする。そのうえで、「だからこそ自分自身の身体や努力は疑いようがない」というブランドの価値観を際立たせている。

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炎上リスクは想定内。批判を「語り」に変える緻密な設計

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この記事の著者

岡 徳之(オカ ノリユキ)

編集者・ライター。東京、シンガポール、オランダの3拠点で編集プロダクション「Livit」を運営。各国のライター、カメラマンと連携し、海外のビジネス・テクノロジー・マーケティング情報を日本の読者に届ける。企業のオウンドメディアの企画・運営にも携わる。

●ウェブサイト「Livit」

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2026/02/24 09:00 https://markezine.jp/article/detail/50318

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