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MarkeZine Day 2026 Spring

Human-Centered AI:効率化の“その先”へ(AD)

AIは組織の「伴走者」。博報堂のAI思想がJTのIT部門にもたらした「共創」によるブランド構築の真価

 博報堂DYグループは、AIを単なる業務効率化の手段ではなく、人間の創造性を拡張するパートナーと定義する「Human-Centered AI(人間中心のAI)」という哲学を掲げている。この思想を具体的な組織課題の解決へと実装した事例が、日本たばこ産業(JT)のITグループにおけるブランディングプロジェクトだ。激化するIT人材の採用競争を背景に、JTのIT部門は「自らが目指す価値」を再定義し、社内外へ発信する必要性に迫られていた。博報堂は、トップクリエイターの思考プロセスを再現するAIツール「STRATEGY BLOOM CONCEPT」を投入。専門知見を持たないIT部門がAIと対話しながら、自律的にブランドストーリーを構築するプロセスを支援した。最終的に50名のエンジニアを巻き込み、組織の共通指針と具体的なアクションプランを策定するに至った「共創」の舞台裏について、両社の担当者に話を聞いた。

「非専門領域」の壁をどう超えるか。JTのIT部門が博報堂との“共創”を選んだ理由

MarkeZine編集部(以下、MZ):まずは今回、JTのIT部門がブランディングに取り組むことになった背景をお聞かせください。

加藤(JT):正直に申し上げると、当初は私たちも「ブランディングの経験者がいないIT部門で、本当にテクノロジーに関するブランディングができるのか?」という戸惑いがありました。しかし同時に、当社のIT担当役員が掲げた「JT=テクノロジー実践活用の先進企業」というテクノロジー戦略をいかに組織へ浸透・活性化させ、その価値をどう伝えていくか、という課題に取り組む必要性も強く感じていました。

 当社はIT人材の採用を積極的に行っているのですが、現在IT人材の獲得競争は激化しています。世間的に「JT=テクノロジー実践活用の先進企業」というイメージが薄いなか、採用を強化するためには、まずは自分たちが何を目指し、どんな価値を提供しているのかを定義して社内外に発信し、我々のことを認知してもらう必要があったのです。

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日本たばこ産業株式会社 Group Technology Strategy Office 次長 加藤 正人氏

MZ:そこで「ブランドストーリー」を確立する取り組みを始められたのですね。

加藤(JT):はい。昨年から社内ブランディング活動を展開したり、当社の執行役員自らラジオやアカデミアのなかでIT部門の方向性について発信を開始しておりました。発信への着手や施策化はスムーズにスタートできており、個々の活動は良かったのですが、PRやIR、広報などの経験もないので、「果たして今まで、ブランドに関して一貫性を持って活動できていたのだろうか」と立ち戻って考えることになったのです。

 そこで出てきたアイデアが、全員で方向性を共有し、統一したブランドストーリーを作るということでした。こうした経緯で、博報堂さんに相談し、共同でステートメントの作成に取り組むこととなったのです。

MZ:博報堂に一任するのではなく、共同作業を選んだのは、どのような思いがあったからでしょうか。

長縄(JT):すべてを外部に委託して、“一見整ったブランドストーリー”を作ってもらうことは簡単かもしれません。しかし、それが組織の実情とかけ離れ、現場で働く社員の納得感が得られないものになっては本末転倒です。

 自分たちの手でコンセプトを練り上げ、言葉に落とし込む。そのプロセスを通じて社員同士が意見を交わし、認識を一つにすることこそが、プロジェクトの真の価値だと考えたのです。

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日本たばこ産業株式会社 Group Technology Strategy Office 長縄 美佳氏

トップクリエイターの思考を型化。AIツール「STRATEGY BLOOM CONCEPT」とは?

