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MarkeZine Day 2026 Online

MarkeZine Day 2026 Spring(AD)

AIと描くブランドの未来━━JTと博報堂DYグループが提案する「人間の創造性を拡張する」AI活用

 生成AIのビジネス活用は必然となり、新たなテーマとして「AIでいかに人間の創造性を拡張するか」が浮上しつつある。そうした中、日本たばこと博報堂テクノロジーズがMarkezine Day 2026 Springに登壇。生成AIと人が共創し、企業ブランディングの新たな地平を切り拓いた事例について紹介した。

AIと人による共創目指す「STRATEGY BLOOM CONCEPT」

 生成AIの活用がこれまでにないほど浸透してきた今、企業活動においてもこの新技術をいかに事業に取り入れるかが喫緊の課題となっている。そうした中、博報堂DYグループは2024年4月に「Human-Centered AI Institute」を設立。人間中心のAI技術研究、およびソリューション開発に取り組んできた。

 博報堂テクノロジーズの執行役員である木下陽介氏は、同社が毎年行っている生成AIに関する調査について次のように話す。

 「われわれの調査結果によれば現在、生成AIのビジネス利用は47.5%に過ぎません。また、AI活用に対する認識の大半は『自動化できる部分はAIに任せ、クリエイティブな作業は人間がおこなう』といったもの。けれども、われわれはその部分をいかにAIと協力して実現させるかが重要だと考えています」(木下氏)

株式会社博報堂テクノロジーズ 執行役員 兼 マーケティング事業推進センター センター長 木下 陽介氏

 木下氏によると、ビジネス目的でAIを利用する中で浮かび上がってきたのが、「同質化」の問題だという。これは、AIのアウトプットの精度が高まった結果、誰もが同じ答えにたどり着いてしまう現象を指す。だが、同氏はマーケティングの本質が生活者に”意味のある違い”を生むことにある以上、そこを克服する必要があるという。

 それでは、AIと人が共創し、クリエイティビティを発揮するにはどうすればいいのか。こうした発想の下、同社が開発したのが「STRATEGY BLOOM CONCEPT」だ。同プロダクトについて、木下氏は次のように解説する。

 「これは、TBWA\HAKUHODOの細田高広CCOが提唱する、『インサイト型ストーリー』というコンセプトワークをAIに学習させ、サービスとして具現化したものです。プロンプト不要で、各ステップに最適化されたAIとの壁打ちが可能になります」(木下氏)

 木下氏によれば、同プロダクトの活用により、プランナーがコンセプト立案にかかっていた時間が約4,000時間も削減されたのだという。また、これまでコンセプト立案をあまりしてこなかった営業職が利用することで、コンセプトスキルの向上にも役立っているという。

JTがテクノロジーに投資する理由とは

 一方、日本たばこ産業(JT)では、経営アジェンダの一つとして「グループテクノロジー戦略」を策定、 ITグループ独自のテクノロジーに関するブランディングを重要戦略の一つと定義づけている。その理由について、同社のChief Technology & Information Security Officerである下林 央氏は次のように解説する。

 「当社では、持続的利益成長に向けて長期的視野に基づいた運営をおこなっています。われわれJTグループがパーパスとして掲げるのは、『心の豊かさ』。その実現のため、テクノロジー部門として我々自身が価値を創出する『Tech Frontier Company』になろうとしているのです」(下林氏)

日本たばこ産業株式会社 Chief Technology & Information Security Officer 下林 央氏

 同社が「新たな事業シーズの探索と創出」というプロセスを経て生み出したプロダクトは、非常にユニークなものだ。その実例として、まるで呼吸するかのように動作するクッション「fufuly」や、深呼吸をサポートするフレーバー吸入タイプの電子デバイス「ston」などが挙げられる。くわえて、生成AIの活用や社内承認手続きなども大半が電子化されデジタル活用においては先進的な取り組みが行われている。

 しかし、JTがこれらの取り組みをしていることを知っていた読者の方はどれくらいいただろうか? 同社の課題は、そのテクノロジー活用の推進に対する「認知」である。下林氏によれば、先進的な取り組みを行う内部の実態と「外からの見え方」には大きな隔たりがあるという。

