メールを送るほど増える「配信停止」のジレンマ
続いて湯浅氏と戸崎氏は、マーケティング部門の現場で起こっている課題を整理した。マーケティング部門が担う重要なミッションは、インサイドセールスやセールスが接点を持つための「リード獲得」だ。そのためにはマーケティング部門がアプローチできるメールアドレスなどのコンタクト情報をいかに増やすかが問われる。しかし、マーケティング活動の中だけでも部分最適に陥ってしまう場合がある。
戸崎氏は、5万件のハウスリストを保有する企業を例に挙げた。この企業は月1,200件の新規リードを獲得し、ハウスリストに向けてメルマガやウェビナーの集客などで月10回のメール配信を行う。一見、セオリーどおりのよくある運用だが、これではリストは増えないという。メールを送れば送るほど、「配信停止」の数も増えるからだ。
「新規リード1件の獲得コストは注目されますが、配信停止による損失は意外と見落とされがちです。0.2%の配信停止率でも、配信する母数が増えれば増えるほど無視できない数になる。これをどう低減していくかが課題です」(戸崎氏)
解決策は、セグメンテーションを徹底し、興味がある人にのみメールを送ることだ。シンプルだが、実践するのは難しい。
たとえば製造業の営業職に向けてセミナーを開催する際、データを活用して「都内、売上100億円以上、3年業績が伸びている、営業部長」と厳密にセグメントすると、アプローチ対象の母数が限られてしまい集客できない。
しかし、集客のために関係の薄い部署まで対象を広げると配信停止を招いてしまう。マーケティング部門の現場では、こうしたジレンマが起こっている。
「送りたい人」より「送らない人」を考える
メール配信をめぐる課題について、ユーソナーは、2つの視点で施策を実施しているという。1つは、ターゲットを絞りピンポイントでアポイント獲得を狙う「点の施策」。もう1つは、ターゲットを絞りすぎず広くアプローチする「量の施策」だ。
量の施策で重要となるのは、メールの配信先を選定する際、送りたい人を選ぶのではなく、送りたくない人を除くことだ。製造業の営業に向けたセミナーであっても、実際はマーケティング部門や経営企画部門、または卸売業の方にもニーズがあれば参加してもらいたいということは多い。そうした場合はあえてターゲットを設定して配信する必要はない。
ここで必要なのは、リストを守るため、全く関係ないであろう経理部門や病院などを配信先から除くことだ。これにより配信停止のリスクを下げることができる。
「ありがちなのが、申込数や資料ダウンロード数などのKPIを達成するために送付先を増やした結果、配信停止によりハウスリストが減ってしまうパターンです。セミナーに50人集客するために、その裏側で300件の配信停止が起こっているとしたら、あまり意味がありません。適切なセグメント条件が決まらない場合は、絶対に送るべきではない対象を除外することを意識するだけでも、マーケティング資産の価値は高まりやすいと思います」(戸崎氏)