MZ:JTのIT部門のブランドストーリーを作るに当たり、「STRATEGY BLOOM CONCEPT」というAIツールを活用されたそうですね。これはどのようなツールなのでしょうか。

豆谷(博報堂テクノロジーズ):「STRATEGY BLOOM CONCEPT」は、博報堂のスター・クリエイターである、TBWA\HAKUHODOの細田高広CCO(Chief Creative Officer)が提唱する「インサイト型ストーリー」という独自のコンセプト開発メソッドを、AIで再現可能にしたツールです。トップクリエイターが長年培ってきたノウハウを、誰もが活用できるようにしたいという想いから開発しました。

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豆谷(博報堂テクノロジーズ):最大の特徴は、AIに丸投げするのではなく、人間がAIと対話しながら一歩ずつ思考を深めていく「共創プロセス」にあります。コンセプト開発のステップを一つひとつ紐解き、各段階でユーザー自身が意思決定を積み重ねていく。この「自分たちで考え抜くプロセス」を経ることで、単なるAIの出力結果ではない、自分たちの言葉としての「圧倒的な納得感」と「プロジェクトへの熱量」が生まれます。これこそが、他の生成AIサービスにはない、本ツール独自の強みです。

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株式会社博報堂テクノロジーズ マーケティング事業推進センター 豆谷 浩輝氏

MZ:今回のプロジェクトにおいて、AIツールを使うことにした理由や狙いについても教えてください。

北川(博報堂テクノロジーズ):IT組織のブランディングにおいて最大の鍵となるのは、現場のエンジニア一人ひとりにいかに「腹落ち」してもらうか、という点にあります。AIは、対話を通じてブランドを形作るための「接着剤」として機能するのではないかと期待していました。IT部門の方々はテクノロジーへのリテラシーが非常に高いですから、AIという共通言語があることで、日常業務からは遠い存在である「ブランディング」との橋渡しができるのではないかと考えたのです。

人間×AIの共同作業でブランドストーリーを作るワークショップ

MZ:では、具体的にどのようなプロセスでブランドストーリーを作り上げていったのか、その過程を教えてください。

西川(博報堂テクノロジーズ):「STRATEGY BLOOM CONCEPT」を活用し、ワークショップを全部で3回実施しました。1回あたりの時間は3時間ほどだったと思います。

 1回目は「STRATEGY BLOOM CONCEPT」を使い、ブランドの方向性をあえて発散させるフェーズから始めました。AIを単なる効率化ツールではなく「議論の着火剤」として活用しながら、JT様の組織にとって重要な価値や、ステークホルダーに提供すべき価値を掘り下げていきました。このJT様とAIと一緒に対話を進めるプロセスを通じて、ブランディングの方向性を示すコンセプト案を複数設計しました。

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株式会社博報堂テクノロジーズ マーケティング事業推進センター 西川 優氏

西川(博報堂テクノロジーズ):次に、コンセプトを具体的な言葉へと落とし込み、ステートメントとして形にするため、独自に構築したGeminiを活用しました。アウトプットをその場で可視化しながら議論することで、「この表現はJTらしいね」といった対話が深まり、参加者の共通認識もスピーディーに育まれたと感じます。

 2回目と3回目のワークショップでは、初回で作ったステートメントをアクションプランへと接続していきました。2回目は加藤さんと長縄さんを含むコアメンバーで内容を検証し、ステートメントの要素を整理・再構築しました。その後、博報堂のクリエイターが表現を磨き込み、最終形へと仕上げました。3回目はIT部門約50名を巻き込んだ大規模なワークショップを実施。完成したブランドストーリーを発表し、それをいかに「自分ごと化」するかをテーマに、ここでもAIを使いながら全員でディスカッションしてアクションアイデアを出し合いました。

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MZ:実際にワークショップを体験してどのように感じましたか?

