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AIが「How」を担う時代、企業の競争力の源泉とマーケターの役割はどう変わる?阪急交通社の実践に学ぶ

AIを活用した1 to 1のメルマガ運用で、ツアー予約数を倍以上に改善

佐藤:橋口さんは、理想の顧客体験を実現するために、現在のAI技術をどう活用されていますか。

橋口:これまでは不特定多数にメッセージを出し反応を見るマスマーケティングでしたが、理想はやはり、お客様一人ひとりのニーズに即した1 to 1の提案です。

 当社で進んでいる取り組みの一つがメールマガジンです。以前は一度に200万通ほど配信していましたが、セグメントせずに全員に送っていました。結果、開封率は10%以下になり、ユーザーからすれば「いらないメールが毎日来る」状態です。

 そこで、アクティブコア社の提供する「marutto1to1(マルットワン)」を導入。AIでお客様の状況を解析し、嗜好性に合わせてセグメント配信したところ、配信数を減らす中でツアー予約数は倍以上という成果を実現できました。さらに、この成果を営業現場にフィードバックすることで、社内が「この商品を本当に求めているお客様に届けよう」という考え方に変わりつつあります。

佐藤:コミュニケーションのメッシュが細かくなり、お客様ごとの気持ちを想像しやすくなったのですね。AIがマーケティングやセールス領域まで担うようになると、その境界線が溶けていくと感じます。

橋口:今はマーケティングの前段の分析でAIを使っていますが、そこから一歩踏み込み、セールスのアプローチにも使えると考えています。たとえば、法人や団体のやり取りにおいてAIが過去のメール・電話の内容を解析し、適切なタイミングで「この方には今こういう提案をすべきです」とセグメントしてくれる。そういった、雑多な情報を整理し適切なメッセージを出す部分でも、将来的にセールスへつながる活用を始めています。

佐藤:実際、お客様側の気持ちとしては、AIの提案と分かると冷めてしまうのでしょうか。その距離感は難しいですよね。

押久保:コンテキスト(文脈)によりますね。ある大手飲料メーカーのマーケターが、「自分自身で1億人の顧客に会って売り歩きたいけれど、それは不可能だから広告やSNSを使っている」とおっしゃっていました。もしAIエージェントにその人の情熱を持たせることができれば、メルマガという形式を超えて、商品の魅力を熱く、かつ適切に語れるようになり、ファンはそれを買うのではないでしょうか。

 また、将来はユーザー側もAIエージェントを使いこなす時代になるでしょう。「AI to AI」のコミュニケーションが広がれば、さらに興味深い展開になりそうです。

AI時代、人の役割として残るのは「熱量」と「責任」

佐藤:マーケターが本来情熱を注ぐべき「What/Who」に注力するために、AIでこれまでの作業がどれだけ効率化されたか、橋口さんの実感はいかがですか。

橋口:今取り組んでいるメールマガジンの設定作業などは、以前の10分の1ほどの労力で済んでいます。これまでは細かい配信設定に膨大な時間を取られていました。それが今ではAIの分析を元に、ようやく本来やりたかった「お客様に向き合うこと」に時間を使えるようになりました。

 当社は旅行という「リアルな体験」を売っている会社です。ですから、商品を無機質に提供することはあり得ません。集客の直前までは徹底的に自動化し、ユーザーのニーズを正確に捉える。しかし、最終的にお客様にご提案する部分には、我々社員の思いを込める。そこに人間の存在価値があると思っています。

佐藤:一つのツアーを作るのに、どれくらいの方が関わっているのですか。

橋口:基本的には、一つのパッケージ商品は企画担当者1人か2人で担当します。アイデア出しからプランニング、仕入れ交渉、さらには新聞広告のコピーや原稿作成まで、すべて担当者が一貫して行います。

佐藤:それは驚きです。将来的に企画担当業務は、AIに任せるべきだと思いますか?

橋口:いえ、そこは変えてはいけない部分だと思います。活用できるところはAIに任せますが、最後の意思決定は担当者が行わないと、良さが損なわれてしまう。顧客体験に対して責任を持つ部分は、絶対に人間の役割として残すべきです。それが競争力の源泉となります。

佐藤:仕事の最後に残るものが「顧客体験への責任」であるというのは、非常に印象深いメッセージです。阪急交通社さんの企画担当者は、熱を持って商品を組成し、責任を持って届けているわけですね。

橋口:実際に担当者が添乗まで行い、お客様の喜びを目の当たりにする体験があるからこそ、次により良い商品を作れるのです。アンケートのテキストをAIで分析するだけでは、自分ごと化できません。

押久保:AIそのものは、放っておくと「均質化」されてしまいます。だからこそAI時代には、逆に人間ならではの「個性」が強く求められると思いますね。

佐藤:AIと関わっていると、「誰かに決めてほしい」という生活者ニーズを強く感じます。旅行でも、自分で全部決めるのは責任が重いから、プロにおもしろい企画を提案してほしい。つまり「おもしろさの責任」を預けているわけですね。その「気持ちを乗せる」部分が、成約率に大きく関わるのではないでしょうか。

押久保:情報発信も同じで「何を言うか」より「誰が言うか」ですね。情報が溢れているからこそ、「これがイチオシです」というプッシュが必要で、それは人間の本質的な欲求だと思います。

次のページ
「悪い売上」から「良い売上」への脱却。AIとCRMで実現する、顧客を主語にした経営転換

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社アクティブコア

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2026/05/12 10:00 https://markezine.jp/article/detail/50641

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