AIを「部下」として率いる、現場層に求められるシニアの視座
スキルの前提も劇的な変化を遂げようとしている。これまでマネジメント能力といえば、部下を持つ一部のシニア層や役職者が年月をかけて習得する特別なスキルとされてきた。
しかし、AIエージェントが実務実行を担う現在、ビジネスの方向付けと指示/抽象的な課題から具体的なアクションを導くという視座やマネジメント能力は、AIという自律的なリソースを動かすために不可欠な「共通のスキルセット」へと変貌すると考えられる。Excelの登場によって表計算スキルが一般化したように、10年後にはマネジメント能力があって当たり前になる可能性が高いというのが、ハヤカワ氏と梶谷氏の見立てだ。
とはいえ、マネジメント経験のないジュニア層やミドル層がいきなりそのスキルを得るのは容易ではない。では、どうすればいいのか。梶谷氏とハヤカワ氏は、AIエージェントが登場した今こそ、マネジメント能力を養う絶好の機会との見方で合意する。
「今、AIエージェントを活用してみることは、マネジメントの本質的なスキルを磨くための、極めて実践的な経験になります。彼らに対して適切なKPIを定め、構造化した指示を下ろすプロセスを繰り返すことで、マネジメントの本質を自然と身につけることができるでしょう」(ハヤカワ氏)
究極の資源は人間の「願望」、北極星を描く力を
セッションの締めくくりに、両氏はAIによって実行がコモディティ化する時代の「人間の役割」を以下の3つの論点で整理した。
第1に「生活者の行動変化」への適応だ。梶谷氏は、生活者が自ら情報を探す「探索行動」から、AIの提案を受け入れる「承認行動」へと変遷していると指摘する。
「消費者の代理人となったAIエージェントを理解し、AIに選ばれるための施策をハックする視点が不可欠になります。そのためには、AIエージェントを知っておく必要があります」(梶谷氏)
第2にビジネスの「入口」と「出口」を担うことだ。AIが中間プロセスの実行を担う世界では、人間が「何を解決すべきか」という課題設定(入口)と、アウトプットがビジネスとして本当に価値があるかを評価し、責任を持つこと(出口)に特化する必要がある。
そして第3に、それらすべてを動かすエンジンとなる「願望」の重要性だ。
「願望を持っている人であればあるほど、AIを使いこなすのがうまい。AIがなんでも叶えてくれる時代だからこそ、自分はこうしたいという強い願望が希少資源になっています」(梶谷氏)
ハヤカワ氏も「自分の北極星を見つけることが大切だ」と同意し、両氏はAIを願望を叶えるためのパートナーとして捉え、率いるマインドセットへの切り替えを促した。意志を持ってAIエージェントを使う。それがこらからの時代にマーケターが前進するための第一歩となるだろう。
最後に、ハヤカワ氏が参加者に次のメッセージを送りセッションを終えた。
「これを機にまずはClaude Codeを使ってみてください。AIエージェントは使ってみないとわかりません。使い方はWeb上で数多く紹介されています。ぜひ、チャレンジしてマーケターの活用事例を生み出し、それをシェアいただければと思います」(ハヤカワ氏)