加藤(JT):ワークショップで最も大きかったのは、「私たちが大事にしていること」と、博報堂さんが客観的に見て「JTのこういうところが良い」と思うことをぶつけられたということでした。そこで出てきた要素をAIに入れると、私たちが気づいていなかった価値について、AIが様々なキーワードや文章で表現してくれるのです。それを見て「じゃあ次はこんなワードを入れてみよう」と返していく。AIと人間との間で、本物の「対話」が生まれている感覚がありました。

 もしAIを使わずに、博報堂さんからキーワードだけを提案してもらっていたら、きっと「博報堂さんはそう考えるんですね、さすがプロだ」と感心して終わっていた気がします。心のどこかで「でも、自分たちの本当の思いはちょっと違うな」というズレを感じていたかもしれません。

 今回は、思いがどんどん形になっていくスピード感もありましたし、AIは私たちの思いと博報堂さんの視点を、どちらかに忖度することなく混ぜ合わせて提示してくれました。もちろん、ちょっと違うなという提示もたくさんあって、そういう時はAIが出したものだからこそ全面的に否定もしやすい。そのクイックに試行錯誤できるプロセスがあったからこそ、自分たち自身が心から納得できる言葉にたどり着けたと思います。

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ワークショップ(第1回)の様子

長縄(JT):私は、AIが提示するアウトプットがとても「フラット」な点が印象的でした。

 人間同士の議論だと、どうしても最初から主観的な重み付けが入りがちです。その点AIは、良い意味で言葉を選ばずに「こういう角度からの評価もできます」「この要素からはこんな案が作れます」と、あらゆる可能性を並列で提示してくれます。そこで初めて、「あ、こういう視点もあったのか」と気づかされたり、その材料をもとに議論して、「やっぱり自分たちはここを大事にしたいんだ」と再認識できたりします。AIが出した材料に対して、人間側が改めて「重み付け」をしていくという頭の使い方は、非常にクリエイティブでおもしろい体験でした。

AIが心理的ハードルを下げる? 50名のエンジニアを巻き込んだ「自分ごと化」

MZ:ワークショップで得られた気づきや成果についてもお聞かせください。

長縄(JT):他のメンバーが仕事で何を大事にしているのか、「JTのIT部門らしさ」を各人がどのように捉えているのか、はっきりと見えてきたことが大きな気づきでした。というのも、IT部門の人間に限ったことではないかもしれませんが、自分の価値観や目標、誇りにしていることを表に発信するのは、少し気恥ずかしく、照れくさいという感覚を持つメンバーも多いからです。

 ところがそこにAIが介在してアイデアを出してくれることで、心理的なハードルがぐっと下がり、「自分はここを大事にしたい」と、恥ずかしがらずに意見を出しやすくなったのです。これは大きな気づきでした。

 その一方で、AIの使い方については注意も必要だと感じました。AIの示唆がスピーディーで明快であるがゆえに、ともするとAIのアウトプットに満足して人間側が思考停止に陥る可能性もあります。AIとの対話に飲み込まれず、最後まで自分の頭で考えることをやめない姿勢が、クリエイティビティを発揮する上では不可欠だと思いました。

MZ:最終的に決めたブランドストーリーへの納得感はいかがでしょう?

加藤(JT):「自分たちが作った」という実感があるので納得感も大きいです。納得して終わりではなく、「次への活動の指針」となり、組織のモチベーションも高まりました。

AIで組織の創造性を引き出すポイントはどこにあるのか

MZ:今回の事例を踏まえ、AIを活用して組織の創造性を引き出すポイントはどこにあるとお考えでしょうか。

西川(博報堂テクノロジーズ):考えを「発散」させたり、ぼんやりしたものを「言語化」したりするのはAIが非常に得意な領域です。一方で、最終的に何を選び、どう実行するかを決めるのは人です。AIが思考を広げ、人が意思を持って選び取る。このプロセスが、組織の創造性を引き出すポイントだと思います。

豆谷(博報堂テクノロジーズ):今は表面的な綺麗なアウトプットならAIでいくらでも出せる時代です。だからこそ、その裏側に何があるのか、背景や知識、データの根拠をしっかり探求し、自分の考えを反映させていくプロセスが非常に大事です。こうした姿勢を持たないと、まさにAIに代替されてしまいますし、そうした危機感を持つことも、創造性を守る上では必要だと思います。

MZ:今回「人間だからこそ発揮できた真価」はありましたか?

