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MarkeZine Day 2026 Spring

サントリーの人気企画「BAR グラスとコトバ」が目指す未来、未知への不安を興味に変える体験設計とは

「Feel First, Learn Later」の思想と、ひとときの「好き」を継続的な「愛着」へ昇華させるヒント

渡邉:成功要因にも挙げられていましたが、本施策は「まずはとにかく五感で体験してもらう」という設計が印象的です。私はこのようなアプローチを「Feel First, Learn Later(FFLL)」と呼んでいるのですが、まさにこれだと思いました。

菊池:はい。ついつい商品の品質やスペックを説明してしまいがちなところを、今回はぐっと我慢しました。

渡邉:メーカーの方は伝えたいことがたくさんあると思います。でも、最初から商品の特長や来歴を伝えても、それを聞いてくれる人はほとんどいない。最初から勉強では間口を狭めてしまいます。今回のカクテルもそうですし、手触りの良い服などもそうです。まずは一回触れて「いいな」と体感してもらう。今回の企画がもし「Learn First」な施策だったなら、コミュニケーションとして成立していなかったかもしれません。

菊池:そうですね。一方で、ただ感性に語りかけるだけで終わってしまっては、本当の“好き”は得られないと考えています。

渡邉:それはなぜでしょう。

菊池:「おいしかった」という体験は、時間が経てば単なる「いい思い出」として消えてしまいがちです。それを一過性の印象にせず、「ブランドへの愛着」につなげるためには、どこかで「スペック」や「ストーリー」と「自分自身」「自分の思い出」を接続する必要があると思います。

 「なぜおいしいのか」「どんなカクテル言葉にどんなストーリーがあるのか」「自分とどのようなつながりがあるのか」。知れば知るほど愛着は生まれるものです。感情(Feel)とスペック(Learn)の絶妙なバランスが、生活者とのコミュニケーションを深める秘訣なのではないでしょうか。

バー文化を耕すエコシステムの形成、サントリーが「三方よし」の循環を継続する意義

渡邉:今回のイベントを通じて見えた発見はありましたか。

菊池:「実はバーに行ってみたいと思っていた」という若年層のポジティブなインサイトを発掘できたことは、大きな収穫です。挑戦的なイベントではありましたが、諦めなければ「本音」は引き出せるものなのだと、社内でも勇気づけられる結果となりました。

渡邉:街場のバーにとっても、生活者にとってもうれしい「三方よし」の企画設計もポイントだと思います。即時的な洋酒の売上にはつながらないかもしれませんが、未来の種まきとして重要な取り組みだと捉えています。このエコシステムを作ったことは、未来のマーケットを耕すことにつながるのではないでしょうか。

菊池:おっしゃる通りです。今回はそこを意識しました。しかし、エコシステムは継続的に回し続けなければ意味がありません。何度も繰り返すことで、お客様が「サントリーがおすすめしているバーなら安心して行ける」と思っていただけたり、バーテンダーが「サントリーの活動なら応援したい」と賛同していただけたり、少しずつ状況が変化していくでしょう。その結果、洋酒ビジネスの土壌が豊かになっていくことを願っています。

渡邉:では、第3弾の実施も見えているのでしょうか?

菊池:詳しい日程は固まっていませんが、実施自体は確定しています。今後もサントリーは「バー文化への貢献」をキーワードに、五感と心に寄り添うコミュニケーションを継続していきます。ご期待ください。

渡邉:ありがとうございます。「BARグラスとコトバ」はバーに対する恐怖や不安を驚きや面白さに転換するという体験設計の妙があると思います。そして、文化への種まきという視点も大切だと感じます。私は開高健と吉行淳之介のある対談の本が好きです。二人がお店でお酒を好きなだけ飲みながら、やはりお酒について放談する、という自由なものですが、元々はサントリーの広報誌『洋酒天国』を書籍化したものだったと記憶しています。今回の取り組みともつながる、文化を大切にする会社としての姿勢を感じます。

 今回のセッションが皆さんのマーケティングのヒントになれば嬉しいですね。ここまでお聞きくださりありがとうございました。

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この記事の著者

安光 あずみ(ヤスミツ アズミ)

Web広告代理店で7年間、営業や広告ディレクターを経験し、タイアップ広告の企画やLP・バナー制作等に携わる。2024年に独立し、フリーライターへ転身。企業へのインタビュー記事から、体験レポート、SEO記事まで幅広く執筆。「ぼっちのazumiさん」名義でもnoteなどで発信中。ひとり旅が趣味。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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2026/04/23 08:00 https://markezine.jp/article/detail/50560

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