大人を動かす鍵は「ギア」。2つの市場変化を捉えた新機軸
議論の起点になったのは、2つの市場変化への着目だ。1つは、ベイブレード第1世代(『爆転シュート ベイブレード』)に熱中していた世代が、社会人として趣味に投資できる余力を持ち始めているという変化。四半世紀にわたるブランドだからこそ、当時はまっていた大人たちが帰ってくる素地が既に整っていた。
もう1つは、テレビゲームがeスポーツとして市民権を獲得し、子どもから大人まで楽しむ文化に進化したという事実だ。
市場変化を踏まえて「ホビースポーツ」や「エクストリームテーブルスポーツ」などの様々な言葉を検討しながら、最終的に「ギア」という概念が大人を動かすための鍵になると判断した。小林氏は、大人を動かす着火点として「ギア」を提案した背景について、次のように語った。
「スポーツにはギアを買う習慣があります。バスケットボールでも、釣りでも、BMXでも、道具に投資することが当たり前。いくらスポーツだと言っても、ギアを買う文脈がないと大人は動きません。だからこそ、ギアという言葉を真ん中に置くことが重要だと判断しました」(小林氏)
コアアイデアを起点としたコミュニケーション設計
ギアスポーツという定義が固まると、そこから先のすべての打ち手が一気に方向性を持ち始めた。
「発売開始からスポーツを目指すCX設計を一貫して展開しました」と篠永氏。ブランドムービーの公開を皮切りに、玩具業界で国内最大規模の展示会「東京おもちゃショー」の最寄り駅構内での交通広告ジャックも実施した。「ベイブレードはスポーツ、もう遊びじゃない」と掲げることで、ブランドのレベルが大きく変わることを、発売当初から強くアピールしたのだ。
特に、ブランドの世界観を最初に告知するために制作されたブランドムービーは、その意志を鮮やかに表現した。主役に据えたのは10代後半~20代前半の女性で、当時のベイブレードのコアユーザー層からは最も遠い存在だった。
監督は多くのCM、MV、短編映画などを手掛け、カンヌ国際広告祭グランプリなどの受賞歴を持つ映像作家・映画監督、関根光才氏を起用。近未来的でスタイリッシュでありながらも、スポーツがもたらす普遍的な感情も描いている
「この意思決定は本当にすごいなと思いました。既存ターゲットだけを狙うんじゃなくて、まさにこれから拡張していくのだという意思表示だと受け取りました」(小林氏)。
社内外に対してブランドのイメージが大きく変わったと、篠永氏も手応えを語った。
さらに、スポーツとしての「多様な楽しみ方」も提示した。競技として真剣勝負を求める「X-TREME(エクストリーム)」と、みんなでカジュアルに楽しむ「Enjoy(エンジョイ)」という2つのプレイスタイルを用意し、幅広い層が参入できる余白をデザインした。
「スポーツの楽しみ方は決して1つではありません。たとえばフットサルでも、ガチの競技として真剣勝負に取り組む人もいれば、放課後や仕事終わりにみんなでワイワイ楽しむ人もいますよね。そういったイメージから、多様なスポーツとしてのデザインや世界観を意識して展開を行いました」(篠永氏)。