 また、今後テクノロジー活用を加速させるためにも、社員一人ひとりの意識改革が必要なタイミングにあった。そうした内容をストーリーとしてわかりやすく伝えるべく、今回の「AIを活用したブランド構築プロジェクト」が始まったのだと下林氏は述べる。

AIの介在により3時間でコンセプト抽出とステートメント作成を実現

 今回、博報堂テクノロジーズとタッグを組むことになった理由について、JTの下林氏はあるメディアの記事で博報堂テクノロジーズがコンセプト開発にAIが活用していることを知ったのがきっかけだったと明かす。

 「記事を読んで、クリエイターの思考や視点という”属人的なもの”が形式化され、ステップを踏めば誰でも使えるレベルになっていることを知りました。そこから、人の創造性をどのように拡張させ、思考の幅を広げるべきかについて考え始めたんです」(下林氏)

 下林氏は、「人とAIの共同作業」が具現化されたプロダクトが存在するのなら、ブランドストーリーの成立過程に深く関与することで ”自分たちの目指したいもの”への理解が深まるはずだと考えたという。 

 木下氏は、今回の「AI×人間によるブランドストーリー開発」には4ヵ月のワーク期間が必要だったと話す。実際のブランド構築プロジェクトのプロセスは、以下の4ステップに分かれている。

 木下氏によれば、ステップ1のコンセプト抽出とステップ2のステートメント作成には、わずか3時間しかかからなかったという。

 「コンセプトの抽出は、ワークショップ前半の1.5時間のセッションで行われました。ほぼ初対面のメンバーでテーブルを囲み、AIのフレームワークがコンセプトワークをサポート。それを元に、残りの1.5時間でGeminiを使ってステートメント案を量産しました」(木下氏)

 量産したステートメントを社員が発表した後、『JTらしさ』があるものを投票。最後に、ステートメントに採用できそうな文言について博報堂のスタッフを交えてディスカッションが行われたという。

参加者の86%が、AIの活用がアウトプットの深化に「寄与した」と回答

 それが終わると、ステップ3の「クリエイターが心を動かす言葉に磨き上げる」段階に入る。ここでは細田CCO監修のもと、博報堂のクリエイターが担当することになるという。木下氏によれば、今回は細田氏自身がステートメントの候補案を見てブラッシュアップし、社員と世の中に響くブランドストーリーへと修正をおこなったという。

 最後となるステップ4が「自分ごと化のためのAI共創型ワークショップ」だ。ここでは、50人ほどのITグループのメンバーが集まり、3時間のワークショップを行った。まずは下林氏がブランドストーリーとステートメントを発表し、それを受けてメンバーが自分ごと化し、行動に移すための「アクションプラン創発ワーク with AI」を実施。

 ここでは、それぞれが一案ずつアクションアイデアを記載し、AIが拡張アクションプランを量産。そこからピックアップ&ブラッシュアップしたものを共有し、皆でディスカッションする形を取ったのだという。

 木下氏によれば、ここでも参加者同士で多くのアイデアが生まれ、中身のブラッシュアップも凄いスピードで進んでいったという。事後に取ったアンケート結果によれば、全体の86%の参加者がAIの活用がアウトプットの納得感や深まりに寄与したと回答したのだという。

 木下氏は、AIとの共創ワークショップで得られた3つのメリットを挙げる。一つ目が、「対話を深める」だ。これは、AIが心理的な障壁を取り払うことで、人と人がより本質的な対話に集中できるようになることを指す。二つ目が、「思いをカタチに」。これまで漠然としていたアイデアや想いを、生成AIを通じて言葉や絵として表現できることがそれに当たる。最後の「創造性を解き放つ」は、未経験領域において誰もがクリエイティビティを発揮する機会がつくれることを指している。

AIの精度が上がった先、人間に求められる資質とは?

