直感を納得・妥当性のある戦略にする「5Sフレームワーク」
試行錯誤の末、私は、直感(感性)とデータ(論理)を繋ぎ、意思決定の質を最大化するプロセスにたどり着きました。
そして2025年以降の生成AIの飛躍的な進化を目の当たりにし、私は一つの確信を抱いています。それは、かつて属人的だった前述の実務フローを、AIを「思考のパートナー」とすることで、誰もが使える型へ民主化できるということです。現場の実務者が抱く「良い直感」が、データ不足や説明スキルの壁によって潰されることなく、世に出ていく仕組みを作りたい。これが、本連載を執筆する動機です。
本連載では、マーケティングや商品開発、事業推進など、日々意思決定を迫られる実務者へ向けて、“明日から使える思考の型”である「5Sフレームワーク」を提唱します。

- See(観察):直感を適切な問いに変換する
- Structure(構造化):市場の構造を解き明かす
- Select(選択):勝てる戦略を絞り込む
- Solidify(具体化):実行可能な形に具体化する
- Settle(決断):責任を持って「納得解」を選ぶ
今回は、第1ステップである「See(観察)」に焦点を当てて、直感をどのように戦略の起点となる「適切な問い」へと変換するかを解説します。
直感に潜む「確証バイアス」の罠と、事象の単純化
現場の体験から生まれる直感は、強力な“初期仮説の種”です。しかし同時に、直感には思い込みのリスクが潜んでいます。
たとえば、競合分析の場面を想像してください。「自社にない他社の強みを見つけ、具体的な解決策を立てたい」という熱意は正しいものです。しかし、その熱意が無意識のフィルターになってしまうことがあります。
というのも、人間は課題に直面すると、事象を単純化しようとする傾向があります。「あの競合は価格が安いから勝っている」「機能が優れているからだ」「広告にお金をかけているからだ」と、直感で理由を決めつけてしまいがちです。
そして一度その思い込みフィルターがかかると、なかなか外すことができません。たとえば、競合分析ツールを使ってデータを検索する際、無意識のうちに広告投下量や媒体配分の差など「自分の仮説を裏付けるデータ」ばかりを探してしまいます。抽出されたデータ自体は間違っていなくても、データを見る「視点」が最初から偏ってしまっている。データは「嘘」をつかないが、「真実」を語るとは限らないということです。
実際、定性インタビューや意思決定プロセスを深く理解するために定量調査を実施し、データとコメントを往復しながら深く分析してみると、実態は大きく異なっていることがほとんどです。顧客の意思決定はもっと複雑で、無意識レベルの様々な要素が複合的に絡み合っています。決して「価格」や「機能」だけで説明できるほど単純なものではありません。この事実は、商材を問わず、私が経験してきた通信・損保・住宅といった複数の業界で共通して見られました。
自分の仮説と合うデータだけを無意識に集めてしまう傾向は、どれほど熟練したマーケターや企画者でも避けられない人間の性です。
実は、この傾向は顧客アンケートでも生じることがあります。私が実務で数多く見てきたのは、設問の文面に「こう答えてほしい」という作り手の恣意的な意図が透けて見え、顧客を無意識のうちに特定の回答へ誘導してしまっているアンケート。一見すると顧客のリアルな声に見えても、実は「作り手が見たかった答え」を集めているに過ぎないケースは多々あります。
【オンライン開催】MarkeZine Day 2026 Onlineに連載著者の日ノ澤氏が登壇!
5月21日(木)18:00~18:30に「5Sフレームワーク」を30分で解説予定。オンラインでどなたでも無料でご視聴いただけます。視聴には事前登録が必要です。登録はMarkeZine Day 2026 Online公式サイトから。

