事業成否の分かれ道は「顧客理解」にある
新事業やサービスを立ち上げる際、提供側がいくら「これはいいサービスだ」と考えていても、それを市場側が受け入れるかどうかは未知数だ。機能は良くてもUIがわかりにくかったり、価格が高かったり、市場ニーズとのわずかな乖離で失敗に終わるケースは珍しくない。クレームがあればまだ改善の余地はあるが、ほとんどのユーザーは積極的に意見を言わないサイレント・マジョリティだ。
こうした「顧客理解の不足」が原因で事業が頓挫してしまうケースは非常に多い。
プロダクトフォース 代表取締役CEOの浜岡宏樹氏も、前職で4回の新規事業を立ち上げては失敗した経験を振り返り、「自分自身が『いい』と思うようなソリューションを提供しても、なかなか価値を発揮できない。その理由は端的に言うと、顧客理解の不足にありました」と打ち明ける。
リサーチ実施を阻む3つの課題──コスト、時間、工数の壁
「顧客理解」を深めるため、市場調査を実施する企業も多いだろう。事業会社が行う場合、専門の調査会社や広告代理店など、ノウハウや調査パネルを有している企業に依頼するのが一般的だ。
だが浜岡氏によると、調査会社リサーチにおけるハードルは3つあるという。
- コストの壁:1調査あたり数百万円と高額。
- 時間の壁:企画から実施まで平均して約6週間のリードタイムが必要。
- 工数の壁:担当者との調整や打ち合わせに膨大なパワーを割かれる。
「これまでの調査業務は人手による労働集約的な側面が強く、どうしてもコストと時間がかかっていました」と浜岡氏。
こうした課題を解決するため、同社が開発したのがダイレクトリサーチプラットフォームの「ユニーリサーチ」だ。ユニーリサーチは、ユーザーの生の声を直接ヒアリングしたい企業が、直接ターゲット層に募集をかけ、インタビューやアンケート調査、訪問調査やユーステストなど様々なタイプの調査をセルフで行うことを可能にする。

特徴は、数万人規模の良質な定性調査専用パネルだ。会社員や個人事業主など「仕事を持つユーザー」が約76%を占め、属性の偏りがない。キャンセルの少なさも際立っており、インタビュー対応率は97%超と高い稼働率を誇る。
企業は対象条件を明示して募集するだけで、スピーディーなリサーチが可能だ。初回応募までの中央値は29分で、対象者の選出に時間はかからない。また、LINEの活用により場所を問わず迅速に実査できるのも強みだ。ユーザー評価やAI分析によって不適切な登録者を排除し、パネルの質の維持も徹底している。基本料金は一切なく、従来コストの10分の1以下で実施できる手軽さから、大企業からスタートアップまで広く利用されている。
「リサーチの民主化」が現場の意思決定とビジネススピードを加速させる
浜岡氏は、ユニーリサーチが提供する本質的な価値を「リサーチの民主化」と定義する。
実際、定量調査を重視してきたある食品メーカーでは、市場傾向は掴めるものの、マーケティング設計に必要な「顧客の心理変化」を質的に捉えきれないという課題があった。そこで、現場が手軽かつ安価に「生の声」を聞けるユニーリサーチを選択。リニューアル品のモニター調査とヒアリングを迅速に実施することで、大規模調査前の確度の高い仮説構築に繋げている。
また、あるインターネット企業では、サービスの開発・グロース支援の各フェーズでユーザー調査を徹底している。リリース前から顧客理解を深めてニーズに合致した開発を進めるだけでなく、リリース後も継続的な改善サイクルにリサーチを組み込むことで、最短距離でのグロースを実現しているという。
いずれのケースも、現場の目的に合わせ、スピーディーかつ低コストで調査を実行できるメリットを最大限に享受している。リサーチが「特別な工程」ではなく現場の日常になることで、意思決定の質が向上し、ビジネススピードも飛躍的に高まる。これこそが、企業と市場の双方に利益をもたらす「リサーチの民主化」の真価といえる。
リサーチのあり方を変える「AIインタビュー」
現在、リサーチ領域で大きな注目を集めているのが「AIインタビュー」だ。浜岡氏は、この技術には大きく分けて2つの活用パターンがあると解説する。
1つは、「AIを調査対象(ペルソナ)にする」アプローチだ。SNSデータなどを基に生成AIが特定のペルソナになりきり、人間がそのAIに対してインタビューを行う手法である。これに対し浜岡氏は、「生成ペルソナは現段階では一長一短がある」との見解を示す。AIが作成したペルソナはあくまでAIのシミュレーションであり、消費者の生の声そのものではないからだ。
もう1つは、ユニーリサーチが注力する「調査工程のすべてをAIに置き換える」アプローチである。これはAIが実在の人間に対してインタビューを行うもので、調査設計から設問立案、実査、そして分析に至る全工程をAIが担う。海外ではすでに、工数削減や意思決定の高速化を目的に導入が進んでいるという。
AIインタビューが求められる「3つの本質的な理由」
なぜ今、リサーチ領域でAIインタビューが求められているのか。浜岡氏はその理由として、次の3点を挙げた。
第1に、「ネットにはない独自インサイトの重要性」だ。生成AIやDeep Researchの普及により、ネット上の二次情報は誰でも容易に取得可能となり、もはや差別化の源泉にはなり得ない。その一方で価値が高まっているのが、「AIでも捉えきれない、個人の生々しい心理や行動データ、そしてその裏にあるインサイト」である。実在の個人と向き合い、こうした鮮度の高い情報を発掘することが、今後の商品開発やマーケティングの核になると浜岡氏は指摘する。
第2に、「人手による労働集約型からの脱却」である。従来、リサーチの設計から募集、実査、分析レポートの作成までの一連の工程には、平均で約6週間(※)を要していた。この膨大な手間と時間が、意思決定を遅らせる大きな要因となっていたのだ。ここにAIを適用すれば、全工程を最短1日で完了でき、工数を97%も削減することが可能になる。
※リサーチ会社各社のWebサイトやクライアント企業からヒアリングをしたユニーリサーチ調べによるもの
そして第3に、リサーチ業界の深刻な課題である「回答者の負荷軽減」だ。日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)の調査によると、新規アンケートパネル登録者が1年後もアクティブに活動している割合は、全体でわずか11.3%に過ぎない。特に若年層の離脱は顕著で、10代では5.0%、30代でも11.1%にとどまっている。

