「フェーズ別」戦略で第一想起を狙う、キヤノンマーケティングジャパン
キヤノンマーケティングジャパングループは、グローバルキヤノングループの一員として、日本国内でのマーケティング活動とソリューション活動を担っている。キヤノン製品とITソリューションを組み合わせた事業展開と、新たな価値創出によって社会課題解決の幅を広げている会社だ。
同社の課題は、2007年にキヤノン販売から社名を変更してから認知度が回復しきっていない点にあった。この状況を打破するため、同社は2021年に「ブランド戦略委員会」を設置。さらに2024年1月にグループパーパス「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」を策定。あらゆるステークホルダーにとって、「最初に頭の中に浮かんでくる会社」になることを目指したコーポレートコミュニケーションを開始した。
第一想起を得るためのプロセスを「認知(社名を知る)」「興味(業容を知る)」「理解(相談意向につなげる)」の3フェーズに分割。2024年は賀来賢人氏と松本若菜氏を起用したテレビCMや、日経新聞での30段広告、タクシー広告などを組み合わせ、認知フェーズを中心に複数の施策を展開した。
続く2025年は認知フェーズも継続しながら、「興味・理解」を深めるフェーズへと軸足を移している。
「あやしさ」を払拭し、新市場を創出するSPACECOOL
一方、宝珠山氏がCSOを勤めるSPACECOOLは、2021年4月設立のスタートアップだ。同社は遮熱だけでなく、熱を宇宙空間へ放射する技術(放射冷却)を用いた新素材を提供している。
このまったく新しく、あやしまれやすい技術をどう市場に浸透させるか。それが同社の課題だ。事業の進展に合わせて「存在証明(2021)」「効果証明(2022)」「信用・信頼(2023)」という段階的な取り組みを進めてきたと宝珠山氏は説明する。
設立1年目の2021年は、まず「実在する技術であること」を証明することに注力した。「熱を宇宙に逃がす」という言葉が持つ独特のあやしさを払拭するため、設立わずか4ヵ月でビジネス番組のタイアップ枠を数百万かけて確保。MCの加藤浩次氏が素材に触れて、冷たい!と驚く反応を映像化した。
「どれだけデータを提示して頭で理解してもらっても、人は疑います。テレビで芸能人の口から体験を伝えてもらうことが信頼の起点になると考えました」(宝珠山氏)
2年目は、ホンダやENEOSといった大企業との共同実証実験を実施し、自社データではなく「第三者が計測した確かな証拠」を積み上げた。3年目にはその実績をもとに経済産業大臣賞などの権威ある賞を相次いで獲得。この「公的なお墨付き」を得たことで、素材としての信用を不動のものとし、本格的なビジネス展開へと移行したのだ。