 最後に、木下氏と下林氏による「AIとの協業によってブランド策定ワークフローはどう進化したのか?実践で見えた成果と次なる課題について」のトークセッションが行われた。最初のテーマである「実際にやってみて気付いた点」について問われた下林氏は、ワークショップの冒頭で行われた「個人ワークの時間短縮」について次のように指摘する。

 「今回の協業では、AIが『考えを整理する能力』を提供したと同時に、考え始める際の心理的なハードルを大きく下げたのではないかと考えています。こちらが断片的な考えや単語をインプットしただけでも、そこから何かしらスピーディに返って来る。そうしたやり取りの結果、勢いを保ったまま洞察を深めることが出来たと考えています」(下林氏)

 そこから下林氏が感じた「次につながる課題」は、AIに頼り切りになってしまうとアウトプットへの関与度が大きく下がってしまうことへの懸念だ。関与度が下がることで、生成したクリエイティブへの納得感も下がっていく。つまり今後、人間側が何を軸に判断をおこなっていくのかが重要になると述べた。また、今回の体験を通じて人が「創造する際の姿勢」を強く持つことが大切であることを改めて実感したという。

 二つ目のテーマは、「AIと人との協業から見えてきた、次世代のワークスタイルとは?」。これに対して下林氏は、AIとのワークショップスタイルによって組織やマネジメントのあり方も変わる可能性があることを指摘する。

 「従来は、裁量権が与えられた組織ありきで、そこでの上司やリーダーがメンバーを取りまとめるというのが通例でした。けれども、AIと協業する環境では、『何を』『なぜ』やるのかといった部分がより重要になってくると感じます」(下林氏)

 チームのダイナミクス、チームの組成を含めて見直し、ヒトである我々自身の仕事の仕方や組織のアップデートを同時にしていく。それが次世代の働き方を考える上で重要だと分かってきたと同氏は語る。

 それを受けて木下氏は、「AIの力を借りることで皆がフラットな存在になり、同じ立場になりやすい感覚をおぼえる」と下林氏の意見に同意。その上で、AIの力を借りて初対面の人とも互いの強みや個性を尊重し、等しく話せる環境や仕組みづくりを求めることが今後の「新しいリーダーシップの形」になるだろうと述べた。

同質化を避けるには『少し怖いけど、価値あるもの』を目指す

 トークセッションの最後には「これから求められる創造性とは?人間が発揮すべきクリエイティビティとは?」について議論が行われた。下林氏にとって、ここ数年のAIの発展が投げかけてくるものは、非常に重いテーマに感じられるのだという。同氏によれば、それは「人間とは何か?」というもの。様々な回答が考えられる中、その一つの解となり得るのが「創造性の発揮」だと述べる。

 「AIが活躍する時代に、人間に求められている役割。それは、目標設定や判断力の部分だと思います。つまり、『プロセスの最初と最後』こそが、ヒトの創造性の真価が問われている場所だと言っていい。また、目標はわれわれにとってのコンフォートゾーン内に置かれるべきではなく、前例の少ない『少し怖いけど、意味や価値のあるところ』に置かれることが重要になってくるはず。 そして、それこそが”AIによる同質化”を回避し得る、ひとつの方法なのではないかと考えています」(下林氏)

 下林氏は、 「AIは無数の選択肢を提示するが、どこを目指すか/何を軸に選ぶかはヒトが決める。ストレッチを前提に、目標を一段高く置き、非連続な選択肢を意図的に残し、その選択を目標に照らし合わせた判断軸で意味づけていく。そのうえで、ヒトが“最終的な決断”に責任を持つこと」が重要だと述べる。 そしてまた、「それこそが人間のチャレンジのしどころであると同時に、競争優位性の確保につながるはず」だと述べて話を締めくくった。

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この記事の著者

三ツ石 健太郎(ミツイシ ケンタロウ)

早稲田大学政治経済学部を2000年に卒業。印刷会社の営業、世界一周の放浪、編集プロダクション勤務などを経て、2015年よりフリーランスのライターに。マーケティング・広告・宣伝・販促の専門誌を中心に数多くの執筆をおこなう。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社博報堂DYホールディングス

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/05/19 11:00 https://markezine.jp/article/detail/50619