北川(博報堂テクノロジーズ):最後の最後、ベースとなるステートメントに、STRATEGY BLOOM CONCEPTの基となったクリエイターの細田高広が手を入れた時に、やはり「なるほど」と思うアウトプットが出てきたのです。それは「感情」や「共感性」の領域です。人の機微に触れ気持ちを揺さぶられるステートメントを生み出すラストワンマイルの部分は、クリエイターの力が欠かせないなと今回改めて感じました。「5合目まではAI、中腹からはAI×人、ラストワンマイルは人間」という役割分担こそが、我々が提唱する共創のあり方だと確信しましたね。

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株式会社博報堂テクノロジーズ マーケティング事業推進センター 副センター長 北川 雄一朗氏

「共創プロセス」そのものが知見になる。博報堂が提案するAI活用の形

MZ:最後に、今後の展望についてお聞きします。JTさんは、策定したブランドストーリーを今後どのように浸透させていきたいですか。

加藤(JT):素晴らしいメッセージとストーリーが作れましたので、次はアクションプランを動かすフェーズです。IT部門がブランディングを仕掛けるという新しい挑戦ですが、今回ワークショップでAIと対話しながらIT部門のメンバーが自分ごととして考え具体的な案を出したことで、メンバーの活動が自発的に進んでいくだろうと期待しています。

長縄(JT):ブランドストーリーを作って終わりではなく、社内に浸透させ、メンバーの行動変容、社外の認知に繋がって初めて、ブランディングという大きな活動が完結すると考えています。これをJTのIT部としての「北極星」のような指針にして、1人ひとりが自分を変革していくための意識づけにしていきたいです。

MZ:ありがとうございます。それでは博報堂の皆さんから、今回の取り組みを踏まえた今後の展望をお願いします。

豆谷(博報堂テクノロジーズ):博報堂は以前から「Human-Centered AI(人間中心のAI)」を掲げ、人間とAIの共創関係を探求してきました。今後、私たちが提供できる支援としては、長年培ってきた「博報堂としての普遍的なノウハウ」と、クライアントの状況に合わせて「個別に最適化するカスタマイズ」の2つを、ベストな形で掛け合わせていくことだと思っています。

 今は開発効率も飛躍的に上がっているので、今回のようにGeminiをカスタマイズして特定のエージェントを作るといった、状況に応じた柔軟な支援をさらに強化していきたいです。

西川(博報堂テクノロジーズ):今回JT様と一緒に「共創」していくプロセスを体験し、この共創プロセスそのものがクライアントにとっても大きな知見になると実感しました。AIと共創することがいかに価値を生むかというこの実証プロセスを強みに、組織の課題を創造的に乗り越えようとする企業の変革を後押ししていきたいです。今後は「AI案件」という特別なくくりに捉われず、AIを活用してより高い価値を提供していきたいと考えています。

北川(博報堂テクノロジーズ):最近、AIと人間の関係を「マラソン」に例えて考えています。昔は選手が1人で走って記録を伸ばしていましたが、今は「ペースメーカー」が一緒に走り、伴走することで記録を押し上げてくれます。AIも同じで、強力な「伴走者」として使うことで、人間がこれまで「限界だ」と思っていたラインを越えていける。そんな新しいステージに私たちは立っているのだと感じています。

 また、組織課題という視点では、「暗黙知の形式知化」が鍵になると思っています。どの会社にもその会社らしい優れた知見があるはずなので、その思考プロセスを客観的に体系化してAIで仕組み化し、社員全体のベースラインを底上げし、その会社らしい文化や働き方を変える大きな原動力にしていきたいと考えています。

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この記事の著者

岩崎 史絵(イワサキ シエ)

リックテレコム、アットマーク・アイティ(現ITmedia)の編集記者を経てフリーに。最近はマーケティング分野の取材・執筆のほか、一般企業のオウンドメディア企画・編集やPR/広報支援なども行っている。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社博報堂

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/03/18 10:00 https://markezine.jp/article/detail/50491