回答負荷の高さが「アンケート離れ」や不適切回答を招く悪循環を生んでいる今、求められているのは「フレンドリーで新しい調査体験」であり、その解決策としてAIインタビューが期待されているのである。
100人分のインタビューを数時間で完了する「ユニーリサーチAIインタビュー」
2026年4月にリリースを控える「ユニーリサーチAIインタビュー」は、リサーチの設計から対象者の募集、実査、分析までの全工程を自動で完結できる新サービスだ。AIがインタビュアーを担うことで、従来なら膨大な時間を要した100人分のインタビューも、わずか数時間で完了させることが可能になる。

本サービスのポイントは、AIが単なる御用聞きではなく、人間の思考をアシストするパートナーとして機能する点にある。たとえば、インタビューの目的や背景を入力すれば、AIがその意図を汲み取って最適なトークスクリプトを生成する。実査においては、回答者の発話に合わせて自律的に深掘りを行い、きめ細やかな本音を引き出していく。
また、分析スピードも圧倒的だ。回答は即座に文字起こしされるだけでなく、AIが瞬時に要約や傾向分析を行い、ペルソナシートやカスタマージャーニーマップまで自動生成する。インタビュー動画のデータも共有されるため、気になった回答者の受け答えを直接確認し、後日担当者が改めて「リピートインタビュー」を依頼するといった、AIと人を組み合わせた高度なリサーチも可能だ。
「人より緊張しない」──新たな調査体験が引き出す高品質な回答
一方、リサーチ対象者であるユーザーはAIインタビューをどう捉えているのか。ユニーリサーチが実施した検証結果からは、極めてポジティブな反応が見て取れる。
AIインタビューを体験したユーザーの「リピート意向」は81.7%と非常に高い。その内訳は「強くそう思う」が35%、「そう思う」が46.7%に達しており、「全くそう思わない」という否定的な回答は0%であった。
具体的なメリットとしては、以下の点が挙げられている。
- 時間や場所を選ばず受けられる(80%)
- タイパ(タイムパフォーマンス)が良いと感じる(46.7%)
- 自分のペースで回答できる(45%)
さらに注目すべきは心理的なハードルの低下だ。「人に話すより緊張しない」(41.7%)、「人に話しにくい内容でも回答しやすい」(40%)という声が多く、従来の対面インタビューでは得にくかった本音を引き出せる可能性が示されている。また、自由回答欄への入力を負担に感じる層にとっても、対話形式なら言語化しやすいため、「テキストより回答が楽」(38.3%)という評価も得ている。
「回答負荷が低く、かつ心理的ハードルも低い」という新たな調査体験は、結果として調査の質にも直結する。実際、検証における不良回答率は0%という驚異的な数値を記録した。
浜岡氏は、「こうした『リサーチの民主化』を加速させる革新的なプロダクトを通じて、企業と顧客の距離をさらに縮めていきたいと考えています」と、AIインタビューのリリースに向けた強い決意を語り、講演を締めくくった。
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