AIを「インターネットの延長」で捉えていないか?
講演の冒頭、佐藤氏は現在のAIを取り巻く状況を「1995年~2000年頃のインターネット黎明期と酷似している」と指摘する。多くの人がAIの可能性を語る一方で、「その本質を正確に予測できている人はまだ少ない」というのが佐藤氏の現状認識だ。
佐藤氏は、現在のAI活用における最大の問題点として、「AIがなかった時代の考え方で、AIを使おうとしている」ことを挙げる。
「時代は馬車からクルマに変わったにも関わらず、『馬車にエンジンを付けたらもっと速くなるのではないか』と考えているような状況です。多くの人は、インターネットの延長線上の考え方でしかAIを捉えられていないのではないでしょうか」(佐藤氏)
マーケティングやブランディング、戦略立案に従事。大手クライアントから官公庁、地方自治体、スタートアップまで、100社以上のキャンペーン設計、広報戦略、新商品開発、新規事業戦略、ビジネスデザイン、企業ブランディング、地域ブランディング、アート思考研修などの企画、実施、ディレクションを行う。共著に『センスのよい考えには、「型」がある』(サンマーク出版)、『場所のブランド論』(中央経済社)、執筆協力に『想像力を武器にする「アート思考」入門』(PHP研究所)がある。
AIによる「超効率化」や「超パーソナライゼーション」は、今後も凄まじい勢いで進むが、それだけではマーケティングの本質は変わらない。佐藤氏は、歴史の教訓として「先に実態(価値)が生まれ、システム(利益)は後から追いつく」という原則を強調する。
「歴史上、先にシステムが生まれて、その後に実態が変わったということは一度もありません。いつだって、利益は価値を追いかけるものです。AIという新しい『クルマ』を使いこなすには、まずは人間側が『どのような価値を作るか』という創造的な仮説を持つ必要があります」(佐藤氏)
AIに単なる「答え」を求めるのではなく、AIを使ってどのような新しい体験や喜びを設計するのか。その「火種」となるインサイトを見つけ出す力こそが、今まさにマーケターに求められているのである。
AI活用はなんのため? AIネイティブに学ぶ本質
多くの大人が「AIを使っていかに楽をするか、効率化するか」と考えている中で、佐藤氏は友人の息子である中学3年生のAI活用術に衝撃を受けたという。
その中学生は、AIに自分の好きなF1の知識を組み込ませた英語の問題と解答を大量に作成させ、それをひたすら解くことで学習を楽しんでいた。つまり、AIを「楽をするための道具」ではなく、「自分が楽しみながら成長するために使うもの」として捉えていたのである。

「自戒を込めて問いたいのは、『AIを使って仕事は前より楽しくなったか?』『成長実感はあるか?』ということです。もし楽しくも成長実感もないのであれば、そのAI活用の方法は根本的に間違っているのかもしれません」(佐藤氏)
佐藤氏自身、AIの画像生成技術を使って自作の漫画を制作したときが、これまでのAI体験の中で「ダントツで楽しく興奮した」と振り返る。楽器ができなくても音楽が作れるように、映像技術がなくても映画が作れるようになる時代はすぐそこに来ている。AIは、人間の「やりたい」という衝動を形にする、強力なエンパワーメントの装置なのである。
